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【完結】虐げられた死神令嬢ですが、陽気な騎士団長に溺愛されて幸せになりました。〜一方、私を捨てた元婚約者は知らない間に破滅してました〜  作者: ぷきゅのすけ
第四部 死神令嬢、真実を知る

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63・母をたずねて(ロスベール視点)

「母上はまだ見つからぬのか!?」


「も、申し訳ございません!!!」




私――ロスベールの問いに、聖騎士達は頭を下げて部屋を後にした。母上失踪から数日が経過したのに、未だに行方が分からない。


ざわつく胸中を抑えながら、ふと眩しさに目を細める。もう昼間だったのか。時間すら、忘れていた。




「ねえー! ロスベール様ぁっ」




母上は、子供とは父親と母親が心から愛し合った末に誕生することが正しいと、貴女は何度も言ったではないか。


それなのに、何故失踪したのだ。




「ロスベール様っ!! あたしの誕生日パーティについてですけどっ!!」


「⋯⋯あ、ああ。そう、だな⋯⋯」




ああ、そうだ。カルミアの誕生日パーティだ。


勝ち組の男は女に幸せを与えてやるのが役目。

最高級の女であるカルミアを幸せにしてやることこそ、私の権威を皆に知らしめることに直結する。


そう、父上から教えられた。


なのに、そんな父上を母上は実は嫌っていたのだという。


わからない。どうして? 理由が知りたい。ただそう思う。




「ロスベール様に溺愛されるあたしを見てもらいたくて、たっくさん女の子のお友達を呼んだんですぅーっ!! みんなに見せてあげたいなっ! ⋯⋯この国で一番幸せな女の子が、誰なのかを」


「⋯⋯幸せな、女の子⋯⋯か」




母上は、自分は幸せなのだと言っていた。


ポーラリス公爵家と言う女神に選ばれし一族に生まれた素晴らしい家系に嫁げて、涙が出るほど幸せなのだと、散らかった部屋の中で毎日感動の涙を流していたのだから。


散らかった方が落ち着くと言う不思議な感覚を持つ感動屋の母上の泣き顔は、今でも良く覚えている。




「ロスベール様ぁっ!!! あたしの話聞いてますかーーーーっ!!! あたしの誕生日パーティにはサロン・ド・オーヤマのドレスで、ケーキは老舗の最高級パティシエを呼んで、国一番のオーケストラを呼んで、それでそれで」




母上、貴女は言ったではないか。


貴方とカルミアさんの誕生日パーティが楽しみだと。


母上、貴女は私に嘘をついたことなど一度も無かったではないか。



!!! もしや、母上は執事と逃げたのではなく、無理矢理拐われたのでは!?


だから、愛する父上を巻き込まぬよう嘘をついたのだ!


そうだ。きっとそうだ。



それなら、早く母上を救出せねば!!!



私は立ち上がり、まずは母上がどこへ誘拐されたのか手がかりを探すため、母上の部屋へ向かった。




「ちょ、ロスベール様!? あたしの話聞いてます!?」




母上の部屋に入り、申し訳無いが机を探る。




「うわっ!! きったない!!! グッチャグッチャでホコリまみれ!!! やだっ、ドレスに埃付いちゃったぁ!!」




机には何も無い。


今度は母上の本棚を探そう。


母上の愛読書であるロマンス小説を片っ端から開き、何かないかと探し続ける。



すると、母上が一番愛していたロマンス小説に、真新しい押し花の栞が挟まっていた。



この花は⋯⋯ハイタカ地方のマツバラと言う地区に生えているクスの花だ。


しかも、この栞は真新しい。きっと、最近作られたものだろう。


ならば、マツバラ地区が怪しい。


行かねば。そこで母上をお救いするのだ!!!




「ロスベール様ってば!! ちょっと、どこ行くんですかーーーっ!!!!」




◇◇◇




国一番の駿馬を飛ばし、王都の南に位置するハイタカ地方の南の果にあるマツバラ地区へ向かった。


日はすっかり暮れている。ならば、母上を拐った悪漢はアジトにいるだろう!



早く、早く母上を救わねば!!



私はマツバラ地区の役所に、母上の写真を見せて『この女性が来ていないか』と尋ねた。




「ちょっと、あの、ロスベール公爵!? 一体何がどうし」


「母上は!? 母上はどこなのだ!!! 答えろ!!!」


「え、ええ⋯⋯? そんな、知りませんけど」




歯切れが悪い職員である。


だが、この世は私と母上と父上以外みな低知能なのだ。仕方ない。


良く考えろ。このマツバラ地区はこの国で一番小さな漁港街だ。


そんな街に母上を拐ったと言うことは、それ相応の日用品を買う必要がある。


ならば、大型の商店がある周辺が怪しい。


私は、頭の中にある地図を頼りに、マツバラ地区の大型商店へ馬を飛ばしたのだった。




◆◆◆

 



突然怒鳴り込んで来たロスベールがどっかに行ったあと、張り詰めた空気が一気に緩んだ役所にて。

職員達が訛り混じりに呆れながら会話をした。




「⋯⋯ロスベール公爵の母親って、ベルローザさんやったっけ? あん人、確か旦那さんが浮気ばっかさすけんおかしくなっとるって、評判やったよね?」


「うんさ。いやー金で幸せは買えんばい」




◇◇◇




マツバラ地区の大型商店は全部で三つ。


その内二つには既に捜索を終えている。



あと一つ。ここだ。



マツバラ地区の海岸通りと呼ばれる寂れた田舎町。


この地にある大型商店に母上の手がかりが―――




「⋯⋯ゔ」




店の隣にある野外の貧乏臭い食事処フードコートから、聖ペルセフォネ王国から伝わった即席乾麺――カップ麺と言う負け組の豚の餌の匂いがした。



人々は、即席乾麺は食事としても美味しく、お湯を注げば食べられるという理由で非常食としても優秀だと聞くが、勝ち組の私の品性には耐え難い下品な代物である。



あのツンと来る塩分と油の匂いを嗅ぐだけで、頭の奥が鈍り、胸辺りの皮膚が焼け付くように痛くなる。


嫌だ。この匂いだけは無理だ。



以前、母上が散らかった部屋でこれを食べていたのに遭遇したとき、頭がボヤけて胸が焼け付くように熱くなって、気が付いたら吐いて気絶していたくらいだ。


それ以降、母上は『即席乾麺など負け組の食事。あの様な下品なものなどポーラリス公爵家の選ばれし者には相応しくありません』と言ったのだ。



だが、聖騎士の中にはこの即席乾麺を好んで食べる下品な味覚を持つ者もいる。


そう言った奴には勝ち組としての自覚を教え込むため直々に説教をくれてやったが、その者から漂う即席乾麺の匂いで何度吐きそうになったことか。


その様な下劣なものを食う奴には、プルトハデス人としての誇りは無いのかと説いてやらねばならぬ。


私は吐き気を堪えながら野外の食事処を見――




「ベルローザお母さん!! お母さんにかまぼこあげるね!」


「まあ⋯⋯ありがとう、エレン。⋯⋯それに、お母さんと呼んでくれて⋯⋯ありがとう⋯⋯っ!」




母上だ。

店の影から様子を窺うと、そこには。



母上が見たこと無いほど蕩けた笑顔で、執事長と知らないガキの三人で即席乾麺を食べている光景があった。


何故だ? 母上、貴女は即席乾麺を下品な豚の餌と呼んだじゃないか。


それなのに。


それなのに。




「ねえお母さん、家族みんなで食べるカップ麺は美味しいね!」


「そうね、エレン。そうだわ。お母さんのお揚げを半分上げましょうね」


「わーい!! ありがとうお母さっ!!! ァッヅァアッ!! ぅ、うぇぇぇええんっ!!!」


「きゃぁぁああ!!! エレン!!! 駄目よ熱いお揚げにかぶりついちゃ⋯⋯! ほら、冷たいお茶を飲みなさい」




エレンと言う男児ガキの泣き声がやかましい。


私はあの様な低知能の猿の如き泣き声など一度もあげたことはなかった。



母上から拝命した



『勉学も武術も芸術も全て完璧でありなさい。そして、殿方としても完璧であるの。まるで、ロマンス小説の王子様みたいに』と



と言うご指示を、私はエレンとか言うガキと同い年には完璧に遂行していたというのに。


何故、何も出来ない犬畜生のようなガキに、貴女は優しくしているのですか。



心臓が破裂寸前と言わんばかりに跳ね続け、母上達を見ることが出来ない。


エレンとか言うガキのやかましい泣き声が、足に絡みついて身動きが出来ない。



そんな中、母上を拐った執事長の声が聞こえた。




「ベルローザ様。貴女は本当にお優しい方ですね⋯⋯。私の亡き妹の子と、ここまで心を通わすなんて」


「そんなこと無いわ。だって、エレンがとても良い子だからよ。最初は私をお母さんと呼ばなくて良い、でもおばさんは嫌だからベルと呼んでと伝えたの。⋯⋯なのに、エレンが私を母親と選んでくれたから。本当に、この子は心優しい子だわ」


「ベルローザ様⋯⋯ポーラリス公爵家での日々は、貴方にとって悪夢に同じ。⋯⋯その傷を、私達と――いや、家族と一緒に癒やしていきましょう」




ポーラリス公爵家での日々が、悪夢?


何を言っているんだ執事長。母上はいつも誇り高きポーラリス公爵家に嫁げて毎日幸せだったと感涙していたのだぞ。


母上を拐った悪漢め。断罪してやる。


そう思うのに、エレンと言うガキの泣き声で体が動かない。




「ほらほらエレン。痛いの痛いの飛んで行けー!」


「! 駄目だよお母さん。痛いのを飛ばしたら他の誰かが痛くなっちゃうから」


「エレン!! ⋯⋯ああ、貴方は本当に良い子だわ。⋯⋯貴方は世界で一番良い子よ」




世界で一番良い子。


氷の刃のようなの言葉が、背骨に突き刺さった。


そう言えばと、思い出す。



私は母上の命じたことを完璧に遂行してきたのに、良い子と呼ばれた事は一度も無かった。



私は、母上の期待に応えられなかったのだろうか。




「ねえエレン。この世で一番大事なのは、勉学が出来ることでも武術が優れていることでも、物語の登場人物のように完璧であることでも無いわ。⋯⋯人の痛みに寄り添い、人の心を分かろうとする優しい気持ち。⋯⋯これが、一番大事なの。⋯⋯あの子みたいに」




あの子みたいに? それは私だ。


何故なら、私は母上の命じた通りロマンス小説の王子様のようになり、低知能共の心も理解してやる慈悲深き勝ち組――――




「その子の名前は、モクリエールアレンって言うの。あの子はね。私が悲しくて悲しくて毎日泣いていたとき、庭で摘んだ花を持って『大丈夫?』って言ってくれたの。⋯⋯なのに、私はとても酷い女で、あの子の気持ちを拒絶してしまったわ。あの子に見下されたと思ったの。⋯⋯でも、今は違う。彼は誰よりも優しくて賢い良い子だった。⋯⋯なのに、なのに私は⋯⋯っ! あんな優しい子に、私は⋯⋯」




⋯⋯⋯⋯⋯⋯その場から離れた。



母上の期待に応えられず、命令を遂行できなかったのだ。


いや、母上の心の隙間にあの淫売の息子が――愚弟が付け入ったのだ。


違う、母上が期待する意図を組んで命令を遂行出来たのがモクリエールアレンだった。



違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!


モクリエールアレンと言う淫売の息子で負け組の愚弟の詐欺師が!!! 母上の心の隙間に付け入ったのだ!!!



母上の心の隙間に付け入る?


母上はいつも父上を敬愛し感涙していたのに?



思考が混乱する。

この様な事態は初めてだ。


まるで度を越して稼働した魔道具のように、頭が熱暴走しているようだ。


公爵家お抱えの魔道具職人に、冷却装置でも作らせようか。



――まさに、混乱状態である。




◇◇◇




「ロスベール様は⋯⋯いや、『ロスベール』はもう駄目かもなー。マザコンとかキッモ!!! オエッって感じ!!!」




あたし――カルミアには、ママがいなくなったでちゅーって大騒ぎをして大事な婚約者を放置するロスベールよりも、忌み嫌われていた七号をあそこまで大事にするような心優しく賢く将来性に満ちた優良物件モクレン様の方が相応しい。


そして、キープはサロン・ド・オーヤマの息子レンゲ様だ。


どっちも七号の傍にいる優良物件スパダリだ。

ああ、どっちも欲しいなあ。




「七号、あんたにモクレン様は相応しくない。この国を破滅させた大罪人の末裔が、幸せになれるわけないでしょうが」








◇◇◇


良い感じにお付き合いありがとうございます!


ちょっとでも

「面白い!」

「先が気になる!」

「ロスベールへのざまぁ、エグくないですか……?」

「いや、もっとざまぁを!!!」

「カルミア、モクレンはお前の手に負えないから諦めな」と


思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)

ブクマとべた褒めレビューとご感想もお待ちしておりますぞ!



それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!

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