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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
最終部 死神令嬢、幸せになる

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95・溺愛の雑談~モクレン様、愛しております~

「モクレン様。雑談するだけですから。ちょっと雑談するだけですから。何もしませんから」


「ちょ、ツミキちゃん!? そんな女の子をホテルに連れ込もうとする男みたいなこと言ってどうしたの!?」




ただ、モクレン様と雑談するだけだった。


モクレン様と私の間には解釈の齟齬――勘違いが生じてしまったので、それを解消するべく、モクレン様の寝室にてお待ちしたのだが。



モクレン様のベッドに座り、ここで彼は寝起きしているのだと意識した瞬間、呼吸が荒くなり、手の震えが抑えられなくなった。


そんな状態で、胸元が緩い寝間着姿のモクレン様が入浴からお戻りになられたのだから、頭の中が真っ白になったのだ。



彼の腕を引いてベッドに押し倒すと、想像ではない本物のモクレン様が目の前にいるのだと言う事実に『飛び』そうになる。




「ツミキちゃん!? 俺は幸せだけどマジでどしたの⋯⋯んぅっ」




モクレン様との口付けは、頭が痺れるほど甘い。

ヨーグルトアイスよりプリンよりミルクシフォンケーキよりも何よりも、甘くて飛びそうだ。


もう一度味わいたい。この甘美がもっと欲しい。


その衝動のまま、モクレン様へ口付け、堪能してからゆっくりと離れた。

舌舐めずりをすると、唇に残るモクレン様の感触を味わえたようで背筋が震える。




「美味しゅうございます、モクレン様。貴方はどんな甘味よりも甘い。⋯⋯ああ、もっと、もっと味わいたい。足りないのです」


「え、嘘、だって、怖がってたんじゃ」


「はい。貴方を味わいたくて、怖いくらいに震えておりました」


「⋯⋯それじゃ、ツミキちゃんの次の食レポ、俺なの? ⋯⋯いやいやいや、俺は後三回デートした後に最高級ホテルを取ってベッドに薔薇の花びら散らしてキャンドルでも焚いて最高のシチュエーションの中でスパダリとしてツミキちゃんと、ひゃぁっ」




モクレン様の美しい唇の端にあるほくろに口付け舌を滑らせると、やはり脳が痺れるような甘美さを覚えた。




「モクレン様⋯⋯私は、唇の端にあるほくろがこんなにも魅力的だなんて知りませんでした。触れて舐めて味わいたい。もう我慢が出来ません⋯⋯っ!」


「幸せ過ぎてこれ俺が死ぬ前に見る夢みたい――ひゃぅっ、ぁははっ、そんなにしゃぶりつかれたらくすぐったいって」




私が心のままにモクレン様の唇のほくろに口付けると、彼は蠱惑的ながらもどこか無邪気に甘く笑う。

我を忘れて貪り食いたいと思うほど、モクレン様は甘美であった。




「⋯⋯貴方のお蔭で、私はたくさんのことを知れたのです。⋯⋯そして今、貴方こそが最高に甘美であると知りました。貴方を唇や舌で味わうたび、背筋がトロトロになるほど甘いのです。もっと、もっと貴方を味わいたい⋯⋯っ!」


「ツミキちゃん⋯⋯な、なんか目がバキバキに据わってて、そんな君初めて見た⋯⋯、ぁ、っん」




滑らかに動く喉や首筋へ、味わうように唇で触れる。


甘美だ。甘い。最強の酒ですら酔わなかった私が、酩酊しそうになるほど濃厚な甘さがある。


それに、モクレン様は入浴後ともあって、いつも以上に甘く優しい香りがする。いつも良い香りがするが、それ以上だ。


彼を喰らい尽くしたい。心が暴走する。



私は呼吸を荒くしながら

『そうか! モクレン様こそが飛ぶほどに美味だったのだ。だから、彼の作る料理は飛ぶほどに美味しかったのか!』

と気付く。



納得しながら鎖骨に口付けて、寝間着の上から見た目よりも分厚い身体を撫で回すと、モクレン様は鼻にかかった上擦った声を上げつつ、身体をびくりと震わせる。


その甘い声がもっと聞きたい。もっとモクレン様を味わいたい。




「モクレン様。私は貴方をひとり占めにしたい。これからは私だけのモクレン様でいてください。この甘美さは、私だけが知っていれば良い」


「ちょ、前から思ってたけど君の方がスパダリの才能あるよね、っ⋯⋯ぁ、」




寝間着の上から撫で回すだけでもこんなに甘いのに、素肌に触れたらどれだけ甘いのだろう。


心が望むまま、モクレン様の寝間着に手を差し込み肌を撫でると、酔ってしまいそうになるほどの甘さと心地良さが背筋に走る。


しかも、顔を真っ赤にして髪を乱したモクレン様の甘い声が耳をくすぐる度、頭がぼうっとなって何も考えられなくなった。



だが、こんなモクレン様の甘美さを知るのは、私だけじゃないのだろう。


彼はとてつもない美青年だ。学生時代はピアスを開けるような生活を送っていたのだ。


しかも、街に出れば女性達は全員モクレン様に熱い視線を送るのだ。


きっと、恋人はたくさんいただろう。



そう思うと胸が苦しい。


さっきまでの甘美さが消えてしまい、痛い苦みが胸に広がる。


これは嫌だ。さっきの甘さが良い。


モクレン様の甘美さで苦みを打ち消すように、彼の肌を撫で回しながら頬に口付けた。




「モクレン様。⋯⋯今までどんな方が貴方の甘美さを味わったのですか? 今まで、どんな方と口付けたのですか? ⋯⋯貴方の過去を思うと、私は胸が苦くて苦しいのです。⋯⋯私は、どうしてしまったのでしょう?」


「ツミキちゃん⋯⋯」




モクレン様が、私を気遣うように背中を撫でてくれる。

この手に触れられるのが心地良い。




「ツミキちゃん。俺は高嶺の花の美青年よ? 安い男じゃないんだから、そりゃ、ね?」


「!? あ⋯⋯ぁあ、はい。そうでしたね」




胸がすっと寒くなりモクレン様から離れようとした時。




「逃さない」


「ぇ⋯⋯!?」




私の背中を撫でるモクレン様の腕が、ぎゅっと私を抱き寄せる。


すると、モクレン様は身体を捩り、一瞬で私を押し倒す姿勢を取っていた。



え、あれ?

私は、モクレン様に乗られ、押し倒された⋯⋯のか? 

この、私が? ユーフォルビア一族のこの私が、一瞬で体勢を変えられたのか???




「俺は高嶺の花だもん。安い男じゃない。⋯⋯だから、そんな簡単に恋に落ちたり、色っぽい意味で寝たりしないんだよ」


「??? でも、今は私が好き放題肌に触れて」


「ツミキちゃんだけってこと。⋯⋯ごめんね、君の隙をつくために、意地悪な言い方しちゃった」




王子様みたいな見た目なのに小悪魔のように笑うモクレン様は、私の手に指を絡めてぎゅっと握ってくる。


そして、お返しだと言わんばかりに私の頬へ口付けた。


⋯⋯モクレン様に口付けられると、今度は胸がきゅっとする甘酸っぱさが広がった。




「俺、一応公爵家の次男よ? 軽いことして後々面倒事になったら大変だから、恋愛はするけど一線超えるのは結婚してからって決めてたんよ。⋯⋯まあ、一線超えるどころか、俺の心は高嶺の花過ぎて誰にも奪えなかったわけだけど」


「モクレン様⋯⋯それなら私が、高嶺の花の貴方を手折った初めての人⋯⋯なのですか?」


「そ〜だよ。こんなの初めて♡ ⋯⋯って、これは俺が言われてグッとくる台詞第三位の言葉だから、良かったら覚えといて」




モクレン様はそう言って笑うと、私の頭を撫でながら頬や耳に軽く触れる優しい口付けを落とす。


彼に口付けられると胸がきゅっと甘酸っぱくなる。

なんでこの人と触れ合うと、こんなにもたくさんの味を感じられるのか。




「ツミキちゃん。俺ね、実はすごい湿度高いし、頑固で粘着質で執着が強くて嫉妬深いんよ。⋯⋯だから、覚悟してて。途中で嫌になって手離したりしないでよ? 高嶺の花を手折ったからには、大事にしてね?」


「⋯⋯嫉妬深いとは初めて聞きました。もしかして、やたらとシドウ様を気にされていたのはそれ⋯⋯んむっ」




唇を唇で塞がれ、声が漏れる。


触れるだけの口付けしか知らなかったが、口付けにはもっと深いものがあるのだと知った。

そして、モクレン様の舌の甘美さも知った。




「ツミキちゃん。俺に溺愛されてんのに、他の男の人の名前言っちゃだめでしょ〜? 悲しくて泣いちゃう」


「⋯⋯申し訳ございません。『こんなの初めて』知りましたから」


「おお〜、ツミキちゃん。良い使い方してくるじゃん。⋯⋯グッと来てメロメロになっちゃう♡」




モクレン様に額へ口付けられながら、あやすように肩や二の腕を撫でられる。

しかも、時々脇腹を擽ってくるから、思わず笑ってしまう。




「ツミキちゃんの笑った顔、ほんと可愛い。⋯⋯誰にも見せたくない。ひとり占めしたいくらい」


「じゃあ、ひとり占めしてください。私も貴方をひとり占めしますから⋯⋯ん、ぅ」




ひとり占めにしたいと言わんばかりの口付けで、胸が溢れかえるほどの甘酸っぱさで満ちる。


モクレン様を味わい尽くす甘美さも良いが、彼によってもたらされる甘酸っぱさも良い。


心臓が壊れるほどうるさく鼓動するが、私は頑丈なユーフォルビア一族だ。心臓も頑強である。問題無い。




「モクレン様。貴方はすごいお人ですね。どれだけ酒を飲もうと毛ほどに酔わない私を、こんなにも蕩けさせ、メロメロにして酔わせてしまうのですから」


「そ〜でしょ? もっと俺に酔って。正気なんか忘れちゃって。今だけは、モクレン様のことしか考えらない〜って、させてあげる」


「ふふ、楽しみです」




私が笑ってそう答えると、モクレン様は



「余裕でいられるのも今のうちかもよ?」



と耳元で囁いた。


耳にかかる吐息がうるさく、顔が熱くなる。

心臓がやかましく、頭が熱暴走したみたいにぼうっとなった。


だが、私はユーフォルビア一族。体は頑丈である。問題無い。



私の頬を撫でるモクレン様の手に頬擦りしてから、彼の手を取った。




「私は、貴方の手に触れられて、初めて人の体温を知りました。⋯⋯初対面の時を覚えていますか? 去ろうとした私を引き留めようと、貴方は私の手を掴んでくださった」


「覚えてるよ。あの時からずっと君は綺麗だったから」


「⋯⋯そんな事を言うのは、モクレン様だけです」




モクレン様と初めてあった時の私は、ボロボロで汚れた黒いローブを着ており、伸び放題の黒髪は血で固まってうねっていた。


お世辞にも綺麗とは言い難い。


だが、モクレン様は迷い無く綺麗だと言った。

モクレン様がそう言うなら、そうなのだろう。




「私に触れた人は、母以外でモクレン様が初めてでした。毒で穢れて目が合うだけで病になると言われていた私が、初めて触れた温かさが貴方なんです。⋯⋯私は、この手が好きです。愛してます。ずっと触れていたくて、離れたくない」




私はモクレン様の手を握り、頬擦りしてから指先や手のひらや手首へと口付けた。




「ねえ、ツミキちゃん。好きなのは俺の手? それとも⋯⋯」


「貴方ですよ、モクレン様。私はモクレン様が好きです。恋しております。愛しております」


「好きと、恋と愛だけ? 他には? もっとちょうだい。全然足りない。もっと欲しくておかしくなりそう」


「他ですか? ⋯⋯他には⋯⋯」




モクレン様は優しい笑顔で私を待ってくださる。


そうだ。いつもいつも、モクレン様は私の心が追いつくのを待ってくださるのだ。


優しくて、甘くて、甘酸っぱくて、最高のスパダリだ。


モクレン様を見ていると、胸がメロメロになって、顔が熱く脈の鼓動がうるさい。


だが、私はユーフォルビア一族。脈がうるさいくらいなんだ。




「そうですね⋯⋯。他には⋯⋯。言葉を探しているのですが、胸の鼓動がやかましく、頭がメロメロになって考えられないのです。でも、この胸の奥には、貴方への思いが溢れ出すくらいにあるのです。⋯⋯あ、そうだ」


「ん?」


「一緒に考えてくださいませ」


「え⋯⋯え、ゑ!?」




そうだ。一緒に考えてもらう。


モクレン様なら私の胸の鼓動の速さを感じることで、適した言葉を見つけられるはず。


そう思って、やかましく鼓動する胸にモクレン様の手を押し付けるように当てた。


すると、ますます胸の奥がキュッと甘く痛み、鼓動が早くうるさくなった。

私がユーフォルビア一族でなかったから、もう壊れているだろう。




「モクレン様。わかりますか? 先程から、胸の鼓動がうるさくて。⋯⋯脈が早いのでしょうか。顔に、頭に熱が籠もってメロメロになっているのです」


「え、え、あのえっと、ツミキちゃん。確かに君の胸部に関心があるとは言いましたが、あの、ありがとう、じゃなくて君的に大丈夫ですか。俺そろそろガチで揉み⋯⋯じゃねえや溺愛したいんですけど」




モクレン様の手を私の胸部に押し当てると、彼は目をぐるぐるとさせ真っ赤な顔でしどろもどろになる。


ああ、この顔を真赤に目をぐるぐるさせるモクレン様が大変魅力的だ。もっと見ていたい。


頭と顔が熱い。体中の血が暴れるように沸騰している。




「はぁ⋯⋯ぁ、頭が、メロメロに、クラクラします。ああ、そうだ。この鼓動を、胸に湧き上がる貴方への思いを知ってもらうためにも、お心のまま触ってくださいませ。⋯⋯モクレン様に触れて頂きたいのです」


「ツミキちゃん、ごめん俺もう無理。女性向けのスパダリやめて本性である男性向けのドスケベ男になりますけどいいんすか」


「ええ。先程は私が好き放題モクレンを味わったのです。今度はモクレン様が、私のことをお召し上がりくださいませ」


「!!!?? それじゃ、マジで行くからね。⋯⋯スパダリの理性を捨てた、愛と性欲に支配された童貞のヤバさ、しっかり味わって⋯⋯⋯⋯って!? ツミキちゃん!!!?? 大丈夫!!???」




モクレン様が突然驚愕した表情になった。


先程まで何か覚悟をキメたような顔をされていたのに、今は驚愕と心配の顔で私を見ている。



何? 何だ? どうした? 




「ツミキちゃん!!! 鼻血!! 鼻血出てる!!!!」


「へ?」




モクレン様はすぐに私から退くと、ちり紙を手に私の鼻の下を拭いてくれた。




「ゆっくり起き上がって!!! 鼻血が喉に入ったら駄目だからね!!」




私の上体をゆっくりと起こしたモクレン様は、



「大丈夫? 目眩とかしたら言うんだよ」



と心配そうにしている。




「あの、モクレン様。私はユーフォルビア一族です。鼻血ぐらいで壊れません。ですからはやく、早く続きを⋯⋯!」


「鼻血垂らしてる人にするのは溺愛でも欲情でもなく看護です〜! ほら、下向いて。喉に入った血は吐き出して。はい、落ち着いて〜!」


「鼻血ぐらい何なのですか!!? 続行すべきです! 私はモクレン様に好き放題お召し上がりになって欲しいのに!! 私は今! 怒り状態だ!!」


「残念でした〜俺は高嶺の花なんですぅ〜! 鼻血出してる相手を気遣わず襲いかかるなんて真似しませ〜ん! ほら落ち着いて。小鼻のとこ摘むからね」


「ぅ゙ぅ゙う゛う゛⋯⋯おぞれいりまず」




その後、私の鼻血が止まるまで、数時間かかった。

気が付くと、朝日が登っていた。



その間ずっと、モクレン様は私の肩を抱きながら



「まあ、今はこんな感じで。これからゆっくり俺の魅力に慣れてよ」



と、いつものように笑っている。


私が何をしようと、モクレン様はいつも隣で笑ってくれる。


それがとても嬉しくて、楽しくて。

でも、続きはして欲しかったと怒りと哀しみもあって。


だけど、鼻血を垂らした私を気遣い笑顔で看護してくれるモクレン様だからこそ、私は好きになって、恋をしたのだ。


いやあ、恐れ入ります。







◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!

全年齢で出来るギリギリの溺愛でしたね! そして、いよいよ明日で完結でございます!


それじゃ

「明日で完結!? やだよーーー!!!」

「ツミキ、お前ほんとにモクレン大好きな!」

「モクレン、お前やるじゃねえか!」

「鼻血垂らしたツミキへのモクレンの対応、好きだわ」

「ツミキ……どんまい!」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションをお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!


また、ツミキが笑うとこんな感じです!


挿絵(By みてみん)

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