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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
最終部 死神令嬢、幸せになる

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最終話・ツミキ、幸せになる

「よいか子供ら。これが、長命のハイエルフであるわらわが出会った救国の英雄達のお話じゃ。⋯⋯あれから、随分と月日が経ったのじゃよ」




平和な真っ昼間のことである。


わらわは近所の子供達を集め、呆れ返るほど平和なマグノリア地方の公園にて、ツミキ達の話を聞かせた。



あれから随分、時間が経ったもんじゃ。

気が付くとあっという間であったが、わらわとプルトハデス人とでは流れる時間が違うからのう。




「心を持たずに生まれてきたツミキは、様々な人達と交流して、たくさんの経験をして、自分だけの心を獲得したのじゃ。⋯⋯心とは、揺蕩う水のようでの。色んな出来事や経験でどのようにも変化するのじゃよ」




わらわの言葉は、子供らにはまだ早いのか、口をぽかんとして「?」となっておる。


まるで、ツミキのようじゃと笑ってしまう。




「例え、心が傷付き壊れてしまっても、生きることを諦めなければ心はきっと蘇るはずじゃ。⋯⋯お主らも、しっかり心を育てていくのじゃぞ」


「⋯⋯サラサせんぱい、お話が難し過ぎてわからないよ」


「すまんのう。⋯⋯わらわにも、アイツのように話せたら良かったのじゃが」




そう言って、眩しい空を見上げた。


あの連中は、今頃何をしておるかの――




「あ〜サラサお前こんなとこにいたのかよ!!!なに悠久の時を生きた語り部ツラして俺達が遠い昔に死んだみたいな語り口調してんだよ! あれから随分と月日が経ったってお前、『五ヶ月しか経ってねえ』だろ!」


「げっ、モクレン!! やべっ!!」


「ほらほら! 歯医者行くぞ! サラサお前最近歯磨きせずに寝てるだろ! だから虫歯になるんだよ!」


「嫌じゃ嫌じゃ!!! わらわの歯はまだ乳歯じゃ!! 本番前のリハーサルみたいなもんじゃろう!!! 歯医者なんぞ行きたくな゛ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙い゛い゛ぁぁぁああああ!!!」


「お前のでかい声にはもう慣れてんだよ!!! ほら! 歯医者頑張ったらレンゲくんがお前の用のスマホ作ってくれるから!! 歯医者さんもシールくれるから!」


「嫌じゃぁぁあああ!!! やだぁぁあああ!! うわぁぁぁあああ!!」




わらわはモクレンに引きずられながら、公園を去った。


手足をバタつかせるわらわを、モクレンは小脇に抱えて歯医者に連れてゆく。


マグノリア歯科医院と言う白い建物に連れて行かれ、椅子に拘束され口を開かされると、小さきドリルで歯をぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!




◇◇◇




「ツミキちゃ〜ん、サラサ回収して歯医者行ってきたよ〜」


「! お疲れ様です! モクレン様! サラサ先輩!」




屋敷の庭園にて、私はお戻りになったモクレン様と小脇に抱えられてグズっているサラサ先輩に一礼した。


すると、『たくさんの荷物が入った木箱を抱えて』屋敷から出て来たレンゲ様が



「サラサ氏頑張ったじゃーん。スマホと一緒にケースも作ってあげよう」



とサラサ先輩へ声を掛ける。




「ボクの荷物はこれで最後だけど、みんなはどう?」


「私の荷物はすでに馬車に積んであります。⋯⋯元々、身一つでこちらに来たので、『引っ越し』の準備も楽で仕方ありません」




私達は現在、屋敷から新居へ引っ越しの準備中であった。


木箱に荷物を詰めて馬車に乗せる作業をしている間、サラサ先輩がどさくさに紛れて逃走したため、モクレン様が捕獲し歯医者に連れて行ったのである。



モクレン様の小脇に抱えられたサラサ先輩は、ぐったりとして



「ぅう⋯⋯ガンショウや他のハイエルフ達にチンコロしてやるからな⋯⋯」



とべそをかく。


ハイエルフらしい威厳に満ち溢れているかと思えば、クソガキ――間違えた子供のようにも思えるから、サラサ先輩は不思議である。



そんなサラサ先輩へ、モクレン様が



「残念でしたぁ〜! すでにガンショウさん達には連絡済みですぅ〜! 彼から『俺達はついサラサを甘やかしちまうから、厳しくやってくれ』って言われてますぅ〜!」



と用意周到さを見せつけ、彼女を地面にそっと降ろす。


サラサ先輩はグズりながらも



「お主め⋯⋯相変わらず根回しに長けておるの⋯⋯」



とモクレン様の健闘を称えた。



すると、お二人のやり取りを見たレンゲ様が



「モクレン氏、最近ますます『ママ』になってきたね。モクレン氏はギャルだからギャルママだあはは」



と呑気に笑う。




「レンゲくん、そう言うお前はちゃんと歯医者行ってるか? お前のも予約したから、三日後な」


「ボクその日は予定がある気がすると思われ」


「逃がすかコラァ!!」




ギャルママなモクレン様は逃げようとしたレンゲ様の首根っこを掴んで捕獲した。



私達は、ずっとこんな感じだ。

何も変わらず、呆れ返るほど平和である。


勿論、私の歯も呆れ返るほど平和――




「あ、そうだ。ツミキちゃんの定期検診も予約したから三日後」




私は、ユーフォルビア一族の身体能力を駆使して逃げ出した。




◇◇◇




「もぉ〜、スパダリでもギャルママでもどっちでも良いけどさ、歯医者には定期的に通わせるからね! その分ご褒美用意するから、頑張ること!」




馬車で新居への移動中。


歯医者に恐怖する私とレンゲ様とサラサ先輩はモクレン様にそう言われ、三人揃って「はい⋯⋯」と答えた。




「ところでモクレンママ、間違えたモクレン様。ご褒美とは何ですか?」


「それはねぇ〜! 好きなおやつ何でも作ってあげるし、⋯⋯ツミキちゃんのお願いなら何でも聞いてあげちゃう♡」




向かいに座るモクレン様は小悪魔のように微笑んだ。頭と心がメロメロになる。




「わかりましたモクレン様!! 私はこれから毎日十回歯医者に通います!!!」


「毎日十回は通わなくても大丈夫だよ。歯医者さんも困っちゃうからね〜」


「ぅう⋯⋯私は今、猛烈に歯医者に通いたい!! そして、モクレン様のご褒美を頂きたいのです!!! 何でも聞いてくれると言いましたよね? 何でもと言いましたよね? 何でもと!!!!」


「ちょ、そんな、あんまグイグイ来られると⋯⋯っ! 二人っきりの時は良いけどさ、今はレンゲくんとサラサが半笑いで見てるから⋯⋯」




モクレン様が自分の言った事で自爆し恥じらうのはよくある事だ。


そんな彼を笑いながら見ているレンゲ様とサラサ先輩も、よくある日常である。



だが、引っ越し先はよくある日常とはかけ離れていた。



何故なら、私達の新居は――。




◇◇◇




「おおお!! これがマグノリア城ですか!!! 白い城壁と尖塔の紫の屋根が美しいです!!」


「でしょ〜? いや〜まさか俺が城持ちになるとは思ってなかったわ、ほんと」




私達の新居は、マグノリア地方と王都の国境付近にそびえ立つ、巨大なマグノリア城であった。


白い城壁は美しく、そびえ立つたくさんの尖塔には紫の屋根が輝いている。白い石壁を飾る金細工との相性はばっちりだ。


まるで、絵本に出て来る王子様の城のよう。




「素晴らしいですね⋯⋯王都との国境付近にこんな巨大な城を建ててしまったというのは、モクレン様の権力を表しているようです」


「そうね〜。まあ、解体された聖騎士団の代わりにマグノリア騎士団が王都を護るわけだから、俺やレンゲくんも近くに住まなきゃだし、騎士団の住む場所も作らなきゃだから。城が欲しいなあって思ったんよ」




モクレン様はヘラヘラ笑いながら言うが、国境付近に城を建てたと言う事実は、歴史が動くようなことではなかろうか。


それこそ、言葉にせずとも『いずれプルトハデス国の頂点に立つのはモクレン様だ』と言わんばかりである。



⋯⋯きっと、モクレン様もそれを自覚していることだろう。




「マグノリア城はとても素晴らしいです。⋯⋯でも、あの屋敷も私は大好きです。たくさんの思い出があるから」


「そだね。まあ、あの屋敷は婆ちゃんと退院したカラタネさんが住んでるから、たまに泊まりで遊びに行こう?」


「はい! ぜひ行きましょう!」




ワクワクしていると、モクレン様が



「それじゃ、立ち話もアレだし、俺らの新居に行きますか〜!」



とマグノリア城を指さし、驚くべきことを言ったのだ!




「昼飯食いながら、みんなで作戦会議したいんよ。会議室は、屋敷の食堂を完全に再現したこだわりの大部屋だからね!」




◇◇◇




一週間後の朝。



私達の作戦会議通り、マグノリア城には今まで出会ったたくさんの人々が訪れた。


マグノリア地方の人々や騎士団の皆様は勿論、ホオノキ様と母カラタネとガンショウ様を始め、目をバキバキにさせたハイエルフ達や王都で知り合った方々もたくさんいる。



たくさんの人をマグノリア城にお呼びした一方、私はレンゲ様とサラサ先輩に手伝って貰いながら、とある衣装を着ていた。

それは。




「どう!? ツミキ氏!! ボクの最高傑作である『ウエディングドレス』は!!!」


「はい!! とてもアヴァンギャルドです!!」




私は、レンゲ様の最高傑作である真っ白なウェディングドレスを着ていた。



このウェディングドレスはレンゲ様曰く、『ツミキ氏のドレスの要素とモクレン氏の騎士服の要素を足してるから、可憐さの中にも勇ましさやかっこよさがあって、その矛盾を昇華させたアヴァンギャルドさがあるんだよ!』ということらしい。



アヴァンギャルドが何なのか今だに良くわからないが、私の一張羅である黒いドレスとモクレン様の騎士服のデザインが組み合わさったドレスはとても美しいと思う。



椅子に座り鏡を見て『この肩のリボンは部分はモクレン様の騎士服のデザインか!』と彼との共通点を見つけては、嬉しくなる。


そんな私の頭に、サラサ先輩はヴェールを被せてくれた。




「ツミキ、最高にきれ⋯⋯いや、この言葉はモクレンが言うべきじゃの。⋯⋯ツミキ。お主と会えたことが、わらわの宝じゃ。⋯⋯⋯⋯ハイエルフの祝福を授けよう」




淡桃色の可愛らしいドレスを着たサラサ先輩は、椅子に座る私をぎゅっと抱き締め



「ツミキ、大好きじゃぞ」



と頭を撫でてくれた。


歯医者なんか嫌じゃと暴れていたサラサ先輩は、たまにハイエルフらしい威厳を見せてくる。


その落差がたまらなく、こう、抱き締めたくなったので、私も心のままにギュッッッッと抱き返した。




「ありがとうございます。サラサ先輩。私は前から貴女を抱き締めたいという衝動に駆られていたのです。この感情は、可愛いと言うものなのですね。⋯⋯私は、ずっと貴女を可愛いと思っていたのです」


「ヅミギ⋯⋯ありがど、ぐるじ、のじゃ」


「サラサ先輩の長い耳がぴこぴこ動く姿、丸い頬が何かを頬張った時にむにむにと動く姿、その表情、声。⋯⋯何もかも本当に可愛らしい。勿論、文鳥のもふもふな姿もです」


「わがっだ、ヅミギ、ギブじゃギブ、ぐえ」




私が心のままにサラサ先輩を抱き締めていると、レンゲ様が


「ツミキ氏、サラサ氏が召されるから!」


と慌てながら教えてくれた。




「サラサ先輩!! すみません!!」


「げほっ、んげっ⋯⋯⋯⋯良い良い。⋯⋯でも、もうちょい手加減するのじゃぞ」


「すみません⋯⋯」




サラサ先輩は笑って許してくれる。ハイエルフらしい心の広さだ。



すると、レンゲ様が



「ごめんツミキ氏、ちょっと髪型崩れちゃったから、調整させて」



くしを片手に言う。


ちなみに、彼は青い髪を解いて一つに括り、黒い紳士服を着ている。


だが、中に着ているシャツはド派手な真っ赤だ。

しかも、銀のアクセサリーやゴツい指輪をたくさん合わせた格好をしており、どこか危険な雰囲気がある、彼らしい装いをしていた。




「ツミキ氏。なんかこうしてると、最初に君の髪を切った時を思い出すね。⋯⋯あの時ボクね『モクレン氏に伴侶が出来たことだし、これで安心して聖ペルセフォネ王国に行けるな』って思ったんだ」


「そう、だったのですね⋯⋯」




言葉から察すると、レンゲ様は近い内に隣国へ旅立つのだろうか?


そう思うと悲しくなり、表情も暗くなってしまう。


そんな私へ、彼は言うのだった。




「でも今は⋯⋯ファウストみたいなヤバい奴が二度と現れないよう、魔法科学の後輩達に道徳と倫理の教育をガッツリやらなきゃ。⋯⋯それに、ロスベールのことも魔道具業界にいる者として責任を取って護りたいんだ。⋯⋯だから、聖ペルセフォネ王国行きは、もうちょい先かな」


「! では、レンゲ様とまだ一緒にホストの名刺でカードバトルが出来るのですね!! あれからホストの名刺のカードバトルは商品化されましたから、ちまちま買い集めてデッキ構築に勤しんでいるのです!!!」


「ふふふ、ボクも最強のデッキ構築してるからね。今度は負けないと思われー!」




レンゲ様とまだまだたくさん遊べる!


それがすごく嬉しくて、私の顔も一気に晴れた。


髪型の調整が終わり、彼のこともサラサ先輩と同様に抱きしめようかと思ったが、ウェディングドレス姿で他の男性と抱き合うなどモクレン様に大変失礼なので、握手にとどめた。




「レンゲ様。本当にありがとうございます。貴方の作品を着られることが、とてもとても嬉しいのです!」


「ボクもありがとう。ツミキ氏と会えてデザイナーとして成長出来たよ。これからも、たくさん遊ぼうね!」


「はい!」




そう答えたあと、私の両隣に二人が並ぶ。




「そろそろ時間だ。ツミキ氏、行こう。⋯⋯モクレン氏が待ってる」


「そうじゃそうじゃツミキ! さっさとお主のスパダリ兼ヒロインを迎えに行ってやるのじゃ!」


「今はギャルママも追加されたけどね」




レンゲ様とサラサ先輩のやり取りに、思わず噴き出した。


最近、笑うことが増えたせいか、頬が少し痛い。

だが、心地良い痛みである。




◇◇◇




モクレン様が提案した作戦会議の議題は、『結婚式』だった。


彼は『マグノリア城を建てたら、最初に結婚式がやりたかったんだよね〜』と話し、どんな式にするかと話し合ったのだ。



そうして作り上げた結婚式の会場に、ウェディングドレスを着た私はレンゲ様とサラサ先輩にエスコートされながら、到着した。



会場は、とても暖かな空気に包まれていた。



マグノリア城の二階にある、気が遠くなるほどの広いホールの窓は全てステンドグラスで出来ており、白い室内には色鮮やかな光が差し込んでとても綺麗だ。


室内には白と金で出来た豪華な長椅子が並べられており、出席してくれた人達がそこに座って楽しそうに談笑している。


だが、私達が登場した瞬間、割れんばかりの拍手で迎えてくれたではないか。



母カラタネは親指を立てて微笑んでおり、その隣に座るガンショウ様は既に泣いている。

他のハイエルフ達目に涙を浮かべており、やっばり優しい方々だと改めて思った。


その時、レンゲ様がぼそりと「反社の会合みたい」と青褪めた顔で言ったが、拍手で良く聞き取れなかった。



そんな会場のど真ん中には、赤く長い絨毯が敷かれている。



その先にいるのは、分厚い本を片手に持ち、豪華な黒い祭服を着たホオノキ様が立っていた。



そして、その手前。


ホオノキ様にそっくりな顔で、モクレン様が待っていた。


優しくも小悪魔っぽさがある微笑みを浮かべる、純白のタキシードを着たモクレン様は飛ぶほどにカッコいい美青年だ。頭と心がメロメロになる。



そんな彼の元へ駆け寄りたいが、結婚式で新婦が走るのはマズイので、レンゲ様とサラサ先輩と一緒にゆっくりと歩く。



早く早くモクレン様の元へ行きたいと焦る心を抱えながら一歩一歩進み、ついに彼の隣にたどり着いた。



すると、モクレン様がゆっくりと私のベール捲り、



「ツミキちゃん⋯⋯超きれ」


「モクレン様! 純白のタキシードが良くお似合いです!! さすが麗しのスパダリ美青年ですね!!」


「先越されちゃった⋯⋯」


「! 恐れ入ります」



私は嬉しさが暴走して何かをやらかしたのだろう。


だが、モクレン様はいつも通り笑って


「そういうとこが可愛いんだから♡」


と優しいことを言ってくれる。




そんなモクレン様と思いが通じ合ってから、もっと深く愛し合うために色々した。


だが、私がモクレン様の魅力に負けて鼻血を垂らしたり、逆に私が好き放題しまくったせいで一線を越える前に彼を気絶させたり、中々噛み合わない日々が続いていた。



でも、そんな日々もモクレン様は『楽しみがたくさんあって良いことじゃないの〜♡』と笑ってくれるから、私も嬉しく楽しい。




「モクレン様! 結婚式とは口付けをする儀式なのでしょう? さあ!」


「ツミキちゃん〜そりゃちょっと早いかな。婆ちゃんの話聞いた後だね〜」


「! 恐れ入ります!」




またやらかした。


会場中に抑え気味ながらも暖かい笑いが起こる。


この笑いは楽しくて起こる笑いだ。

だから、私もつられて笑ってしまう。



そんな私へ、ホオノキ様が



「そんなら、巻で行きましょうかね」



と気を利かせてくれた。




「モクレンさん、ツミキさん、あなた達二人に長々とした台詞なんか入りませんよね。⋯⋯だって、健やかな時も病める時も、国がエンダーしかけたヤバい時でも、あんたらは乗り越えて来たんやから。これからもずっと、仲良くするんやで」


「ありがとうございます、ホオノキ様! ⋯⋯では、モクレン様と口付けても」


「はいはいかまへんかまへん。好きにしたらよろしいがな」




ホオノキ様は楽しそうに笑って



「孫のこと、頼んますよ」



と私の頬を撫でてくれた。


お優しいホオノキ様に一礼し、



「さあモクレン様!!!」



と彼の顔を見上げた――――その瞬間!!!




結婚式の会場のドアがバターンと開かれ、焦った顔のマグノリア騎士団が叫んだのだった!




「モクレン団長!!! 北西の牧場付近に巨大な羆魔獣が出ました!!!!!」




私は今、過去最高に怒り状態になった。




◇◇◇




「いや〜さすがツミキちゃん。ウェディングドレス姿で巨大な羆魔獣を大鎌で八つ裂きにする姿は超綺麗だったよ〜! 血飛沫が薔薇の花びらに見えたもん」


「恐れ入ります。モクレン様も二刀流のフライパンで華麗に羆魔獣を撲殺したお姿は、さすが麗しのスパダリ美青年でした!」




星と月が綺麗な夜。


マグノリア城のバルコニーにて、私達はいつもの格好でのんびりと雑談していた。



レンゲ様とサラサ先輩もどうかと誘ったのだが、それぞれ


「ボクはそんなに野暮じゃないのでー」


「わらわは意外と気が利くハイエルフじゃぞ」


と、来賓の方々と飲み会に行ってしまったから、今はモクレン様と二人きりである。



モクレン様と二人きり。モクレン様をひとり占めしているみたいで、とても嬉しい。




「モクレン様、これからもプルトハデス国の魔獣問題はお任せ下さい。一匹残らず駆逐してみせます」


「ありがとうツミキちゃん♡ 頼りになるぅ〜! それにしても、結婚式に参加してくれたハイエルフ達、全員武闘派だったね〜! マジで耳長えだけの反社だった!」




結婚式に参加したハイエルフ達と羆魔獣の群れをぶちのめしたあと、返り血まみれで結婚式を再開し、記念写真を撮った。

私を含め全員笑顔を浮かべているが、激しく血まみれだった。



そんな写真を、モクレン様は『結婚式じゃなくて反社の抗争の記念写真みたいになってるけど、刺激的でおもしろ〜い♡』と笑いながら、美しい額に飾ったのだ。




「来賓のハイエルフ達は本当に強かったですね。⋯⋯それに、母の大鎌捌きは私以上のものがありました。⋯⋯悔しいです。母のドヤ顔を思い出すたび、怒りと悔しさで腹が立つのです」




根源の大樹を破壊し、ユーフォルビア様の心を解放した今でも、私や母には大鎌を生み出す魔術が残り続けた。


ホオノキ様曰く、大鎌を生み出せるのはユーフォルビア様が魔獣化した影響が受け継がれたためであり、その体質は死ぬまで消えることは無いという。



だが、それで良い。

大鎌を振り回し魔獣を斬首するのが死神令嬢わたしなのだから。


⋯⋯それに、いつか母に勝つべく修練を積まねばならない。




「これ以上、母に舐められっぱなしではいられません。私の戦いはこれからです」


「あははっ、まあ仲が良くて良いじゃないの。俺の親父なんか兄貴派の貴族に金返せって追い回された挙げ句夜逃げしてさ。今頃どこのみぞにハマってることやら」


「⋯⋯ま、まあ⋯⋯モクレン様の父君なら、きっと大丈夫ですよ。もしかしたら、カブキ地区でホストクラブでも経営して荒稼ぎしているかもしれません」




モクレン様の父君は、この世が終わっても生きてそうだ。


そして、そんなしぶとさをモクレン様もしっかり受け継いでいらっしゃる。




「ホストと言えば、私はホストの名刺のカードバトルでレンゲ様と再戦するのです! モクレン様にもご助言頂きたいので、後でデッキ構築の相談をさせて下さい!」


「いいよいいよ〜! レンゲくんは強いからね〜! 大丈夫そ?」


「はい! それに、あの白熱したバトルは本当に楽しく、再戦が待ち遠しくて仕方ないのです! とても楽しく、嬉しく、ワクワクしています!」




楽しさと嬉しさが溢れ、自然と頬が緩んで口角が上がってしまう。


そんな私を、モクレン様は「可愛い笑顔するじゃん♡」と言ってくれた。




「それに、モクレン様! 数日後にはサラサ先輩の大型ライブですよ!! 歯の治療を終えた先輩のフルパワーな歌声を聞くのが楽しみで仕方ありません!! みんなで光る棒の魔道具、サイリウムを振り回しましょう!」


「そうだね〜! サラサの歌も出世したもんだ。最初はただの騒音ゲテモノだったけど、意外とクセになるよね〜」




サラサ先輩の大型ライブも、レンゲ様とのカードバトルも、何もかもが楽しみだ。


そして。最高に楽しみなのが。




「モクレン様。私は貴方を好きで、恋していて、愛しております。そして、それはモクレン様も同じなのでしょう?」


「⋯⋯そだよ。ツミキちゃんのこと、大好きだよ♡」


「はい! だからこそ、これからは毎晩、モクレン様と共に寝ながら雑談が出来るのですよね! 私は、それがとてもとてもとても楽しみなのです!」




楽しみで嬉しくて、頬がどんどん緩んでしまう。


毎日が楽しく、毎日が嬉しい。

朝が愛しく、夜が待ち遠しい。


明日が楽しみで仕方ない!!


生きることが、とても楽しい!!!


私は、今――




「幸せなのです! ⋯⋯! モクレン様! 私はやっと幸せを発見しました!」


「おお! ついにやったじゃ〜ん! 聞かせて聞かせて?」




モクレン様は私の頬を撫でながら、夜明けの空のような紫の瞳で私を見詰める。


美しい瞳だ。ずっと見ていたい。




「幸せとは、たくさんあって気付くのが難しいのですね。今になってやっと、『私は既に幸せになっていた』と気付きました」


「そっか。良い着眼点じゃないの〜!」


「ありがとうございます! ⋯⋯私は、レンゲ様と遊んだり、サラサ先輩の歌を聞いたり、文鳥姿の先輩をもふもふしたり、ホオノキ様とお話したり、マグノリア騎士団に戦いの講義をしたりする毎日が楽しいのです。嬉しいのです! 明日が待ち遠しいのです!!」




七号と呼ばれていた頃は、飢えることなく永遠に眠れる死は救済であり、ある意味幸せだった。


だが、ツミキとして毎日楽しく生きる中、死は救いでも幸せでもなくなった。


死にたくない、生きていたい、そう思えたのだ。



今思うと、モクレン様の元に来てから、私はずっと明日が楽しみで仕方なかった。私の幸せとは、これだったのだろう。


幸せとは、案外後になって気付くものなのかもしれない。




「それに、モクレン様が作る美味しいご飯を食べたり、貴方と雑談⋯⋯いえ、例え貴方が何もしてなくても、傍にいるだけで私は勝手に幸せになるのです」




モクレン様は頬を赤くし照れながらも、私の目をじっと見て話を聞いてくれる。




「⋯⋯モクレン様やレンゲ様やサラサ先輩達と、毎日美味しいご飯を食べて、たくさん遊んで、たくさん雑談して、気が済むまでぐっすり眠るこの日々が、私の幸せなのです。⋯⋯私の見付けた幸せは、これです」




明日もみんなとたくさん雑談して、美味しいものを食べて、蕩けるように眠りたい。


そして、朝起き⋯⋯まあ、レンゲ様は起きてこないが、それでも。


明日を生きるのが楽しく嬉しいと思えるこの日々こそ、私の幸せだ。




「モクレン様。私は幸せになりました。いえ、既になってました。それに気付けたのも、貴方が私に心が戻るのを待ってくれたからです」


「あったりまえよ。俺はスパダリですからね。⋯⋯安い男じゃありませんので」


「ふふっ。ええ⋯⋯高嶺の花ですからね」


「今は君に手折られちゃったけど♡ ⋯⋯ねえ、ツミキちゃん」




さっきまで照れくさそうにしていたモクレン様は、照れの名残が残る紅潮した顔に真剣な表情を浮かべ、私の両頬へ優しく手を添えた。




「これからも一緒に、たくさん幸せ見つけようね」


「はい。そして、たくさん雑談しましょう」




モクレン様が身を屈めるので、私は背伸びをして彼との距離を詰め、ゆっくり口付けた。



今夜も、モクレン様と紅茶でも飲みながら雑談をしよう。


明日も明後日も、ずっと、いつまでも。




「モクレン様。愛しております」


「俺も♡ ⋯⋯いや、俺の愛の方が重くて湿度高くて粘着質かもよ?」


「さあ、どうでしょう? 実は私の方がヤバい奴かもしれません。⋯⋯ならば、今日の雑談の議題はこれで行きましょう」




私がそう言うと、モクレン様は「りょ〜かい♡ スパダリとして負けるわけにはいかないね」と笑ってくれた。


その笑顔を、私は愛している。




おしまい♡









◇◇◇


ついに完結しました…!!こちらは完結イラストでございます!

挿絵(By みてみん)


また、次のページにはあとがきがありますので、そちらも是非ご覧下さいませ!


それでは、

「面白かった!」

「ツミキとモクレン、幸せにな!」

「書籍やコミカライズされたら嬉しい!」


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションをお待ちしておりますぞ!


完結させると完結ブーストと言うめちゃめちゃPVが上がるボーナスタイムが来るので、それに乗せてたくさん評価ポイントがもらえたら、もしかしたらランキングに乗れるかもなので、ぜひよろしくお願いしますー!(2025/9/27 ランキング入り叶いました!!ありがとうございます!)


完結記念イラストへのご祝儀的に、ぜひとも⋯⋯!!


それでは、ありがとうございました~!!あとがきもよろしくお願いいたします!

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