○○○年 十月 七日(前編)
ちょっと趣向を変えて、街の外へ出る展開。
戦士ギルドの受付に立つと、同僚が固まったまま動かなくなる。
私は無言で階級章を呈示した。
「レ、レイセアさん、その格好は……?」
そう、今回は私は、受付嬢として受付の内側に立ったのでは無い。冒険者として受付の前に立ったのだ。
それを見ていたメネレアがすっ飛んで来た。
「レレレッ、レイセアさん。どうしたんですか、その格好は……!」
メネレアは見習い受付を押し退けて、驚きのあまり巻き舌になりながら尋ねる。
今日の私は黒蜥蜴の革を使った革鎧に、鋼の胸当てや肩当てなどを付けた、本格仕様の装備を身に着けている。
籠手や脛当ても、革と鋼を組み合わせて作った──それなりの品よ。メネレアほどの受付なら、これらの装備品を身に着ける冒険者の実力が、一目で分かるでしょ?
「レイセアさん、腰の小物入れが外れかかってますよ」
……大失態だわ。こんな初心者紛いの凡失敗、久し振りの冒険とはいえ、思わず赤面しそうよ。
私は無言で外れかかった留め金を、しっかりと固定し直す。
「銅階級の仕事を貰える? 一人か二人で出来るものなら受けるわ」
メネレアは「え──っと……」と言いながら依頼表を探し、小声で「大丈夫かな……」と漏らす。
これは依頼をバシッと片付けて、証明しないといけなくなってきたわね。彼女に侮られたまま終われないわ。
「そ、それでは──こちらのクスフ村への街道のコボルド退治、これでどうでしょうか。荷車の護衛任務と併せて行えます」
「三体のコボルド? 肩慣らしにもならないけれど……いいでしょう。その近くで討伐対象の亜人種や魔物が出たら、それも片付けて来るわ」
そう言って私は戦士ギルドを出て行く。
「気を付けてくださいね」
メネレアの声を背中で受け、私はクスフ村に向かう荷車を紹介された。
*****
小さな数匹の驢馬に引かれた荷車に揺られながら、街道を進んで行き、その途中で二匹のゴブリンに遭遇した。
はっきり言おう。通常種のゴブリンなど、武器を手にした人間の子供と同じだ。より凶暴になったというだけで、脅威でもなんでも無い。
こんなのに負ける奴は、冒険者になるべきじゃない。
荷車から降りると、驢馬を守る為に前へ出る。緑色の肌をしたゴブリンが、汚い手斧を手にして襲いかかって来た。
私はそいつの首を、一瞬で打ち落とした。
もう一匹のゴブリンは、何が起きたか分からずに、剣を構えた私と倒れた仲間を交互に見ている。
「おねんねの時間よ」
二匹目も一瞬で倒すと耳を削ぎ、持っていた皮袋を奪って荷車に戻る。
「ね──ちゃん、すっげぇなぁ……」
御者のじいちゃんが、そんな感想を漏らす。
当然よ。私は英雄と呼ばれた祖父から剣を習ったのだから、戦技を使うまでもないわ。こんな相手。




