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第二章  13

           10


 以前? 


 何があったのかは、少し振り返らなくてはならない。


 それは、リンが21歳の、あの日本での一件。

 日本から本部に戻された時に始まる。


 リンがクレイ達と本部に戻って来た時、出迎えたのは、フェルデ・チームのフェルデだった。


 冷ややかな表情と視線、冷たく突き放つ言葉。


 何をとっても、明らかな敵意。

 それしかなかった。


「お疲れさん。クレイ、ここからは私達が引き受けるよ」


 フェルデと同じチームのホイソンとサミーが、クレイからリンを受け取った。


 その後、クレイはリンの様子を見に行ったが、

 どうにも納得のいく取り調べの雰囲気はなく、正直目を覆いたくなる光景しかなかった。

 だから、という訳ではないが、徐々に足が遠のいた。


 リンが地下室の取調室に入れられてすぐ、フェルデにきつく念を押された。


「分かっていると思うが、ここでは何も手加減はしない。

 もし、言いたいことがあるなら、どんどん言うんだな。

 もし、黙秘しようなんて考えなら変えた方がいいだろう。


 さっさと話したら、我々も何もしない。

 ただし、何か抵抗しようとするなら、それなりに覚悟しておけ。

 そうでなければ、耐えられないだろうからな」


 軽い口調で、人を馬鹿にでもしているかのような、そんな言い方だった。


 当然、リンは好きになれなかった。


 リンは椅子に座らされ、フェルデと向かい合った。

 最初に話したのは、意外にもリンだった。


「私は、何もしない。

 なのに、なんでこうなってるのか分からないんだけど……」


 そのいかにも軽い言い方が気に障ったのか、フェルデは鼻で笑ってから、


「そうか? だったら、教えてやるよ」


 異様な迫力があった。

 リンは、一瞬その迫力に飲まれそうになって、


「なにを? 

 私は何もしてない。レイミアンから何を聞いてるか知らないけど、何もしてないよ。

 そりゃ、……ちょっとばかり、外の空気を吸いたいとは思ったけど、

 ……でも、何もしてないから」


「ほ~、そうか、……外の空気ね。

 それを言いかえると、何になるか知ってるか?」


「…………」


「返事は無しか?」

 リンが返事に困っていると、フェルデはリンの横に立っていたサミーに合図を送った。


「あっ、……!」

 リンの体は机に強く押し付けられた。


 いきなりだったため受け身は取れず、呻くしかできなかった。


「返事をしろと言ったはずだ。違うか?」


「わ、分かった。でも、……」


「でも、だと? 

 逃げたかったんだろう?」


「違う。そうじゃない」


「そうか? 

 もう少し、きちんと話してほしいものだな!」


 そう言うと、押さえつけたリンの視線の先に、一本の注射器を置いた。


 それを見たリンは、体を強張らせた。

 無意識のうちに……。


 フェルデは、鼻で笑った後、

「はっきり言っておく。


 これは、今まで使った自白剤みたいなものとは、違う。

 一度使ってみれば分かるはずだ。

 その効果は絶大だとな。


 さっさと話せ。そうすればこれに拮抗する薬を打ってやる。いいな?」


 冷たい、あくまで冷たい一言だけだった。


 ホイソンは注射器を手に取り、サミーに押さえつけられて、身動きの出来ないリンの手に注射した。


 これからリンの過去と現在が行ったり来たりします。よろしくお願いします。

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