最終章 2 明日が見える 1
最終章も最後の内容に入りました。
2 明日が見える
いつの世にも、これだけはないだろう。
そんな事ってあるはず。
しかし、本当にそうかと言われれば、確かめる術などないものだって多い。
ただ、そうと信じている。
もし、世の中が誰かの手の中にあるとしたら?
すべてではないにしろ、一部でも誰かが握っているとしたら?
「あるだろ、そんなの。
だってバスだって電車だって時刻通りに来るし、これってやっぱり誰かが決めてるんだし。
法律だって、自分達を守ってる。
これはみんな知ってることだ」
と、言うだろう。
確かに、世の中がスムーズに生きられるようにするためのシステムだ。
では、情報は?
そう、世の中のそのシステムの多くは、様々な情報の上に成り立っている。
その情報が誰かに握られているとしたら?
握られているというより、誰かに操作、誘導されていたら?
今や情報なくして進んでいかない。
なら、その情報を思うように扱えたら、もうこれ以上強いものはない。
そう、情報が全てを握っていると言っても過言ではないかもしれない。
その情報が誰かの意識下にあったら、もう、それは考えたくもない。
言い過ぎているとしても、それを確認する術もどこにもない。
しかも、その技術が高度であればあるほど、見抜ける可能性は低いだろう。
実行するためにはそれなりの条件が必要になる。
行使しようとする者。
そして施設と設備。
それを行使できる高度な技術を持つ者。
これらの条件をクリアして、初めて目的が達せられる。
ならば、この条件をひとつひとつ見てみると、この条件に見合う者がどれだけいるだろうか。
そう、行使できる者がどこにいるだろうか。
これだけの行為に、皆が手を付けられるものではない。
それでいい。
そうでなければ、誰か、もしくは、どこかの組織にその情報を独り占めさせてしまう。
そんな状況は喜ばしくない。
それどころか、絶対に避けなければならない。
その手を出してはいけない、ハチの巣に手を伸ばすような行為をしようと試みたのが、
IIMCという組織だった。
ハチの巣には、女王蜂と、
女王蜂により多く子どもを産ませるために栄養を集めて、生まれた子どもの世話をする働き蜂がいる。
これを組織に置き換えると、代表者と多くの情報を集める技術者となる。
IIMCから、技術の大半を担う人材として狙われたのが、スピースだった。
しかし、IIMCの望む姿(本音)に気づいたスピースは、反対の意向を持った。
スピースは、その要求から逃れるべく、あらゆる方法で悪あがきを繰り返した。
しかしIIMCが諦めるはずもなく、その勢いのままスピースに追い打ちをかけ、
結果裏切られるという、何とも情けない姿をさらした。
だからと言って、そのままで終わるIIMCではない。
何とかしてでも、IIMCの思惑通りに進めるため、ある企業と手を結んだ。
それは一見は貿易商だが、扱うものが武器、特に戦争に使うものが主。
その会社は情報操作を行い、自分達の扱う商品(武器)を消費者(戦争中の国や組織)、
しかもその敵の国や組織にまで売りつけ、利益を上げている。
自分達が儲かれば、誰がどうなっても関係ないくらいにしか考えていない。
そんな組織と取引し、スピースを売り渡した。
情報を共有することを条件で。
IIMCが組んだ相手が、ジード社。
このジード社。
スピースを喉から手が出るほど欲しかった。
IIMCに再三働きかけ、やっと願いが叶った。
その方法があまりにも汚い。
お金と交換だけなら、まだ納得してもいい。
しかし、そんな単純なものでなく、時間をかけてスピース自身の気持ちを打ち解けさせた。
スピースにそれと気づかせない、その方法が汚い。
しかも、これで終わらない。
何が、って?
スピースが、ただ一企業のためだけに情報収集から分析その後の情報操作まで、行う訳がない。
スピースはそれを一番嫌っているのだから。
この情報操作、言葉は簡単だが、内容はただ事では済まされない。
事によっては、世界中を混乱に陥れる可能性が強い。
そんな紙一重の状態を、スピースは嫌っている。
好んでしたいなんて思うはずがない。
たとえ強制されたとしても、手を出すとは思われなかった。
それでもスピースは、その状況で何を出来るのだろうか。
いや、出来ること自体が限られているだろうとしか、考えられない。
それでも、スピースなら何かしそうだが、今まででもこのような状況で、何もできた試しがない。
それどころか、相手の言うなりだったことしかない。
以前何度か誘拐され、その度に要求に応えてきた。
それが命の危険を感じた結果だとしても、納得などしていない。
一切、納得などしていない。
スピースが、まだ利沙だった頃、誘拐されハッキングを使って犯罪に手を染めた。
そして、それが元で利沙は利沙でいられなくなった。
そしてリンが生まれ、その後は理不尽な要求には決して従わない。
その方針を取って来た。
なのに、ここにきて気づいた時には、もう状況は望むべくもない、
最悪と言わざるを得ない、そうなっていた。
そう、リンとなってIIMCで作業するうち、何人かの気のおけない友人が出来た。
その気心知れた友人の中に、リンの気持ちを魅こうと努力に努力を重ね、ついに目標を達成。
リンを自分の目的の地に、誘導出来た。
その目標は、断じてIIMCの思惑と重ねてはいるが、必ずしも一致してはいない。
IIMCには手段として、何よりパートナーとして選んだのだが、
結果としてその人物には裏切られるという、譲れない部分で隙を作った。
だからこそだが、それには目を瞑りたかっただろう。
IIMCは、情報を操作する目的でその企業・ジード社にリンを引き渡し、
そのリンが仕入れた情報をIIMCに流してもらえる運びになっていたにも関わらず、
いざ箱を開けてみると、情報は流れてきたが、目的通りの物など何もない。
それどころか、流されてきた情報そのものが、すでに操作された気配がある。
しかし、それを確かめる術がない。
その情報とは、あのリンが仕入れて明らかな証拠を残さない方法で操作されたものだ。
IIMCにリンを攻略できる技術がない。
どんなに優秀でも、IIMC単独では無理だ。
もし攻略できるとすれば、今までIIMCに捕らえれたハッカーの中にいるかもしれない。
たとえばアンリードであったり、ヘイクワースがそうだ。
他の者に比べて群を抜く技術を持つ。
しかし、この二人がIIMCに協力するとは思えない。
なぜならIIMCに対して、たぶん他の誰よりも否定的だからだ。
協力などするはずもない。
それがリンに関係することとなれば尚のこと。
この二人、今ではリンと緊密に連絡を取り合っている。
しかも、情報操作に関して協力体制を取っている。
これを知る者はごく限られていた。
その中にコルテラがいる。
コルテラは、リンを自分の思う通りに従わせる目的で自分のテリトリーに連れてくるために、
IIMCに圧力をかけたものの、
時間をかけリンに関わっていくうち、
なんと、リンに取り込まれた。
言い換えると、 惚れた。と、言える。
リンとの会話ややり取りに楽しさや発想にワクワクさせられ、
ハッカーとしてよりも人としての魅力を感じ、
それから人としてよりも女性としての魅力に取りつかれてしまった。
そして、コルテラには懸念材料がある。
以前からリンと仲よくしていた、二人のハッカーの存在だ。
この二人には、リン自身も好意を抱き、お互いの思いは、周囲の人間からも認められている。
この間に割って入るなんて、かなり無謀な考えにも思われたが、
コルテラは、そんな周りの意見に耳を貸す事無く、
我が意のままにリンに近づき、
リンの気持ちを強引にでも自分に向けた。
リンは、そうは知らずコルテラの思いに気づかされ、
その時にはすでにコルテラの手の中にいた。
アンリードもヘイクワースの手も、届かないその場所に。
もうすぐで本当に「最終」になります。もう少しお付き合い頂ければ幸いです。
よろしくお願いします。




