○○○年 十月 七日(後編)
ここまでです。
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その後のクスフ村の街道に出るというコボルドは、予定と違って五体に増えていた。
面倒ね、戦技を使いましょう。
「グルルゥゥワァァアァ──!」
吠え声だけは一丁前ね、武器を手に向かって来た三体の攻撃を躱し、受け流しながら反撃する。
戦技「疾駆連斬」を使い、左右に並ぶコボルド達の間を駆け抜けて、一気に三体を打ち倒す。
さらに目の前に来ることになった一体に対して、動きの流れに任せて頭に剣を振り下ろした。
その一撃が、我ながら鮮やかに決まり過ぎて──胸元まで切り裂いてしまう。
大量の血が周囲の地面にこぼれ落ち、残っていたコボルドは武器を放り投げて逃げ去った。
追撃しようかと思ったが、護衛の任務があるのだった。耳や皮袋、コボルドの持っていた武器などを回収して、クスフ村に入って行く。
「いやぁ──助かったなぁ、お嬢ちゃん強いねぇ──」
そう言いながら護衛料を払うじいちゃん。
「これくらい普通よ」
誉められて悪い気はしないが、本音だった。このくらいやれないで、一人で冒険なんて出来ないでしょ。
村の道具屋にコボルドの武器を買い取ってもらった。端金にしかならないけれど、別にお金の為に依頼を受けた訳じゃ無いし。
帰りは幸い、村からルゲールトの街に戻る荷車が他にあったので、それの護衛も引き受けることになったのだ。
*****
「ただいま」
戦士ギルドに戻って来た私は、受付に立っていたメネレアに依頼達成証明書と、亜人種の耳などを提示した。
「本当に強い人だったんですね」
「もちろんよ。以前は祖父の住んでいたベイエクアート辺りで依頼を受けながら、何度も実戦を経験していたし」
私はそう言って報酬を受け取る。
思えば奇妙なものだ、普段は受付の向こう側に立って、お金の支払いをするばかりだったのに、今日はお金を受け取る側に立っているなんて。
「も、もしかして……このまま冒険者になっちゃうんですか?」
メネレアは私が冒険者になっているところを想像しているのか、上を見上げる様な仕草をする。
「──そうねぇ、それもいいかもしれないわね」
「そんなぁ、頼りになる受付が、一人居なくなっちゃいますよぉ──!」
彼女はそんな風に言って私を喜ばせてくれる。でも彼女はきっと、引き留めないだろう。
メネレアはその優しさ故に、自分の意志を貫いて他人に何かを求めたり、強要したり出来ない子だから。
そんな優しいメネレアが私は好きだけれど。
私が受付を辞めると言った時くらいは、引き留めて欲しいかも……




