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家族が薔薇色すぎるので、推し活はじめてみました。  作者: よしてる


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8/12

イメージカラー

ウキウキの毎日も、プチリサイタルやプチ絵画鑑賞を経て一ヶ月も過ぎれば、さすがに多少は落ち着くし、冷静さも戻ってくる。

それでも、世界が輝いて見えるのは変わらず継続しているけれども。


ただ、生憎の曇り空の下でも、天気のよい凪いだ海面みたいな心地でいる今日この頃、冷静になれる分、ちょっと、どうなのかという不満みたいなものが奥底からじわじわと浮いてきていた。


一ヶ月前まで全然意識してなかった私が言えた義理じゃないのは重々承知だけれども、あえて言いたい。

ジュリウス・ハウザーって、もっと評価されてよくない? と。


注目してなかった頃に思っていたのは、頭がいいけど、目立たないタイプ。

たぶん、クラス内での印象は外してないと思う。


でも、少し気にして見てみれば、両手に荷物がある人のためにドアを開けてあげたり、ノートを写しきれなかった人に見せてあげたり、顔色の悪い人に声をかけてあげたりと、どれも本当にさりげなく熟してしまうところが紳士すぎる。

普段は自分から話しかけないのに、そういうところに限って積極的な行動派というのが、たまらなく親切でずるい人だ。

目立ちたいというだけで手を上げたクラス代表なんかよりも、よほど代表に相応しいのに、あんまり知られてないところが悔しい。

もちろん、私みたいに救われた人は気づいてるのだろうし、本人は騒がれたり目立つのは好きじゃなさそうだから、環境としてはよいのだろうけど、ファンとしては、微妙にモヤモヤしてしまうのは仕方ない。


「なんか、さりげなく持ち上げるとか、自然に広報するとかできたらいいんだけど⋯⋯」


そんな技術や器用さがあったら、孤立する前にどうにかしているというものだ。


「あんまり、余計なお節介は止め!」


たいした関わりのないクラスメイトに持ち上げられるとか、怪しさしかないし、万が一、気持ち悪がられたりしたら立ち直れる気がしない。

それは、今の私にとっては死活問題だ。


「せっかくの寄り道なんだから、そっちを楽しまないと」


今日は太陽が陰っているだけ肌寒いながらも、久しぶりに真っ直ぐ帰らないで、放課後寄り道をしている。

もちろん、ジィには朝の内に伝えてある。

昨日の夜に部屋で課題をしていたら、ペン軸がポッキリ折れてしまったせいだ。

長いものだったから、折れたところで使えなくはなかったけれども、せっかくだからと買いに出かけることにした。


たかが、日用品を必要だから買いに行くだけ。

だけど、個人的には感慨深いものがある。

前に街に買い物に出かけたのは夏の休暇中、父の葬儀の後、レターセットを買いに行った以来のことだから。

あの久しぶりに気分のよかった買い物を双子には冷めた目で見られ、レターセットを使った手紙は母の友人に難癖をつけられて捨てられた。

買い物とは直接は関係ないものの、色々と重なって、今日まで気が向かなかったことだった。


あの時と同じ、ドアベルの鳴る文具店へ入ると、外とは区切られた穏やかな空間が広がっている。

やっぱり、ここのお店は感じがいいなと思いながら、今日はペンが並ぶコーナーに向かう。

こうして見ると、思った以上に種類があって迷ってしまう。

前のは、中等部に上がる前に、近所のおばちゃんに使ってないからあげるともらったもので、思い入れは、なんにもない。

できれば、前のより太めの方が使いやすそうかもとは思っていたので、それを目安に探してみようかな。


「あ」


色々と手に取って、試してみようと思っていたのに、その手前、箱に入ったペン軸に声が出るくらい縫い留められた。

箱に入った深緑色の渋いもので、メーカーのロゴが小さく金色で入っているだけ。

ものすごいシンプルで、学生らしさはない。

なのに、目に入った瞬間、「これ、ジュリウス・ハウザーだ」と直感してしまった。

一体、なぜ?


彼の髪色は焦げ茶色。

光に当たると、ちょっとだけ赤茶けた感じになるのが焼き物みたいだなと思っているけど、深緑とはほど遠い。

目の色は⋯⋯正直、わからない。

近くで見たのは、一ヶ月前に後ろから声をかけられた時くらいで、動揺してたし、視線もすぐに外しているから記憶にない。

その後も、注目はしているけれども、近寄ったりは当然ないし、直接会話したこともない。

だから、知らない、わからない。

見極めようと頑張ればわかるかも知れないけど、そんなに視力はよくないし、それをやったら、視野の広い彼には確実に気づかれる気がしてならない。


あ、でも、わかった。

アレだ、ブックカバー。

朝や昼、暇そうな時に本を読んでいる確率が高い彼は、必ずブックカバーをしたものを持参してきている。

それと、確か、ペンケースも緑系統だったはずだ。


納得したらスッキリだし、改めて、見れば見るほど、確かに彼っぽい。

渋さといい、光沢具合といい、どっしりした重厚感もそれっぽい。


「いいなぁ」


思わず呟いて値段を見ると、明らかに社会人向け。

もしくは、背伸びしたい、お坊ちゃん向き。

でも、すごくほしい。

格好いい。

しかも、脳内で財布と相談してみても、余裕を持たせた分で、なんとかなっちゃう状況だ。

どうせ、しばらくは交際費が必要になる予定はまったくないし、他にほしいものもない。


「よし、買っちゃおう」


どうせだから、お洒落な色インクも合わせてお買い上げしましょうとも。


包んでもらって、ありがとうございますと笑顔で店員さんに言われたけど、こちらこそ、ありがとうございますな気分です。

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