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リインカーネイターVSリグレッサー  作者: ダン・水木
第2章:前期

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過去の夢

学校の終業を告げるベルが鳴った。私は急いで本を鞄の中にしまった。後ろの席にいる女の子たちのささやき声が聞こえてくる。駅の近くにできた新しい猫カフェについて話しているようだった。


なぜか……すべてが懐かしく感じられた。まるで以前にもこんな美しい一日を経験したことがあるかのように。今日は一体どうしたんだろう?


「来ない? ヒトミちゃん?」


私はそっと首を振った。

「ごめんね、カゴメ。やることがたくさんあるの。今度にしよう?」


「どうせ分かってるよ。今期始まったばかりのアニメを観たいんでしょ? それとも新しいゲームでもやるつもり?」


私はにっこり笑い、二本の指を同時に立てた。

「両方。帰ったらまずアニメ観るの。それで夜はアカリとオンラインゲームを夜遅くまでやる予定。ああ〜人生って素晴らしい。」


「やっぱりね。」彼女は口元を少し歪めた。

「ところでさ、ヒトミってあの静かな子とゲームするの本当に好きだよね?」


「もちろん。あの子、笑うとすごく可愛いんだよ。静かで綺麗な子って本当に好き。ああ〜もし私が男だったらなあ。もうとっくに付き合ってるよ。」

私は嬉しそうに頬に手を当てた。まるでそれがアカリの頬そのものみたいに想像しながら。


「完全に百合じゃん。」


私は唇を尖らせた。

「失礼ね。私は普通だよ!」


彼女はまた口元を上げるだけだった。


冗談だって分かっているけど、なぜか少しだけ苛立った。

どういうわけか、今の年齢になっても男性に惹かれるという感覚がよく分からない。今まで何人も告白してくれた人がいたのも知っているけれど、感情的な繋がりを感じられなくて、結局は丁寧に断ることしかできなかった。


そもそも……恋って何なんだろう?

でも、考えれば考えるほど、その恋という問い自体がばかばかしく思えてくる。


私は黙って荷物をまとめ続け、それからカゴメに別れを告げた。

「じゃあね。私先に帰るよ。バイバイ、カゴメ。」


小さな足で急いで校門を出ると、放課後の生徒たちの流れに加わった。まるで学校から散っていく小さな魚の群れのようだった。


通りの向こうでは、店の並びが色とりどりの灯りを点け始めていた。その背後には高い高層ビルが傲慢そうにそびえ立っている。まるでこの街の経済を支える最も偉大な柱だと言いたげに。道路では多くの車やミニバスが行き交っていた。


私はこういう放課後の時間が好きだ。

街がまだ忙しさの中で呼吸している時間。みんなが家に帰り、それぞれのスマートフォンの画面に沈んでしまう前の時間。


頭上の信号が赤に変わると、私は交差点の前で立ち止まった。その時、エンジン音が唸りながら道路を走り抜けていった。


ふと後ろを見ると、小さな子供が目に入った。小学生くらいだろうか。手に持ったスマートフォンの画面を見続けながら、無防備に歩いている。


絶対に前を見ていない。

歩道の端を越えようとした瞬間、私はすぐに彼の襟を掴んだ。


子供は涙目で私を見上げた。

「お…お姉さん…」


私はにっこり笑った。

「今度から道路を渡るときは気をつけてね。左右をちゃんと見て、スマホばかり見ないこと。異世界に行きたくないでしょ? 小さな弟くん。」


彼は瞬きをした。

「い…異世界?」


「そう。あとで変な女神様に会ってチート能力をもらって、魔王を倒せって言われるの。大変だよ。だから次から気をつけてね?」


彼はこくりと頷いた。

「ありがとう、お姉ちゃん。」


「まだお礼は早いよ。ほら、手を出して。」


彼は手を差し出し、私はそれをしっかり握った。信号が青になると、私たちは落ち着いて道路を渡った。無事なのを確認してから私はその子を離した。


彼は手を振った。

「またね、お姉ちゃん。本当にありがとう。」


「どういたしまして。」私は手を振り返した。


その後、私は背を向けて歩き出した。道を歩きながら、頭を振って小さく笑う。

「異世界転生なんてね。馬鹿みたい。アニメの見過ぎだな。」私は独り言を呟いた。


いくつか細い路地を曲がると、ようやく家に着いた。

大きな家ではないけれど、一人で暮らすには十分だった。


そこは三階にある小さなアパートで、寝室が一つ、キッチンと繋がったリビングルーム、そして西向きの窓がある。夕日を見るにはちょうどいい。


私はドアを開けた。

静かだった。いつも通り。


玄関にはスリッパが綺麗に並んでいた。三足ある。父の分、母の分、そして私の分。残りの二足はもう使われることはない。それでも捨てることができなかった。


リビングの棚の上には三つの写真立てが置かれていた。

父と母、そしてまだ小さかった頃の私。公園でアイスクリームを食べている写真だ。二人は笑っている。私も笑っていた。頬にアイスをつけたまま。


私は少しの間その棚の前で立ち止まった。

小さな布を取り、埃があるはずもないのに写真立てを拭いた。


それから部屋の隅へ歩いた。

小さな仏壇。日本では「仏壇」と呼ばれるものだ。黒く光る木で作られ、両側には蝋燭、香炉、そして父と母の白黒の小さな写真が置かれている。


私は蝋燭に火を灯し、線香を焚いた。手を合わせ、目を閉じて静かに祈る。


「お父さん…お母さん…」


小さく呼んだ。もう二度と返事が来ないと分かっていても。


「今日は…普通の日だったよ。学校に行って、帰ってきて、それからうっかりした子供を助けただけ。今日は仕事もなかったから…怠けてるって怒らないでね。」


私はしばらく黙り込んだ。胸が震えるほど重い溜息を吐きながら。


「向こうで安らかにしてるといいな…心配しないで。私は大丈夫。ちゃんと食べてるし、ちゃんと寝てる…うん…たまに夜更かしするけど。」


「明日は新しい花を買うよ。お母さん、ひまわり好きだったよね?」


「…会いたい。」


私は目を開けた。

そこにあるのはただの恋しさだけだった。どんなに無理やり流そうとしても、もう流れない涙と共に。


しばらくの間、私は仏壇から離れることができなかった。

まるで足に鎖が繋がれているみたいに。


突然、携帯電話が震えた。

画面をつけると、ニュースの通知が表示されていた。


「インドネシア地域で地震?」


私は一瞬考え、口元を覆った。

「それは大変…きっと被害者も多いよね。」


インドネシアは「火山帯の国」として知られている。つまり何百、あるいは何千もの活火山に囲まれた国だ。ある論文では、日本よりもはるかに頻繁に地震が起こると書かれていた。場合によっては一日に何百回も発生することもあるらしい。ただし規模が小さいため危険ではないことが多い。マグニチュード4の地震ですら重要視されないほどだという。


「うう…あの国に住むなんて想像できない。」


ニュースの端には寄付リンクが表示されていた。本当は寄付したかったけれど、残高はほとんど残っていない。母の年金と、IT企業でのインターン給料が入るのはあと一週間後だった。


「もっとお金があれば、たくさん寄付できるのに。残念だけど今は貧乏なんだよね。」私は苦く笑った。


一人で暮らす女の子として、母の年金、日本政府の支援金、そしてインターンの給料に頼って生きている。


「あ、待って…3000円くらいなら大丈夫かな?」


私は迷わず少しだけ緊急用のお金から寄付した。


「うん…今週お金使う予定ないし…多分。いや、そうだといいけど。」


寄付成功の通知音が鳴ると、私は小さく息を吐いた。

少し安心した。母が言っていた通りだ。善いことをすると心が落ち着く。どんなに小さな親切でも。


いつか…もっとできたらいいな。


もう一度、携帯が震えた。


LINEグループの通知だった。

グループ名は「Lab Nakamura」。大学の近くにある研究室でのインターン先だ。教授や助手を含めて十人いる。その中で高校生は二人だけで、私もその一人だ。


私は素早くスクロールした。


[13:45] 佐藤さん: サンプル試験結果出ました。表はドライブにあります。

[14:02] 田中さん: ありがとう。来週進捗ミーティングあるから忘れないで。

[14:30] 中村教授: 送ったジャーナル草稿を確認してください。締切は金曜日です。


いつも通り。

仕事と研究の話ばかり。


正直かなり大変だ。すでに高等教育を受けている人たちについていくのは本当に難しい。


でも…このインターンは手当が高く、大学奨学金の約束もある。学校での成績のおかげでここに受かった私は幸運だ。


私の担当部分はもう終わっている。それでも形式として少しだけチャットに参加した。


その後、友達とのチャットを見た。

その中で一番目を引いたのはアカリのメッセージだった。


[16:47] アカリ: ヒトミ…あとでゲームする?


私は微笑み、ハートの絵文字を送った。


[16:48] 私: もちろん!いつもの7時?

[16:48] アカリ: …うん。

[16:48] 私: 準備万端!イベント素材もう集めておいたよ。あとで一緒に周回しよう。

[16:49] アカリ: …ありがとう。


「ありがとう」。

彼女の口から滅多に出ない言葉だ。


私は画面の向こうで小さく笑う彼女の姿を想像した。嬉しいときだけ見せる、あの笑顔。


アカリは、今の私がまだ少しの幸せを感じられる数少ない理由の一つだ。


まだ夕方五時だったので、私はノートパソコンを開いてアニメを見ることにした。


画面が点き、デスクトップには配信アプリ、仕事、ゲームのアイコンが並んでいる。


配信アプリを開こうとしたその時、私の目は別のアイコンに止まった。

星が輝くロゴ。


Starlight Romance。


私が一番好きな乙女ゲームだ。何千回プレイしても飽きないゲーム。


「そういえば、最近全然やってなかったな。ちょっとだけ遊ぼう。」


私は誘惑に負けてクリックした。

ロード画面が現れ、オープニング音楽が静かに流れる。ピアノの旋律に優しいヴァイオリンが重なる。


そして魅力的な笑顔の美男子キャラクターたちが現れた。


金髪で勇敢なレオ王子。

無愛想だけど忠誠心の強いガヴィ。

そして他にも恋人候補になるキャラクターたち。


「え?待って…なんかキャラ一人足りない気がする?」


私は首を傾げたが、すぐに自分でその考えを打ち消した。


「いや…気のせいかな。」


昔から私は乙女ゲームが好きだった。

そしてこれは私が最初にプレイした乙女ゲームでもある。


この手のゲームは構造、物語、流れがとても整っている。

整いすぎて、現実世界とは思えないほど。


それともこのゲームは、私が残酷な現実から逃げるための場所なのだろうか?


私はアリシアみたいになりたい。

美しくて、いつも笑顔で、お金持ちで、優しくて、勇敢で。


彼女はいつも幸運に恵まれている。

奇跡に愛されている。


羨ましい。

私も彼女になりたい。


でも…そんなことは絶対に不可能だ。


「はは…アニメみたいにゲームに転生するとか。さすがにありえないよね。」


私はマウスを動かし、レオのキャラクターをクリックした。

そして「START」ボタンを押した。


画面にはすぐに最初の出会いのシーンが表示された。

貴族が平民をいじめるという、ありがちな場面。


私はアリシア・ヴァン・バステンとして彼らを助けに入る。

そこにレオ王子が現れ、私が完全に覚えているセリフを言う。


でも…全部知っているはずなのに、なぜかそのシーンに違和感を覚えた。


何かが違う。

でも何が?


「私どうしたんだろう…」


私は軽く頭を叩いたが、何も思い出せない。

ため息をつき、そのままゲームを続けた。


画面にレオが現れると私は微笑んだ。


「立派な貴族なら、他人に残酷なことをしてはいけません。」


「はいはい、レオ。理想主義の優しい王子様。将来王様になって、私は王妃になって…国民は幸せに暮らす…全部本当ならね…。」


だんだん目が重くなってきた。

画面がぼやけ始める。


キーボードの上の指の力が抜けていく。

頭がゆっくりと下がっていった。


画面の中ではレオがまだ話しているのに、私は何度もあくびをしていた。


「…眠い…」


画面はさらにぼやけた。

ピアノの音も遠くなっていく。


そしてついに、私の目は閉じられ、暗闇に飲み込まれた。


ゆっくりと、私は目を開いた。


頭上には赤い絹の布で覆われた天井しか見えない。

ベルベットのベッドの上だ。


私は体を起こし、両腕を上に伸ばした。


「ふぁぁ…なんだか昨日、夢を見た気がする。でも何の夢だっけ?忘れちゃった?」


思い出そうとして頭を揉んだが、完全に忘れてしまっているようだった。


「まあいいか。大した夢じゃなかったんだろう。」


ベッドの足元を見ると、深い青色の学院の制服が置かれていた。マント付きで、膝までのスカート。


よく知っている制服。

ずっと着たいと思っていた制服。


私は立ち上がり、指先でその制服を撫でた。


「きっとアデラインが準備してくれたんだ。でも学院から制服が届いたのっていつ?今朝?それともアデラインがずっと隠してたのかな?」


私は肩をすくめた。


「まあいいや。そんなことは重要じゃない。」


私は拳を握り、元気よく言った。


「さあ、今日も元気いっぱいで朝を迎えよう!」


決意と興奮で胸が満ちていた。

今日、私は学院に入る。


ゲームのシナリオに従うのではなく、自分自身が作る道で。


「絶対に…トゥルーエンディングよりも満足できる結末を作ってみせる。」


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