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本日もよろしくお願いいたします


一気に結ばれるふたり

 今日も今日とて、俺は愛馬アレスに乗って“遠乗り”に出掛けた。


 今日は、先日の魔獣氾濫(スタンビート)の震源地となった“黒の森”に来ている。

 先日の事(スタンビート)が嘘のように静まりまえっている。細い木々は軒並みなぎ倒されていたり、地面は大量の魔獣が駆け抜けたために耕された畑の様になっていて、氾濫(スタンビート)の爪痕が生なましい。大きい魔獣に踏みつぶされたのか、時々小さな魔獣の遺骸を見かける。


 別に何かの調査って訳じゃない。単純に興味本位だ。魔獣氾濫(スタンビート)後の森ってどんな状態なのかを知りたかっただけだ。

 踏み跡を観察しながら、氾濫の始まりを探して歩く。途中までは一方向から森の外に向かって行く大量の足跡を追跡できたが、途中からはだんだん不規則になり、最後はぐちゃぐちゃでよく分からなくなった。

 推察するに、森のあちこちから集まって来た魔獣が離合集散を繰り返しながら無目的に移動したり旋回したりした。そしてだんだん魔獣の群れの規模が大きくなり、ある限界点を越えた瞬間に一方向に走り出した・・・こんな感じかな?

 なぜ、このような事が起こるのか?未だ解明されていない部分が多い現象だ。


 俺は半日ほど“黒の森”を探索して、帰路に就いた。

 この時、俺が出かけている間にゲリエル侯爵が“冒険者パトル”について調査しているとは知らずにいた。




▲▽▲▽▲▽


 “黒の森”の探索から帰宅して湯あみをしてさっぱりした俺は、ゲリエル侯爵から呼び出された。

 ギャビーに案内されて執務室に入ると、窓の外を眺めていたゲリエル侯爵が振り返った。何か焦っているのか、表情が硬いように思われた。


「お待ちしていました。あなたに確認したい事がございます。どうぞ、まずはソファーにおかけ下さい」


 丁寧に席を勧めてくるが、話し方がどこかぎこちない。何かあったのだろうか?

 俺が席について給仕がお茶を準備したあと、ゲリエル侯爵は人払いをした。


「今日、冒険者ギルドに人を遣ってあなたの事を調べさせました。それからあなたの母国での事も。近衛騎士に成る直前だったとか」


「はぁ、そんなコソコソ調べずとも、隠すような事もありませんし、直接聞いていただければ良かったのでは?」


「周囲の評価など、君にも知りえない情報も集めたいと思っていましたから」


「なるほど。で?」


「冒険者パトル・・・そのお名前、そして高い戦闘能力と乗馬技術・・・あなた、ご自身の事を幼少の頃から“俺”と仰るとか・・・」


 そう一気に言ったあと、ゲリエル侯爵は涙に言葉を詰まらせて口元を掌で覆い、俯いてしまった。


「っ!? 」


 な、なにがあった?

 暫く肩を震わせていたゲリエル侯爵が、顔を上げて告げた次の言葉に俺は驚愕する事になる。


「や、やっと会えた。探していたのよ、パトル・・・」


「??」


 探してた?誰を?


「私よ、パトル。私、アマラよ」


「!!!あ、アマラ?」


「ええ!」


 ゲリエル公爵・・・もとい、アマラが「思わず」と言う風にソファーから腰を上げて、俺に駆け寄り抱きしめてきた。




▲▽▲▽▲▽


 びっくりしたぜ。この奇妙な“前世の記憶を持つ”状況が俺だけに起こった事じゃなかったなんて考えもしなかった。

 いや、今から思えば、何故、俺だけだなんて思ったんだ?アマラは俺はずっと探してくれていたそうだ。だけど、俺はアマラを探そうだなんて発想はなかった。

 会いたくなかった訳じゃない。約束を忘れたわけでもない。ただ、「アマラも生まれ変わっているかも」なんて発想が無かった。馬鹿だな、俺。しっかりしろよ!


 その後、俺たちは前世で会えなくなった後の事や今世での事をお互いに語り合った。話は尽きる事が無く、晩餐の時間も、食後のお茶の時間もずっと話し続けた。ふたりが談笑しているのを見た使用人たちが、信じられない物を見せられているかの様に唖然としていた。


「私、あなたのお墓参りに行ったの」


 ふと、会話が途切れて静寂な時間が流れた後、ゲリエル侯爵・・もといアマラが呟いた。


「そこで願ったのよ。パミドロル国のずいぶん前の王弟妃殿下が前世持ちだったって話を聞いて、私とパトルにも同じことが起こって来世で会えると良いなって」


「そっか」


「その時に、「何故パトルは私を迎えに来てくれなかったの!」って不満を漏らしたの。「私が男だったら、絶対にあなたを迎えに行くのに!」って。それがまさか本当に男になるなんて思いもしなかったわ」


「ふはっ・・・まさか、それで性別が転換したのか?

 ・・・迎えに行けなくて悪かったよ」


「いえ、分かっているの。私たちは騎士だったし、実家の方針や王族の意向に逆らえる状況でもなかった。ただ自分の不満をぶつけただけ」


「そうだな。あの時、出奔してアマラの所に駆け付けるような発想は出てこなかった。騎士の精神を信じ切っていたからな」


「それは私も同じ」


「アマラは・・・幸せだったか?」


「パトルと結婚していた未来の次位には幸せだったわ」


「・・・」


 またふたりの間に静寂が訪れた。


「そろそろ寝る時間だな」


「そ、そうね。ずいぶん話し込んでしまって遅くなったわ。話の続きはまた明日にしましょう」


「今夜は、お前の部屋で寝ていいか?」


「え!? 私の部屋?」


「おいおい、俺たちゃ夫婦だぜ?いつまで俺を客室に寝かせておく気だ?」


「あ!そ、そうね。明日、私の部屋の隣に部屋替えをしなきゃね」


「荷物を動かすのは明日でも、俺の体は今夜から移動できるぜ」


「あ、え、う、で、でも・・・」


「ゲリエル侯爵様の“心に決めた相手”って俺の事かと思ったんだけど、違ったか?俺とはやっぱり1年後には離縁か?」


「ち、違うわ!あ、いえ、違うのは離縁する方で、私はあなたを探していたの。あなたと共に生きる事を夢見てたの!」


「じゃ、問題ねぇな!さ、行こうぜ!」


 俺は立ち上がって、ゲリエル侯爵・・いやアマラの手を引いて立ち上がらせた。

 当主の寝室に向かいながら、俺は尋ねた。


「いつまでもアマラって呼ぶわけにも行かねぇから、アルスランって呼んで良いか?」


「え、ええ」


「俺の事はツェツェって呼んでくれ。親しい人は皆、その呼び方だ」


「ツェリじゃダメ?」


「え?」


「ふたりだけの特別な呼び名が良いわ。私の事はルスで」


「ふふっ。りょーかい、ルス!」


 俺はルスの部屋の寝室までぐいぐい引っ張って行って、ベッドの上にルスを座らせた。ルスは抵抗せずに俺のやる様に身を任せてくれる。


 俺もベッドに膝立ちで乗り上げて、ルスの膝を跨ぐようにすると自然とルスを見下ろす形になる。


「ルス、経験は?」


「女性と閨を共にしたこと?ないわ。ある訳ない」


 大柄で強面のルスが潤んだ瞳で俺を見上げてくる。

 昨日までは可愛げの欠片もない侯爵家当主としか見ていなかったけど、何故かひどく可愛く感じる。

 いまは緊張してぴるぴると震える子犬ちゃんだ。


「今日は俺たちの初夜だな」


「で、でも、男の側なんて私経験がないから上手くできる自信がないわ・・・心の準備が・・・」


「大丈夫、ルスは身を任せてそのまま寝ててくれれば良いから。全て俺に任せておけばいい」


 俺は迷うルスの頬を両手で包み込むと、ちゅっと目元にキスを落とした。


「襲われる準備は良い?」


「は?」


 ルスが驚いたように目を見開いた。


 俺は、にっこりとほほ笑むと、そのままルスの膝の上に腰を下ろした。唖然とするルスの顔を眺めながら、迷うことなく、ルスの上着のボタンを指でつまむ。


「ちょっと待って! 本気なの!? 」


「俺たちは夫婦だぜ?何の問題がある?ルスも男なんだから腹を括れよ」


 焦るルスに構わず、上着のボタンをひとつひとつ外していった。




▲▽▲▽▲▽


 ふたりで生まれたばかりの姿になった。ベッドに横たわったルスが恥ずかしそうに体を揺する。俺はルスの頬をするりと撫でて、顔を近付ける。

 そして、そおっと唇を押しつけた。


「ん…」


 奪うキスではない。誓うような、厳かな口づけだ。

 唇が触れたまま、吐息と共に言葉を紡ぐ。


「ルス、愛してる…」


「っ――!」


 そしてまた唇を押しつけるだけの優しい、涙味の口づけ。

 俺の胸と触れ合ってるルスの心臓が跳ねるのを感じる。俺の心臓もさっきからバクバクだ。

 ルスが両腕を俺の背中に回してきて、ややぎこちなく撫でてくれる。

 ふたりはお互いの唇を温めるようなゆっくりとした長い長い口付けを交わす。

 

 ルスの身体から強張りが解けはじめ、口づけを素直に受け入れる様になってきたのを感じた俺は、ルスの腰をぐいと抱き寄せた。下半身が密着する格好になり、ルスがごくりと息を飲んだ。ルスの性器はとっくに硬く芯を持っていた。

 ルスはそれに気づかれるのが恥ずかしいという様に身じろぎするが、その動きがさらに快感を高める事になると気づいているのか?


 俺は、初めての閨に不慣れな少年に大人が教えるかの如く優しく丁寧に導いてやった。1度気をやって放心したルスに「本番はこれからだ」と告げると、目を白黒させていた。

 恥ずかしがって両手で顔を覆うルスを視姦しながら、ゆっくりと腰を落としてルスのルスを俺の中に飲み込んだ。


 「夜はまだまだこれからだな?」




年齢制限をかけてないのですが、これくらいなら大丈夫かな?


次回がエピローグで完結です


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