↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき英雄の残火 ~死者の技を継ぐたび、少年は強くなる~  作者: 冬月樹
第一部 青い火の古戦場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/82

第七十九話 カイの灯名帳(一部終了時点)

 ――以下は、第一部の終わりの時点でカイが記している《灯名帳》から、火と技に関わるページを抜き書きしたものである。書き手はカイ本人。表記も並びも、帳面のままとする。


          ◇


一、火のこと


――火

人が死ぬ時、最後まで手放せなかったものが、その場所か、その人の持ち物へ残ったもの。青い火に見える。


――見え方

青いのに周りを照らさない。影もできない。熱くない。


――見える者

今のところ僕だけ。セラは銀の鐘の返音で位置と数を調べる。


――触れた時

その人の最後の一場面が流れ込む。生涯も名前も分からない。


――宿った時

その人が生きている時にしていたことが、技として使える。


――できないこと

話す。呼ぶ。命じる。返事は無い。


          ◇


二、灯皿と《一灯》


――灯皿

胸の奥にある暗い塔の真ん中に一つだけある。宿した火は壁に並ぶ。


――制限

一度に使えるのは、灯皿に乗った一つだけ。


――選び直し

一晩眠ると、次に使う火を選び直せる。


――乗っていない火

呼んでも返事をしない。


――名前の由来

父の使う灯守の言い方から取った。能力の正式な名ではない。


          ◇


三、《継火(つぎび)》


――中身

今灯している火の役目が終わった瞬間だけ、次の火へ渡せる。


――役目の終わり

盾や道の役目が終わる時は、僕には決められない。守る相手が残っていれば盾は消えず、道は三歩を踏み終えるまで続く。


――間合い

役目が終わる前に次を呼んでも、終わってから間を置いても、渡らない。


――続けて呼んだ時

働きが弱くなる。盾は面が薄くなり、青火は届く深さが浅くなり、道は左足が痛んで重くなる。


――戻し方

別の火へ一度渡して、その火の役目が終わってから戻せば、元の強さに戻る。


――名前の由来

入れ替えているのではなく、渡している。動かしているのは僕ではない。


          ◇


四、火の育ち方


――一

火が胸へ宿る。


――二

宿った時点で技が使える。その人のことを調べていなくてもよい。


――三

火解き。その人が最後まで気にしていたことへ、答えを返す。調べて確かめた時に起きる。


――四

覚醒。火解きが成ると、同じ火のままできることが増える。別の火にはならない。


――条件

火解きが覚醒の条件。三つとも、答えを返したその場で形が変わった。ほかに条件があるかは、まだ分からない。


――代償

覚醒しても、技を使った時の負担や制限がすべて消えるわけではない。


          ◇


五、宿している火(宿した順)


          ※


斥候の火 《三歩の道》→《連れ道(つれみち)》


――由来

谷を避けて山を越える脇道を見つけ、その地図を運ぶ途中で倒れた人。古戦場で宿した。


――できること

足元に、崩れない三歩が青い足跡で見える。足場と危ない物だけを示す。三つ目を踏むと消える。


――見える者

覚醒する前は僕だけ。仲間には見えなかった。


――代償

続けて呼ぶと左足に痛みが出る。泥の冷たさと、泥を掴んだ感触も来る。呼び続ければ、あとで足の力が抜ける。


――火解き

道は届いていた。脇道を通って山を越えた人がいる。母親は自分の墓の隣に、息子のための石を頼んでいた。


――覚醒後

そばにいる人の足元にも、その人に見える三歩が出る。セラが出口へ向かった時は、出口の方へ出た。ほかの場合はまだ試していない。


――覚醒後(二)

足跡を渡した相手が、見ていなくてもどこにいて、どちらへ行こうとしているかが分かる。


――分からないこと

怪我。見ている物。倒れたかどうかは、動きが止まったことでしか分からない。


――まだ分からないこと

何人まで渡せるか。試したのはセラ一人。


          ※


門番の火 《退かぬ盾》→《十返し(とおがえし)》


――由来

避難する人の最後尾で、十を数える間だけ門を支えた人。村の鐘楼の門石から宿した。


――できること

正面に青い盾が出る。十を数えるあいだ、格上の一撃も崩落も止まる。


――代償

出しているあいだ、足が地面へ縫い留められて動けない。守れるのは正面だけ。


――十の扱い

上限であって義務ではない。守る相手について役目が終われば、線が残っていても消える。守る相手が残っていれば、消したくても消せずに十で砕ける。


――火解き

門番が守った先に、生きていた人がいた。町の記録で確かめた。


――覚醒後

十のあいだに正面から受けた衝撃を盾へ蓄え、最後に一度だけ前へ返せる。


――返した時

肩へ来ない。


――返さなかった時

今までどおり肩へ重さが残る。多く受けているほど重い。


――返せない場面

前に仲間や逃げる人がいる時。崩れやすい足場や、壊してはいけない物がある時。


          ※


槍兵の火 《青火纏い(あおびまとい)》→《青火結び(あおびむすび)》


――由来

武器が折れるたびに、倒れた兵の物を拾って戦い続けた人。町の外壁跡の折れた穂先から宿した。


――できること

刃に青い火がまとわり、灰の中で止まっていた刃が核まで届く。威力が足されるのではなく、届くようになる。


――持続

四十を数えるあいだ。


――代償

同じ日に続けて呼ぶと火が細り、届く深さが浅くなる。一日に呼べる数にも限りがある。


――火解き

あの人は一人で戦っていたのではなかった。報せを運ぶ人が、倒れた兵の武器を拾って運んでいた。


――青の濃さ

自分の刃一本に集める時は、最初から濃い。仲間へ渡した直後の青は細い。谷では五つの青を重ね、核へ届かせた。


――覚醒後

自分の刃から、触れた仲間の刃へ青を渡せる。渡す本数に決まりは無い。谷では自分の手を離しても仲間の刃に青が残った。


――二つの使い方

自分の刃一本に青を集める時が《青火纏い》。仲間の刃へも渡す時が《青火結び》。


――核へ届くと

仲間の刃が核へ届くたび、四十が延びる。細り始めた青も太さを取り戻し、割り続けた仲間の刃は、渡した時より濃くなる。


――自分の青

核を割った後は、すぐに盾へ渡した。僕の青がどう変わるかは、まだ確かめていない。


――まだ分からないこと

仲間が刃を手放した時や、僕から遠くへ離れた時、青がどうなるか。


          ◇


六、《零れ火(こぼれび)》


――中身

触れてから送った火の中に、技ではなく体へ残るもの。


――一つ目

力。石臼を一人で担いでいたホルクさんの火から。担いで支える時、大人が二人で運ぶ荷を一人で背負える。


――二つ目

持久。一日に四度同じ道を往復したレフさんの火から。坂を走り続けても、いつもの息苦しさが来ない。


――三つ目

身の軽さ。門付きの使者の火から。走って届ける時、踏み込みが速くなる。受けた直後、セラの前へ盾を届けに跳んだ時は、間に合わないと思った所まで体が運ばれた。


――条件

送る前に僕が触れていること。その火がそのまま送られること。どちらか欠けると来ない。


――出方

その人がしていたのと同じことをする時に、いちばん強く出る。違う使い方では体が合わない。ずっと出ているのではなく、僕が呼ぶものでもない。


――馴染み

稽古を重ねて、自分の体にも残るか確かめる。袋の数と坂の往復を、ここへ書き足していく。


――気をつけること

一度触れた火は、送られるまで僕とつながっている。送れば、その人のしていたことが何でも入ってくる。誰の火か分からないものには触らない。


――性質

灯皿を使わない。代償が無い。消えない。外から見て分かる人はいないと思う。


          ◇


七、送火のこと


――送れる者

セラ。銀の鐘を鳴らして、残った火を静める。僕は場所を指すだけで、送る力は無い。


――鐘の別の使い方

残火の位置と数を調べる。僕の胸の火にも返事がある。


――《響きの輪》

短槍を土へ刺し、石突きに巻いた銀へ魔力を通す。音は鳴らず、震えだけが土を走って、広い範囲の灰を一度に浮かせる。


――銀のこと

銀は魔力を通す。町の壁へ引く銀墨と同じ理屈だとセラは言う。


――銀の限界

灰をはがす響きまで。送ることは鐘でなければできない。


――輪の後

鐘より魔力を食う。手が痺れて、しばらく続けられない。


          ◇


八、決まりのこと


――冠灯院の決まり

持ち主の分かる火は、送らずに置く。


――理由

決まりの紙でも、理由の欄は空いているらしい。


――破った日

谷。負ければ、あの火は墓喰らいの手へ渡るところだった。


――守った日

村の墓地。許しをもらってから送ると決め、願いはセラが自分の名前で出した。


          ◇


九、まだ分からないこと


――一

なぜ僕にだけ火が見えるのか。なぜ宿るのか。


――二

斥候の名前。母親は最後まで言えなかった。


――三

母親が息子の名前を言えなかった理由。軍の決まりが関わったのか。


――四

院が「持ち主の分かる火は残せ」と決めた理由。


――五

石列の内側に立つ三本の杭を打った者。


――六

セラの師が、今どこにいるのか。


          ◇


――抜き書きはここまで。先のページには、歩いた道や出会った人の名前、日付の控えが続いている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。