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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第四部 死神令嬢、真実を知る

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69・モクレン様の無双の影に

「我々マグノリア地方が独自に開発した魔法兵器⋯⋯その名も『マグノリア・サイクロン』!! これさえあれば、もう魔獣なんて怖くありません!!!」




魔法兵器でオオスズメバチ魔獣の大群を数分で駆逐した翌日。


モクレン様はハイタカ地方の領主やその東隣にあるリリーズ地方の領主と、両地方を護る騎士団を我が屋敷の庭園に招待し、完成した魔法兵器『マグノリア・サイクロン』のお披露目会を開いたのだ。


広い庭園に作ったステージの上で、モクレン様はマイクを片手に大勢の来客へ語りかけている。



一方、私とレンゲ様とサラサ先輩はステージの傍に控え、すらすらとマグノリア・サイクロンの解説をするモクレン様を眺めていた。




「ご来場の皆様は、こんなお悩みをお持ちでは無いですか? 魔獣の相手が忙しくて避難民の誘導に割ける人員が無い。魔獣対策で手一杯だから地方の治安維持までに手が回らない。年々強くなる魔獣の進化速度に騎士団の育成が追い付かない⋯⋯他にも色々あるかと思います。⋯⋯俺も、そうでしたから」




モクレン様は暗い顔をして声のトーンを落とす。


しかし、次の瞬間には顔と声をぱっと明るくした。




「でも! このマグノリア・サイクロンと言う強力な味方がいれば!!! 魔獣の殆どはコイツで吸い込んで、加熱し毒を飛ばしながら焼き殺す事が可能なのです!! そうすれば、魔獣対策に割いていた人員や資源などのコストを全て、領民の生活を護るために使えるのです!!!」




この言葉で、来客達が「おおっ」と声を上げる。




「しかも!! マグノリア・サイクロンの操作はとても簡単!! 少し練習すれば誰だって扱える優れモノ!!! ⋯⋯でも、皆さんこう思ってるんじゃないですか? ⋯⋯⋯⋯マグノリア・サイクロンが登場したら、騎士団がお役御免になって大量の失業者が出るのでは⋯⋯と!!」




この言葉で、来客の騎士団達が「ああ⋯⋯」とざわざわしながら頷いた。


その気持はよく分かる。


私も魔法兵器が存在したら、オワコンになるのではと不安だったから。




「心配御無用!!! 何故なら、マグノリア・サイクロンは魔獣対策と言う最も危険で最も人員が必要になる業務を手助けする道具に過ぎないから!! マグノリア・サイクロンのお蔭で業務に余裕ができれば、その費用と時間を今まで手付かずだった治安維持に当てることが可能です!! 朝昼晩深夜の巡回、治安が悪い地域の警備、街に根付く犯罪組織の取り締まり!! それだけじゃない!!」




モクレン様は空へ突き上げた手を来客達に向け、輝くような笑顔を浮かべながら言葉を続けた。




「例えば地域ごとに小さな拠点を作り、そこで市民の困りごとの相談に乗ったり、道を案内したり、無くし物の受付をしたり⋯⋯! それに、地域ごとに騎士がいれば、スリやひったくりや空き巣と言った今まで手が回らなかった犯罪者達を捕まえることも可能です!! そうなれば騎士の需要は寧ろどんどん増えることでしょう!!」




来客の騎士達が明るい顔で一斉に拍手をした。


マグノリア・サイクロンのお披露目会を始める前、モクレン様は言っていたのだ。



『マグノリア・サイクロンの登場で、みんなが気になるのは【需要が無くなった騎士が大量解雇されること】だと思う。だから、マグノリア・サイクロンは騎士の未来を明るくするって伝えることが勝負どころかな』



それを踏まえて騎士達の明るい表情を見ると、勝負は勝ったと言えよう。




「やがて魔獣を倒す役目から解放された騎士達は、人々の治安を護るために警備をしたり、犯罪者を取り締まるために巡察したりする業務に就くことでしょう。⋯⋯『警』備や巡『察』⋯⋯そう、騎士はやがて『警察』騎士と名前を変える時代が来るかもしれませんね」




人々は「警察騎士⋯⋯?」とざわざわし始める。


確かに、魔獣問題が片付けば、騎士が戦う相手は魔獣から犯罪者となる。


そんな時代になれば、騎士の名称もより分かりやすい形に変わる未来となるだろう。




「愛する貴方の家族や友人や恋人が犯罪の脅威に怯えること無く安全に暮らせる!!! そんな未来をマグノリア・サイクロンと一緒に作りませんか!? お代は入りません。設計図は全て共有しますし、改善点があればうちのレンゲ・オーヤマにご報告ください!! 一緒に魔獣と戦いましょう!!」




モクレン様がそう皆を鼓舞すると、来客全員が拳を空へ突き上げたのだった。




◇◇◇




「量産したマグノリア・サイクロンを無料で他の地方に譲ったうえ、設計図を共有し独自開発を許可するなんて⋯⋯モクレン様、財源は大丈夫なのですか?」


「大丈夫大丈〜夫! レアメタルと印刷所の利益を全部ぶち込んでるから借金は無いよ。⋯⋯相変わらず赤字だけど」




次のマグノリア・サイクロンお披露目会の会場へ向かうべく、私達は王都行きの馬車に乗っていた。


ため息混じりに赤字だと言ったモクレン様へ、サラサ先輩がのじゃのじゃ笑いながら



「よっ! 赤字領主!」



と囃し立てた。



そんなサラサ先輩へ、モクレン様はヤケクソ気味に笑いながら「ありがとよ! 鳥!」と笑い飛ばしたあと、



「まあ、赤字覚悟でマグノリア・サイクロンと設計図を共有したお蔭で、王都以外の地域にはバカでかい恩が売れたわけだ。俺が教皇王になるための宣伝材料としてはバッチリよ」



とニヤリとする。




「それに、そう言う下心抜きにしても。他の地方も魔獣問題には苦しんでたわけだし。魔獣への脅威が減って平和になるならそれでいいよ」




モクレン様がそう言って笑うと、レンゲ様も



「設計図も有力者達にたくさんばら撒けたし、これで魔法科学業界も大きく進化すると思われ。せっかくだから家電魔道具の設計図もたくさん共有すりゃ良かったなあ」



とアイパッドの画面にペンを走らせながら言う。


レンゲ様は、魔道具を作ることと魔法科学業界が発展することしか興味が無いのだろう。


きっと、以前印刷所を巡ってロスベール公爵に魔道具の設計図を大量に渡したが、印刷所云々が無くてもレンゲ様はロスベール公爵に設計図を共有したと思う。


成果や名誉に全く興味が無いレンゲ様の気質を見誤ったロスベール公爵の完全敗北だったのだ。




「そう言えば、ロスベール公爵はあれから動きがありましたか? ⋯⋯モクレン様がここまで派手に動いているのです。何か妨害があるかと」


「それは俺も警戒したんだけどね〜。⋯⋯やっぱ、母ちゃん――ベルさんが失踪した件で塞ぎ込んでるみたいで部屋に閉じこもってるんだってさ。ホストの接客中にカルミアから聞いた」




ロスベール公爵も、母君が失踪したら塞ぎ込むのか。

初めて彼の人らしさに触れ、少し驚く。



レンゲ様も



「ママが失踪したらそりゃ凹むと思われ⋯⋯。お見舞いにゼリーとか持ってく? ロスベールってどんな食べ物が好きなの?」



と眉を寄せて心配そうにしている。



だが、サラサ先輩は何かを考え込んでいるような顔で



「のじゃ⋯⋯ロスベール、なあ」



と呟いた。




「どうされました、サラサ先輩」


「⋯⋯違和感があってのう。じゃが、言葉が見つからぬ。⋯⋯ロスベール⋯⋯あの男は」




サラサ先輩は少し黙ったあと



「ま、考えても分からぬから仕方無いのじゃ」



といつもの『のじゃっ!』に戻った。




◇◇◇




王都にある侯爵家の応接室にて。


長年ポーラリス公爵家の甘い汁を吸ってきたロスベール派の貴族や王族達が、憤怒の顔を浮かべてテーブルをぶん殴った。




「誰でも魔獣が倒せる魔法兵器だと!? ふざけるな!! あんな物が普及すれば、聖騎士団の権威が地に落ちるじゃないか!! 聖騎士団団長の座は先祖代々ポーラリス公爵家の嫡男が就いてきたと言うのに、我々の代でその株が大暴落と言うのは言語道断だ!!」


「そうだそうだ! 我々は先祖代々、聖騎士団に息子を入団させることでポーラリス公爵家とのパイプを築いてきたのに!! その努力が白い悪魔のせいで全てパーだと!? こんなこと許せるか!!!」


「うちの家から何人の女がポーラリス公爵家に嫁いでると思ってるんだ!」




ロスベール派の貴族達の怒りはどんどん膨れ上がってゆく。




「どうしてこんなことになったのだ。今思えば、ロスベールが浄化の聖女カルミアと真実の愛を貫き婚約した時から、ずっとロスベールの株は暴落し続けている。⋯⋯一体、何があった?」




頭を抱える貴族達の中から、



「ユーフォルビア一族の七号だ」



と言葉が出た。




「ユーフォルビア一族の七号。あれとの婚約を破棄し、あのバカ聖女を選んだせいで、ロスベールは破滅の道を辿ったのだ。⋯⋯あの時は七号を弟に押し付け、浄化の聖女と言う権威の塊を手にしたロスベールはさすが文武二道の天才だと思ったが⋯⋯」


「逃がした魚は大きかったどころじゃない。⋯⋯逃がした魚が巨大な人食い鮫だったようなものか」


「その巨大な鮫が、白い悪魔の足枷だった魔獣を全て食い殺したということか」


「そして、足枷が外れた白い悪魔はロスベールに牙を向き始めた。その結果が、魔法兵器だ」




貴族達が一斉にため息を付く。




「しかも、今は浄化の聖女よりも七号の方に民の人気が動いている。⋯⋯ユーフォルビア一族への風当たりが強い王都ですら、七号を『戦乙女ヴァルキュリア』とか「死闘の聖女」と呼び心を寄せる始末。⋯⋯もう、浄化の聖女カルミアは駄目だ。流行りの言葉だと、オワコンだ」


「しかもカルミアは、ロスベールを見限っただけでなく、ホストに転職した白い悪魔に尻尾を振る始末。⋯⋯流行りの言葉だとホス狂いになってしまった」


「ホス狂い聖女って何なんだよ⋯⋯」




眉間に海溝のようなシワを寄せた貴族達が、ため息を付きながら天井を見上げた。




「いっそ、長年作り上げたパイプを捨てて、悪魔に乗り換えるか?」


「それだけは絶対に駄目だ。あの悪魔は我々の手に負えない。万が一、ロスベールを押しのけて白い悪魔が玉座に着いてみろ。⋯⋯重過ぎて担げやしない」


「そうだよなあ。⋯⋯担ぐ玉座は軽いに限る」




ロスベール派の貴族は考えた。



白い悪魔が王になれば、ロスベール派の自分達は一生冷や飯を食わされる。

冷や飯どころか、悪魔の祖母の出身地であるギオン地区の冷めた茶漬け――ぶぶ漬けを食わされるかも知れない。


その心は、『去れ、消えろ』だ。




「何が何でもロスベールを玉座に着かせ、白い悪魔を排除しなければ」


「そのためには、あのホス狂い聖女に変わる権威が欲しい」


「⋯⋯いるじゃないか。新しい聖女――――死神令嬢が」




貴族達は顔を見合わせニヤリと笑う。




「国民から愛される死神令嬢を、ロスベールに宛てがうのだ。⋯⋯そして、白い悪魔を失脚させる」


「いや、脚を折っても悪魔には翼があるぞ」


「ならばいっそ⋯⋯⋯⋯」




殺すか。



貴族達は言葉に出さず、目だけで会話した。




「さっそく、我々が担ぐ軽い玉座に話を付けに行こう」




そう言って、貴族達はロスベールの元へと移動したのだが⋯⋯。




◇◇◇




「ヒィィイイイッッッ!!!」




ポーラリス公爵家の屋敷に着いた貴族達は、ロスベールを前に腰を抜かした。


何故なら、恐ろしい光景が広がっていたからだ。




「【『シャーロット、お前の髪は極上の絹糸だ。その髪も甘い柔肌も何もかも、お前は俺のものだ』そう言って、リチャード殿下は私の髪を一房すくってキスをしたあと、結婚指輪を嵌めてくれたのだった。】⋯⋯学習完了。なるほど、結婚指輪というのが重要なのか。次は『不運令嬢は国一番のスパダリ王子の運命のつがいでした』学習開始」




大量の本にまみれたベルローザの部屋の中心に座り込んだロスベールが、ボサボサの黒髪がかかる青い目を虚ろにしながら、ブツブツとロマンス小説を音読していたのだった⋯⋯。








◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「レンゲくん、ゼリー持ってく?って優しいなオイ」

「ホス狂い聖女ってなんだよ!!」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想とリアクションもお待ちしておりますぞ!



また、ロスベールとカルミアのキャラデザが完成しましたので、ご覧くださいませ~!


挿絵(By みてみん)


それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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― 新着の感想 ―
キャラデザ公開ありがとうございます 虚無眼でロマンス小説を音読… 目撃した派閥貴族は震えますね ロスベールくんの思考、言動はこれから変化していくのでしょうか? 続きを楽しみに待機してます!
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