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『幼馴染が連続殺人犯かもしれない』  作者: asnt2026


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第24話 いなくなった人

翌朝。


坂東祐生は学校へ来なかった。


自宅にも戻っていなかった。


それをひかりが知ったのは、登校して間もなく大庭から電話を受けた時だった。


『昨日、坂東君は学校を出たところまでは確認できてる』


ひかりは人気のない階段へ移動した。


「その後は?」


『今、確認してる』


「事件ですか」


『まだそう決める段階じゃない』


大庭の声は冷静だった。


だからこそ、ひかりの指先が冷たくなる。


「私と会う前に何かあったってこと?」


『可能性はいくつもある』


「戸塚君は?」


少し間。


『その名前は確認してる』


「坂東君が、次はお前って言われたって」


『昨日聞いた』


「じゃあ戸塚君が」


『中原さん』


声が少し硬くなる。


『言葉一つで犯人を決めない』


ひかりは黙った。


透が資料で人を見ている時、嫌だった。


今、自分が同じことをしている。


『もう一度聞くね。坂東君は昨日、あなたに会う理由について何か言ってた?』


「透と私が何を知ってるか確かめたいって」


『二年前については?』


「警察に話したら、二年前のことまで掘られるって」


『それだけ?』


ひかりは思い出す。


戸塚。


次はお前。


『分かった』


大庭が言う。


『それと、野崎君が昨日あなたを追ってた件も聞いた』


ひかりの体が固まる。


「透が言ったんですか」


『今朝、本人から』


意外だった。


「自分から?」


『うん』


ひかりは何も言えなくなる。


透は隠すと思った。


少なくとも、自分なら言いにくい。


『本人にもかなり注意した』


「そうですか」


『あなたも一人で動かない。特に戸塚君へ会いに行くなら必ず先に連絡して』


ひかりは返事をしなかった。


『中原さん』


「はい」


『返事』


「分かりました」


電話を切る。


階段の窓から校庭が見える。


朝の光が白く、グラウンドの土は乾いている。窓際には古いワックスの匂いが残り、下の階から生徒たちの声が上がってきた。


戸塚岳。


会いたい。


何を意味していたのか、直接聞きたい。


今度は先に大庭へ言う。


それなら。


そこまで考えた時、


「ひかり」


透が階段の下にいた。


ひかりは振り返る。


透は一段上がり、止まる。


昨日のことが二人の間にある。


「坂東」


透が言う。


「知ってる?」


「行方分からないって」


「うん」


「昨日のこと、大庭さんに話した」


「聞いた」


透が少し眉を寄せる。


「早いな」


「さっき電話きた」


「そっか」


沈黙。


ひかりは手すりへ目を落とす。


透が一段上がる。


「昨日、本当にごめん」


ひかりはすぐ答えなかった。


「何で追ったの」


もう一度聞く。


透は今度は逃げなかった。


「心配だった」


「うん」


「それと」


一度言葉が止まる。


「疑ってた」


ひかりは顔を上げた。


透は視線を外さない。


「坂東に会った後、ひかりが何するか分からなかった」


胸の奥が硬くなる。


でも昨日より、少しだけ呼吸はできた。


「正直だね」


「正直に言えって言っただろ」


「言った」


「だから」


ひかりは少し笑いそうになった。


笑える話ではない。


それでも透らしかった。


「私も透を疑ってる」


今度はひかりが言った。


透の目が動く。


「でも、昨日坂東君が来なかった時」


ひかりは続ける。


「透はずっと私を見てた」


「うん」


「最低だけど」


「分かってる」


「でも、少なくとも私が待ってたのは知ってる」


「知ってる」


その言葉は、昨日とは少し違って聞こえた。


疑うために見ていたものが、いつか何か別の意味になる。


まだ二人には分からない。


「戸塚君に会いたい」


ひかりが言った。


透の眉が寄る。


「大庭さんには?」


「言う」


「なら」


透は少し迷った。


「俺も行く」


ひかりは首を振る。


「今回は私が話したい」


「何で」


「坂東君が私に言ったことだから」


「また一人で?」


「大庭さんに言うって」


透は黙る。


ひかりは続けた。


「昨日みたいに、後ろから来ないで」


透の顔が少し歪む。


「もうしない」


「ほんと?」


「たぶん」


「そこは本当って言って」


「本当」


今度は二人とも少しだけ笑った。


その笑いは長く続かなかった。


坂東はまだ見つかっていない。


放課後。


大庭へ連絡した上で、ひかりは戸塚岳へメッセージを送った。


連絡先は中学時代の共通の知人から教えてもらった。


《坂東祐生のことで話したいです》


返信は十分ほどで来た。


《誰》


《中原ひかり》


少し間。


《ああ》


それだけ。


《会えますか》


既読。


五分。


《今日なら》


場所は駅前のファストフード店。


人の多い場所。


ひかりはすぐ大庭へ送った。


今度は先に。


それだけなのに、少し呼吸が楽だった。



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