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花が咲く 第三部  ~温かい思いとその果て~  作者: 三布
第二章  24歳  思惑
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第二章  5

 

               4


 香波が、無理に仕事に戻された後、リンは捜査官二人に連行されて行った。


 それは、他のハッカーが見届ける事態になり、一体何が起こったのかと、話題になった。

 しかし、その後はリンの姿を見られなかった。


 チームリーダーには伝えられていたが、その他の誰も、

 リンのその後について知らされていなかった。


 それが、一ヶ月くらいたった頃、

 いきなりチームが作業しているその部屋に、捜査官に連行されてきた。


 もうすっかり、暑い陽射しが窓辺を照らしていた。

 ラベンダー畑にかわいい紫の花の香りが充満していそうな、そんな季節だった。



 捜査官がリンを連れてきたのは、午後。

 ちょうどお昼の休憩を終えて、午後の作業を始めた頃だった。


「リン! だ、大丈夫か?」


 抱えられて部屋に入って来たリンは、捜査官に乱暴に置いて行かれた。


「もう、手を煩わせるな。

 ……ワーティさん、これまで以上に、監視をよろしく」


 それだけ言うと、捜査官は部屋を後にした。


 残されたリンは、部屋の床に体を預けていた。

 顔色は、ひどく悪い。


「リン、大丈夫か。少し休もう。いいか?」


「…………」


 ワーティはリンの体を、部屋の隅にあるソファーに移した。


「リン、今日は休んでいなさい。

 構わないから、何も……気にしなくていいから」


 ワーティは、リンに優しく話しかけ、水を一杯飲ませた。


「ありがとうございます。でも、……いいんですか?」


「構わない。気にしなくていい。とにかく今は体を戻す方が先だよ」


 ワーティは、男性のわりに気が利く。

 周りとの調整も上手い。

 どんなに厄介事でも、問題なく解決してしまう。


 その手際は、どんな人も納得させてしまう。

 どこがすごいって、誰にも文句を言わせるような隙がない。


 また、仕事に於いても抜かりない。


 ドジな所は、会議の時間を間違えたり、書類を忘れるといったくらいで、それも容認されてしまう。

 それ程、優しい人柄が認められていた。


 リーダーに抜擢されたのは、人を育てるのが非常に上手い。

 そのためだった。


 そんなワーティのチームに、リンが合流したのは三か月前。

 それからは、特に問題を起こさず、チームの一員として暗号解読などの作業に従事していた。


 ただ、以前のようにチームの人間と特に親しくしようとか、

 そんなことは一切なく、ただ、与えられたものだけを、淡々と行うだけだった。


 スタッフのみならず、同じハッカーでさえ、

 あいさつと作業内容に関する以外は、話さなかった。


 ワーティは、リンを以前から知っていた。

 同じ立場のフランから。


 フランは、リンの以前のチームリーダーだった。

 そのフランから、リンについて詳しく聞いていた。


 性格は秘めた感じだが、これと思ったら、決して引かない。

 技術レベルは誰よりも高く、困った時は、必ず力になってくれると。


 ただし、敵を作りやすいが、味方につければこんなに頼りになる者はいないだろうと。


 様々聞いていたが、問題を起こす可能性があるとするなら、

 真っ先にリンだろうということさえも、教えられていた。


 最初に会った時の印象は、大人しそう。

 だが、リンの実力を見せつけられるたびに、


「こいつは、やっかいだ」

 と。


 何よりリンの技術力は、ここにいる誰よりも上をいっていた。

 懸念材料にはもってこいだ。


 そんなリンが捜査官に連行されたと聞いた時、何があったのか分からなかった。


 立ち入り禁止区域への侵入と英語以外の言語の使用。

 が、理由だと聞いた時には、納得がいかなった。


 なぜなら、ここに来て何年にもなるリンが、

 そんな基本的な罪を犯すはずがないと考えたからだ。


 ここに来て間がないなら分かるが、そうではない。

 今頃「つい、うっかり」なんてあるはずもなく、

 事を構えようとしているとしか思えない。


 だとしたら、この上ない問題であるが、

 今回の場合同行していた人物がいて、それも新人とはいえスタッフだった。

 そのため、一ヶ月のペナルティだけですんだ。


 しかし、それがリンの場合はただで済むはずもなく、一ヶ月もの間隔離されるだけではない。

 それなりに制裁が科された。


 今回は尋問ではなく、いうなれば罪と罰。


 そんな一ヶ月。

 帰って来たリンが普段通りであるはずがなく、体には相当のダメージを受けている。

 だからこそ、ワーティはリンに今日は休むように言った。


 帰ってきたばかりのリンには、何も出来ないだろうとの判断からだ。


 今、ソファーで横になっているリンには、疲労感がにじみ出ていた。


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