44・最強の騎士と共闘しました
「マグノリア大宴会で使用した高性能な魔道具。これらは全て、我々で開発したレアメタルと言う物質を使用しているのです」
私達は、プロメ様達を来賓席へお招きした。
来賓席は、見晴らしの良い砦の屋上に作ってあり、そこからはサラサ先輩が歌い踊る舞台も綺麗に見える特等席だった。
そんな特別な席で、ついに戦い⋯⋯いや、交渉が始まった。
この交渉が失敗すれば、マグノリア大宴会を開いた労力は水の泡である。
モクレン様の健闘を祈るしかない。
「このレアメタルは自然由来の素材を使ってありますので、量産しても環境を汚すことはありません。まさに、夢のような物質と言うべきでしょう」
「自然由来⋯⋯ですか? ⋯⋯⋯⋯まさか」
プロメ様は何かに気付いた様な顔で、
「魔動結晶」
と呟いた。
「はい! その通り!! このレアメタルは、溶かした魔動結晶と金属を固めて作り出したものです! ですから、魔力を全て吐き出したレアメタルはただの金属同然!! 再利用可能で環境に優しい物質となっておりま〜す!」
モクレン様はそう言って、背後に位置するサラサ先輩達の綺羅びやかな舞台を手で指した。
濃紺の夜空を切り裂くような眩い照明が次々と色を変えながら、歌い踊るサラサ先輩を輝かせる。
ギラギラした輝きと心地よい爆音が織りなす光景は、夢のような世界であった⋯⋯⋯⋯しかし!
「モクリエールアレンッッッ!!!! 貴様の企みなど邪魔してくれる!!!」
低く威圧的な男性の声が『スピーカー』から響き渡った!!
『それを合図』に、私はマイクを手に声を張り上げた!!!
「その声は!!!!!! 『魔法科学戦隊レールガンジャーの宿敵!!! 絶縁軍団のラバー将軍!!』」
私がそう叫んだ瞬間!!
砦中の子供達が明るい叫び声をあげ、舞台を見ようと砦のバルコニーに集まってきた!!
子供達が目を輝かせる中、悪魔と貴族の男性を掛け合わせたような格好をした男性――ラバー将軍が、闇色に光る美しい槍を手に、
「モクリエールアレン!! 貴様はレールガンジャー打倒の駒に改造してやる!!! 怪人アクシツホストとして生まれ変わり、世界中の女を騙して金を巻き上げるのだー!!」
と叫び、モクレン様を捕まえてステージへと連れて行ってしまう。
一方、『絶縁電気軍団ラバー将軍』がモクレン様を連れて行ってしまったことに、プロメ様は「え」と声を漏らし、ぽかーんとしてしまう。
だが。
「魔法科学戦隊レールガンジャー!? プルトハデス国のヒーロー漫画のあれか!?」
シドウ様は驚いて席から立ち上がったものの、はっ! とした顔ですぐに席についた。
⋯⋯やはり、シドウ様はヒーロー漫画がお好きなようだ。カルミア様が言った通りである。
私は、モクレン様が作戦会議中に言った
『俺は今日から【この国最強のヒーロー漫画ヲタク】になる。⋯⋯カルミアが言ってたっしょ? シドウ殿はヒーロー漫画が好きだって。だから、その話題で攻めようと思う』
という発言を思い出しつつ、マイクを手に取った。
「何ということでしょう!? このマグノリア大宴会を企画し色々なお店の協力の元、レールガンジャーを招待しようとしたモクレン様が、ラバー将軍に捕まってしまいました!!」
このマグノリア大宴会を企画する際。
モクレン様は、作戦会議中にて
『軽食を売る屋台がたくさんあれば客も来るでしょ? そしたら客目当てで色んな業者が商売しに来るわけじゃん! そうすりゃ金が集まるし、歌手を呼ぶのはむりでも、⋯⋯⋯⋯【ヒーロー】は呼べるんじゃねえかな』
と言っていた。
あの時は、唐突に出て来た『ヒーロー』という言葉に『?』となったものだが、マグノリア大宴会の準備期間中、モクレン様のお考えがやっと分かったのだ。
大勢の歌手を呼ぶのは無理でも、この国で大人気のヒーロー漫画『魔法科学戦隊レールガンジャー』のヒーローショーを行うことは可能だと。
版権元の許可と役者様さえいれば、ステージと小道具と衣装はこちらで何とか出来てしまう。
しかも、マグノリア大宴会には屋台の食べ物目当てで子供連れも多い。
子供達を喜ばせるための催しとしては、最高の
イベントだろう。
⋯⋯それに、ヒーロー漫画が好きなシドウ様に媚びを売りたいと言うあざとさも、子供達の笑顔のためと言う美辞麗句で消臭できる。
そして、ヒーローショーを開催したモクレン様は子供達――やがてマグノリア地方を背負う人々から尊敬さ
「モクレンが怪人アクシツホストだって!!! ぴったりじゃんギャハハハハ!!」
「これからはモクレンじゃなくてカスレンって呼ぼうぜアッハハハハハハ!!!」
子供達は大笑いしていた。子供とは、時に残酷だ。
そんな子供達に、ラバー将軍に捕まっているモクレン様は
「おいクソガキ共ッッッ!!! ホスト怪人になったらお前らの母ちゃん騙して金巻き上げるぞ!!! 毎日シャンパンタワー入れさせるからなボケカスコラァ!!!」
と本気で怒っているが、子供達は怯えるどころかゲラゲラ大笑いしている。
子供達どころか、いつの間にかラバー将軍の手下であるイレイザーと言う黒い怪人達に捕まっているレンゲ様とサラサ様も
「カスレンだってよダーハッハッハッハッ」と腹を抱えて大笑いしているし、
護衛の男性も
「ハーハッハッハッハッ!!! ホスト怪人になっても確定申告はするのだぞ!!」
と立ち上がって笑っている。
そんな男性を、隣に座っている小柄で大人しそうな護衛の女性が
「ちょ、恥ずかしいから。座って座って」
とたしなめた。
モクレン様の公開処刑となったヒーローショーを元に戻すため、ラバー将軍は
「どうだモクリエールアレン。怪人になりたくなければレールガンジャーを呼ぶが良い!!」
と低く艶のある声で叫んだ。
しかし、モクレン様は自分を嘲笑う子供達とレンゲ様とサラサ様にブチギレあそばされたのか、アドリブで
「いっそなったるわァッ!! ホスト怪人になって女から金巻き上げた挙げ句に脱税して社会の敵になってやる!!! ざまみろバーカッッッ!!」
と叫んでいる。
そんな全身ヤケクソのようなモクレン様に、ラバー将軍は一瞬無言になったものの、すぐに
「ヤケになるほど恐ろしいか!! ならばレールガンジャーを呼ぶのだ!! 早く!!!」
と台本を元に戻してくれた。さすが役者様だ。
ラバー将軍の台詞を受けて、私は子供達を見ながら声を張り上げる。
「皆様!! 一緒にレールガンジャーを呼んでください! せーーのっ!!!」
私の声に続いて、子供達とモクレン様とサラサ先輩とレンゲ様と護衛の男性が一斉に『レールガンジャー!!』と叫ぶ。
すると!
一瞬、舞台から明かりが消えた。
だが、暗闇に包まれた舞台から煙が上がり、そこへ照明が集中した!!
そこには――!
「魔法科学で未来を拓く! 魔法科学戦隊レールガンジャー!! 参上!!!」
赤と青と黄色と白と黒のスーツを纏う五人の戦士、レールガンジャーが現れたではないか!!!
◇◇◇
レールガンジャーは剣を手に、ラバー将軍は槍を手に、見事な殺陣を繰り広げている。
しかも、両者が使用する武器は、レンゲ様と武器屋の職人様が共同で開発した魔道具でもあるのだ。
そんな武器達には当然レアメタルが使用されており、それぞら魔力が宿っていた。
レアメタルがあれば強力な武器も作れると、きな臭い話題を出さず絵面で分からせる作戦である。
レールガンジャーのレッドが扱う剣は真紅の炎が宿り、ラバー将軍が振るう槍には紫色の炎が宿っている。
そんな二人が鍔迫り合いをすると、真紅と紫の炎がぶつかり合い、とても美しい光景であった。
⋯⋯⋯⋯だが。
真紅と紫の炎の中に、『存在しないはずの青白い炎』が混ざってい――――
「魔獣」
毒の気配を察知し、舞台の更に上⋯⋯砦の尖塔に、魔獣はいた。
即座に生み出した大鎌を手に、私は舞台へ駆け寄り、機材を足場に跳躍しながら尖塔へ飛び上がる。
魔獣は、青白い炎を纏う首無しの騎兵であった。
しかも、その手には巨大な槍があるではないか。
動物の面影すら無い悪霊の如き姿に、サラサ先輩の忠告を思い出す。
『ツミキの働きでこのマグノリア地方に魔獣の気配は無い。⋯⋯じゃが、魔獣は日に日に進化しておる。努々《ゆめゆめ》、油断するでないぞ』
その通りだった⋯⋯と、空中で首無し騎兵が振り下ろした槍を大鎌で防ぎながら、
「皆様!! お逃げください!!!!!」
と叫ぶ。
この場には人どころか子供達も大勢いる。
そんな中でサラサ先輩の爆音波や、コントロール不能なレンゲ様の雷魔法は危険極まりない。
だが、ここは騎士団の砦であり、しかもプロメ様達の護衛が三名もいるのだ。
避難はすぐ終わるだろう。
ならば、この魔獣は私が殺るのみだ。
首無し騎兵の槍を大鎌で防ぎつつ、避難が終わって無人となった舞台を確認してから、身体を翻して攻撃を下へ受け流す。
首無し騎兵は落下し舞台に激突するものの、すぐに起き上がり砦の尖塔を飛び移りながら、瓦礫の山となった舞台に着地した私を突き殺そうと突撃してくる。
突き出される巨大な槍を大鎌で防ぎ、火花が散る鍔迫り合いをしながら、子供達は怯えてないだろうかと思った⋯⋯が。
「ツミキ様鬼強え!! このまま逆らう奴らブッ殺して行こうぜ!!!」
子供達は怯えるどころか盛り上がっていた。
たくましい子供達の未来が楽しみである。
だが、子供達に気を取られた一瞬の隙をつかれ、私は『何か』に足を取られ態勢を崩した。
それは、首無し騎兵が持つ鎖鎌だった。
首無し騎兵は槍と鎖鎌の二刀流なのか!?
咄嗟に地面へ転がり、私を突き殺そうとする槍を回避するが、首無し騎兵は再び突撃して来ただけでなく、今度は私の大鎌を巻き取ろうと鎖鎌を巻き付けて来たではないか!
「⋯⋯っ!」
巻き付いた鎖鎌によって大鎌を横に引っ張られながら、前方から来る槍を防ぎつつ、何か反撃の手は無いか!? と考えた――――その時。
赤い炎が見えた。
「助太刀だァコラァァアアアッッ!!!」
正確には、それは赤い炎ではなく、シドウ様の赤い髪と瞳だった。
ラバー将軍の槍を手に、跳躍からの下突き攻撃で首無し騎兵の鎖鎌を持つ手を切断したシドウ様は、騎兵が乗る馬を目掛けて槍を突き出し、後ろ足を斬り飛ばす。
何だ、この鬼神の如き動きは!?
シドウ様はお強い方だと予想はしてはいたが、まさかこれほどとは!!
この国で最強の騎士と呼ばれるロスベール公爵の遥か上⋯⋯いや、次元すら違う強さだ!!!
そんなシドウ様は瓦礫の山を足場に夜空へ跳躍すると、後ろ足を失い暴れ狂う巨大な馬目掛けて下突き攻撃を繰り出した!!
シドウ様は突き刺した槍で馬の下半身を抑えながら、
「今だ!! ツミキさん!!」
と叫ぶ。
動きが止まればこちらのもの。
「シドウ様⋯⋯いえ、ヒーロー。感謝いたします」
私はこちらへ突き出された首無し騎兵の槍を駆け上り飛び上がると、身を捩り回転力を付けながら、大鎌を振り上げた。
「駆除いたしますッッッ!!!!」
首無し騎兵を真っ二つに切り裂き、返し刀で馬の首を斬首。
すると、首無し騎兵から青い炎が消え、毒の気配も無くなった。
肩で息をする私の元へ、槍を持つシドウ様が歩み寄る。
そして、彼はすっと手の平を見せたので、これは手の平と平で叩きあうアレだと理解し、私は勢い良く手を振り抜いた。
バチンッッッと言う爽やかな音が鳴ったその瞬間。
人々の歓声が夜の空に響き渡ったのだった。
◇◇◇
良い感じにお付き合いありがとうございます!
ちょっとでも
「面白い!」
「先が気になる!」
「確定申告はちゃんとやろう!」
「魔獣もどんどん狂暴化してるやん」
「ツミキ鬼強え!! このまま逆らう奴らブッ殺して行こうぜ!!!」と
思って頂けましたら、下記の星☆☆☆☆☆から★★★★★5評価を入れてくださると嬉しいです!(私のモチベーションが上がります!)
ブクマとべた褒めレビューとご感想もお待ちしておりますぞ!
それでは、何卒宜しくお願い致します~!!!




