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第二章  6

                 5


 リンに一人近づいてきた、コルテラだった。


「ワーティさん。良いですか?」

「ああ、何? 何か用ですか?」


「あの、氷、使ってもいいですか?」

「氷? 氷って、何に使うのですか?」


 ワーティは、休憩時間でもないのに、コーヒーです。

 なんて言うとは思わなかったが、ただ、何に使うのか、予想もつかなかった。


「いえ、ただ、リンに使いたくて。

 それと、ナイロン袋とタオルも一緒に貸してください」


「リンに?

 分かった。でも、ナイロン袋?」


「はい、ちょっといいですか? 

 たぶん俺が思うには、……リン、ちょっと見せてみろ」 


 そう言って、リンの袖をまくった。

  すると、そこには火傷の傷があった。

 新しいものではないが、十分に痛そうだった。


「リン! どうして?」


 動揺するワーティに、コルテラがいつもは見せないまじめな顔で、


「心配いりません。すぐに良くなりますよ。そんなに深いわけじゃないから。

 ……リン、ちょっと待ってろ、すぐ冷やしてやるよ」


 そう言って冷蔵庫に向かっていき、しばらくしてナイロン袋に入った三つの氷を持ってきた。

 それを丁寧にタオルに包むと、リンの火傷のある右手首と、両足首に当てた。


「これで、少しはましだろ?」


 その様子をワーティは静かに見ていた。

 そして、こう言った。


「どうして、分かった? 

 しかも足までとは……」


「なんで?  

 そんなのハッカーだからですよ。スタッフには、想像すらできないでしょう? 

 リンがこの一ヶ月何をされていたのかは」


「コルテラには分かるのか?」

「……まあ、ね。それなりの経験は積んでいますよ。

 それなりに、……ですけど」


「そうか? 

 まあいい。……ありがとう、作業に戻ってくれ」


「はい。……分かりました。後は、……お願いします」


 コルテラは、すっと自分の席に戻っていった。



「コルテラ。あんなことしなくてもいいんじゃない? 

 自業自得でしょう。リンは……」


 席に戻った途端、サーシャが声をかけた。


「うるさいな。

 あれが、何か知ってて言ってるんなら、俺は許さない。

 あんな思いは、……考えただけでも恐ろしい。

 それともお前は、そんな思いしなかったのか?」


「……そういう訳じゃ、でも、あの火傷、どうしたの?」


「は? 何? お前……分からないって?

 ……へえ、幸せだよ。あはは……。知らないんだ? 

 へえ、知らない奴がいたのか。知らなかったなあ、そんな奴いるんだ。……」


 コルテラはずっと笑いをこらえながら話している。


 そこへ、

「コルテラ、作業しろと言ったはずだ!」

「すみません」


 そう言うと、手元の作業にかかった。

 でも、必死で笑いをこらえているのは、明らかだった。


「何よ。教えてくれてもいいじゃない。

 それにコルテラも経験済みたいだし。なんなのよ」


 コルテラは、何とか笑いをこらえると、


「何って、取り調べどうだったんだ? 

 何か機械とか使われなかったのかよ?」


「機械って、それなら部屋の隅にあったのは見たわ。それが、何?」


「……何、ね?

 う~ん……、取り調べ、すごく順調に過ぎた? 

 何も抵抗せず、なんでも、答えまくった、って?」


「なんか、その言い方すごく軽いし。

 しかも、嫌味っぽく聞こえるんですけど……」


「嫌味っぽくではなくて、そのまま、嫌味です。

 でも、……幸せだな? 

 あれを経験しないって。でも……、全部、素直に話したのか? 

 自分の、その、……」


「話したわよ。なんか、その。

 ……機械なんて嫌だったし、それに、どっちにしても話さなきゃならないなら、

 嫌な思いしたくなかったもの」


「まあ、そうなんだけど……、だったら教えてやるよ。

 あれは、電気ショックみたいなもんだ。

 手と足に電極付けて、あいつら(捜査官)が言うには微量の電気を流すんだよ。

 ちょっとくらいなら、我慢できた。

 でも、回数が増してくると、電極部分に火傷が出来る。

 それより、そうなった時には、もうすでにかなりの体力はなくなってる」


 そう言いながら、その時の傷だよ。

 と、コルテラは自分の手首をサーシャに向けた。


「どうして分かったの? 

 リンがそれを、……されたって?」


「分かるさ。あの疲れ様。

 それに、……リンって一回も腕を人前にさらさなかっただろ? 

 それどころか、暑くても袖をまくらなかったし、もしかしたらって思ってた。

 だから、今回も。

 ……だって、取り調べで使われたなら、今回だって使うだろうって、ちょっと想像してみたんだよ。

 ただ、それが当たってたってわけだ」


 一気に話すと、背後に何か重たい空気を感じた。


 さっきから視線を感じる。

 それも非常に冷たい。


 きっとワーティのものだ。


 後ろを向いて確認する気も起らない。


「これ以上話してると、また何言われるか。

 ……今は作業しよう」



 二人は、リンを気にしながら作業を続けるしかなった。


 IIMCのハッカーに対する態度は、もうご理解いただいていると思いますが、これからも、こんな感じです。

 よろしくお願いします。

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