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リインカーネイターVSリグレッサー  作者: ダン・水木
アーク1 - 入学試験

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幕間3:クレアの気持ちとレオ対ラウルの戦い

PoV クレア


怒号がまだ闘技場の観客席を包んでいた。まるで死闘だったかのようにガヴィを殺しかけた後、ラグナルが何事もなく歩き去るのを、人々はただ見守っていた。


隣のレオは、顎を固く食いしばったまま立ちすくんでいた。担架で友人が運び出されるのを見て、彼の怒りは頂点に達していた。ダニとダフニーは、彼が落ち着くまで座るよう説得しようとしている。


その一方で、私のすぐ隣では、アリシアが両手を握りしめたまま突っ立っていた。彼女はうつむき、下唇を噛みしめている。その瞳は暗く、明らかに怒りを必死に抑えていた。


「クレア……ちょっとトイレに行ってくる。」声が震えていた。怒りを隠せていない。


「わかったわ。」私は彼女が去る前に、思わずその手を握りしめ、潤んだ目で見つめた。「無理しちゃだめよ、アリシア。」


彼女は作り笑いを浮かべると、私の警告には答えずに立ち去った。


なぜ彼女がそこまで怒っているのか、私にはわからなかった。ラグナルのやり方があまりに過激だったから? それとも、私の知らない何か別の理由があるのか? だって……彼女はガヴィのことなんて知らないはずだ。なのに、なぜ長年の知り合いであるかのように激怒しているんだ?


「ああ……またこれだ……」私は独り言のように呟いた。


昔から、私は直感が鋭い。まるで自分が歩く水晶玉かなにかのように。自覚はあるが、誰かに悪用されないよう、そのことはずっと隠してきた。


でも……この能力は、私にとっては枷でもある。人の「誠実さ」が見えてしまうから、心から近づいてこない相手とは絶対に親しくなれない。


そのせいで、ずっと窮屈な思いをしてきた。


ロシアの小説家、ドストエフスキーの言葉を借りるなら――「真実は必ずしも人を幸せにしない。なぜなら、それは自らの希望を打ち砕くからだ。」


私はいつも正直に生きたいと願ってきた。だからこそ、心から友達になりたいと思って近づいてくれる人を見つけるのが、とてつもなく難しい。大半は、父とのコネか、別の下心があるだけだ。


でも……アリシアは違う気がする。


初めて会った時から、彼女はまるで私のことを前から知っているかのように振る舞った。確かに、彼女は何かを隠している。でも……その一方で、彼女の誠実さも感じる。その誠実さが、私に彼女の申し出を無視できなくさせた。


あのモンスターの赤ん坊たちの話をした時、彼女の誠実さはさらに明確になった。そして、ラグナルに立ち向かって言い争った時の、あの揺るぎない姿勢。あれは私にとって、とても特別で、真摯なものに映った。


もう彼女が何を隠しているかなんて、どうでもいい。私は尋ねない。いつか、時が来たら、彼女自身が話してくれるのを待つだけだ。


きっとそうなる。私は確信している。


「アリシア……」


気がつくと、私の意識は体から離れかけていた。心は空白のままで、静かな夢想に溶け込んでいた。しかし、それは試験官が最後の対戦者の名を叫んだ瞬間に、一気に打ち砕かれた。


「この試合は特別だ。だからこそ、最後に持ってきた。これは学園長からの特別な要請でもある。同じ舞台で己を証明せんとする二人。誇りと、それぞれの理想を賭けて戦う二人。未来に王座を争う二人の王子を迎えよ……」


名が呼ばれる前に、二人はそれぞれ反対側の観客席から立ち上がり、歩み出した。一人は光と民衆、そして力を象徴する。もう一人は貴族と策略、そして汚い手段を象徴する。


「レオ! ラウル!」


名が轟いた瞬間、二人は同時に観客席から飛び降りた。足が砂地を捉え、砂塵が舞い上がる。


レオの唇は、楽観的に歪んだ。「前置きはいい。さっさと始めよう、ラウル。」


ラウルは皮肉な笑みを返した。「ご随意に、兄上。」


あの自信はどこから来るのか。傲慢にすら見えた。この勝負を、まるで朝飯前だと思っているかのようだ。力の差は歴然で、誰もがレオの圧勝を疑っていないというのに。


レオが手をかざす。囁くような詠唱と共に、彼の足元に魔法陣が現れた。そこから、一振りの輝く剣が姿を現す。


彼はそれを引き抜き、威風堂々と掲げた。風とマナの奔流が周囲を呑み込み、闘技場の砂塵をほとんど吹き飛ばした。


「あれ……聞いたことがある。」ダニの声が震えていた。「あれは、彼が十四の時に他の騎士たちと危険な任務を遂行した褒美として、国王自らが与えたという、聖剣の試作品だ。」


「試作品……聖剣?」私は彼の言葉を繰り返した。


噂は聞いたことがある。だが、それが真実だとは思わなかった。なんせ、聖剣の試作品はドラゴンすら屠ると言われている。そんな危険な代物を、なぜ子供に持たせられる?


疑いたかった。しかし、私の直感はそれが真実だと告げていた。だが、あまりにも昔の話だったから、すっかり忘れていたのだ。


レオは剣先をラウルに向けた。しかし、黒髪の男は相変わらず傲慢な笑みを浮かべている。彼は腰の後ろに差していた短剣を抜いた。


何気なく抜き放ち、太陽の光を反射させる。一目見て、それは異質だった。刃は異様に薄く、まるで片刃だけしかないように見える。


どう見ても西洋の剣ではない。東洋の剣だ。「ラグナルのと……同じだ。まさか、あれも彼から?」


「うっ……」ダニが額を押さえた。


「どうかなさいましたか、若様?」ダフニーが尋ねる。


「なんと言えばいいか……。だが、あの剣はとてつもなく危険だ。以前、ラグナル殿の作品を買って調べたことがあるんだが、それは……普通のアーティファクトとはまったく次元が違った。」


ダニの言葉に、私は改めてあの剣を凝視した。最初は何も感じなかったし、周りの観客からは嘲るような声も聞こえていた。


だが、その時――私の直感が警鐘を鳴らした。まるで「逃げろ」と叫んでいるかのように。


私はスカートを握りしめ、皺になるのも構わなかった。


これは……ヤバイ。


レオは両手で剣を構えた。全身が青いオーラに包まれ、剣はまばゆい金色の輝きを放つ。対するラウルは、だらりと構えていた。両膝をわずかに曲げ、短剣を無造作に前に向けただけ。頼りなく、弱々しくさえ見えた。


「始めよう、ラウル!」


「来いよ。」


レオが突進し、縦に斬りかかる。しかしラウルは二度剣を払い、その一撃をいなすと、レオを数歩後退させた。


カン、カン。


「悪くない。」レオが呟く。そのこめかみには、脂汗が浮かんでいた。「どうやらようやく鍛錬したようだな。」


「ふ~ん、俺は一度も鍛錬したことないぜ? でも……この剣が勝手に導いてくれるんだ。」


私が聴覚を研ぎ澄ませたおかげで、その会話がはっきりと耳に入ってきた。レオも、私も、思わず眉をひそめた。


レオが再び間合いを詰める。今度は弧を描くように回り込み、背後を狙う。だがラウルは、その動きすら読んでいるかのようだった。体をわずかに沈め、水平の斬撃をかわすと、素早く二撃を返し、レオの背を捉えた。


「ぐあっ!」


背中が裂け、血が噴き出す。だがレオは諦めなかった。即座に振り返り、ラウルに接近戦を挑む。


カン、カン、カン。


二人は刃を交錯させ、互いに斬り結ぶ。一見すると、レオが優勢に見えた。剣を振るうたびに衝撃波が発生し、ラウルを圧倒しているように見えた。


でも……ボクサーである私にはわかる。ラウルは反撃の瞬間をじっと待っている。足はまったく動じていない。重心をわずかに前足に移している。アッパーカットの構えだ。剣術でなんと呼ぶのかは知らないが。


シュッ!


思った通りだった。彼の剣がアッパーカットのように振り上げられ、レオの連撃を断ち切り、その顔面をかすめた。


レオが後方に跳ぶ。だがラウルは追撃を緩めず、斜めに斬りかかる。剣の長さはせいぜい四十センチ。あの斬撃は空を切ったはずだ――少なくとも、そう思った。


「ぐあああっ!」


突然、レオが悲鳴を上げた。彼は地面に倒れ込み、肩を押さえて悶えている。まるで、あの斬撃が確かに彼を捉えたかのように。


なんとか立ち上がる。「な、なにを……したんだ?」息も絶え絶えに、肩を押さえながら問う。「確かにかわしたはずだ。何が起きた?」


ラウルは肩をすくめて、ほくそ笑む。「さあな。でも、実際お前はかわしてるぜ。見ろよ、血なんて出てないだろ。」


レオは自身の手のひらを見て、愕然とした。血の跡などなかった。視線を肩に移す。そこにも、血はなかった。


「な、何が……」ダニがダフニーに訊ねるが、彼女はただ首を振るだけだった。そして、ダニは私に振り向いた。「クレア様、何が起きたんです?」


私は深く息を吐いた。「私にもわからない。見ている私たちも混乱している。直接戦っているレオに、今の状況が分析できると思う?」


「くそっ、アリシア様がいれば、きっと説明してくれるのに。」


私は黙って頷いた。


私たちは再び闘技場に視線を戻す。混乱したまま、ただ状況を推測することしかできなかった。


ラウルは短剣を垂直に掲げ、刃を下から上へとなぞった。「この言葉に偽りはない。この剣は、想像を絶するほど素晴らしい。」彼は刃を見つめ、感嘆の声を上げた。「君の名前はキミマロ、だったな。俺にぴったりの名前だ。よし、今日からお前は俺の相棒だ。一緒に戦おう、キミマロ。」


私は彼がまるで剣に話しかけているように見えて、眉をひそめた。これが、騎士が己の剣に感じるという、あの「狂気」というやつか。剣の「声」が聞こえるという幻想。


ラウルは再びレオに向き直り、蔑むような視線を送った。「続けようか、兄上?」その声は、嘲るようだった。「それとも、まだ状況を理解する時間が必要か?」


レオは首を振った。「必要ない。続けよう!」


彼は先ほどと同じ構えを取った。いや……微妙に重心が異なっている。防御とカウンターに徹する構えだ。


「それがお前の選択か。よし、じゃあ俺から行くぞ。」


突進する前に、彼はもう一度刃をなぞった。その口元に、凶悪な笑みが浮かぶ。


刹那、刃が漆黒に染まった。同じ色のオーラがラウルを包み、右目が真紅に輝く。


異変を察知し、私は感覚を研ぎ澄ませた。


そして、戦慄した。彼の鼓動が加速している。いや……まるで、一つの体に二つの鼓動が存在しているかのようだ。


「何が……起きたんだ?」私は半ば呟くように言った。


すべての準備が整った瞬間、ラウルが突きの体勢で猛然と迫る。


カン。


レオは辛うじて一撃を防ぎ、反撃に出ようとする。だが、剣を振りかざすよりも早く、ラウルは間合いを詰め、幾度となく斬撃を叩き込んだ。


レオは為す術なく、その攻撃を浴び続ける。何度か防ごうと試みるが、先ほどまでのラウルとはまるで別人だ。ラウルの動きは格段に速くなり、反射神経も向上していた。


シュッ、シュッ、シュッ。


戦いが長引くほど、レオの体には無数の斬撃痕が刻まれていった。そして彼は、ラウルの猛攻にまったく反撃できずにいた。残された力のすべてを振り絞り、縦に一閃する。それは、虚しい抵抗だった。


だが――予想外の出来事が起きた。ラウルが、その攻撃を真っ向から受け止めたのだ。二つの剣が激しくぶつかり合い、衝撃波が発生。闘技場のすべてを吹き飛ばした。


「勝ったのは誰だ!?」


全員が立ち上がり、目を凝らす。砂塵が視界を遮る中、誰もが固唾を飲んで見守った。私には、闘技場にいる全員の鼓動が、戦の太鼓のように聞こえていた。


フッ――。


ゆっくりと、砂塵が晴れていく。そこには、立ち上がり、剣を地面に跪く影に向けて突きつけている一人の影があった。一陣の風が砂の幕を引き裂いた時、誰もがその口を手で覆った。


「勝者……ラウル王子!」


勝者が告げられた瞬間、一瞬の静寂の後、怒号が爆発した。誰一人として、レオの敗北を予想していなかった。観客席の全員が囁き、叫び、罵声を浴びせた。それはレオではなく、ラウルに向けられた。奴がズルをしたと決めつけて。


「あの飲んだくれがレオ王子に勝てるわけがない!」


「そうだ! 絶対に何かズルをしたんだ!」


しかしラウルは、まったく動じていなかった。むしろ、観客席に向かってお辞儀をしてみせる。まるで、これが皆を楽しませるための余興だったとでも言いたげに。


「まさかレオ王子が負けるなんて……」ダニが額を叩いた。「俺たち、どうすればいいんだ?」


私は、未だに膝をつき、目を潤ませているレオを見た。彼は、自分に何が起きたのか信じられない様子だった。アリシアがいれば、きっと何かしてくれただろう。でも、何を?


私は深く息を吐いた。「励まそう。」


ダニとダフニーが頷いた。私たちは闘技場に降り、優しい言葉と励ましで彼を慰め始めた。それでも、誰一人として、異母兄弟であり、王位を争う相手に完敗した彼に対して、哀れみの笑みを隠せなかった。


「アリシアは?」レオが尋ねた。


私は無理に笑みを作った。「ちょっと用事があるんだって。もうすぐ来るわ。私にはわかるの。」


私は入り口の通路に目をやる。わかってる……彼女はさっきからずっとあそこにいる。でもなぜ出てこないんだ? 彼女の心臓の音は酷く乱れている。何があったんだ? わかってる……きっとまたラグナルとやり合ってるんだ。


「無理しなければいいけど……」私は呟いた。


でも……ほどなくして、アリシアの足音が近づいてくるのが聞こえた。彼女は微笑んでいた。いつもの強がった笑顔じゃない。壊れそうだけど、どこか誠実な笑顔だった。心臓の音は、さっきよりは落ち着いている……でも、まだ少し乱れていた。


きっと、通路の奥でラグナルと何かがあったんだ。でも……私はもう、それについて尋ねる気にはなれなかった。信じてる……いつか、時が来たら、彼女自身が話してくれるだろう。


私は軽く微笑んだ。「遅かったわね……アリシア。」






ええ、この幕間劇を二つに分けた方が良かったかもしれませんね。まあ、いいでしょう。とにかく、これが最後の幕間劇で、第二章は明日から始まります。

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