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本日もよろしくお願いいたします

 翌日俺は、朝食を頂いた後、ゲリエル侯爵と話をすべく執務室に向かった。


「お約束通り、昨日のお話の続きに参りました」


 そこで、俺が冒険者をやっていて、一晩中、魔獣氾濫(スタンビート)の討伐に参加していたこと話した。

 ゲリエル侯爵は呆れかえった後、何故か怒りだした。


「侯爵夫人が冒険者になるなど聞いたことがない!」


「聞いたことが無いだけじゃありませんか?現にここに居りますし」


「・・・冒険者は辞めてもらう。金なら不自由しないくらいに与えているだろう?」


「いえ、ちょっとした物でもいちいちお伺いを立てないと頂けませんし、殆どの要求は拒否されております。」


「何?そんな筈はない。毎月、かなりの額を支払っているぞ!」


「は?お金を頂いたのは最初の一月だけですし、しかも微々たる金額ですが?」


「どういう事だ?」


「知りませんよ。お優しい誰かが私の代わりにお金を使って下さってるのではないですか?」


「・・・」


「もう、宜しいですか?これから、冒険者ギルドへ行って、討伐の報酬を受け取りに行きたいので」


「いや、まて」


「まだ、何か?」


「クランはどこに所属している?」


「ソロで活動しています。では、」


「ま、まて、まて!」


「はぁ~、次は何ですか?」


「護衛は連れて行っているのか?」


「護衛など、ここへ来る前も、来てからも、一度も付いたことは無いですが?」


「何!? 専属護衛が居る筈だが?」


「知りませんよ。紹介もされていませんし、専属護衛だなんて言葉も初めて聞きましたから」


「どういう事だ・・・」


「はぁ~~~、あのですねぇ、館の主人が関心を示さない放置された、“名ばかりの侯爵夫人”の扱いなんて、そんな物じゃないですか?

 では、こんどこそ御前を失礼いたします」


「・・・」


 俺は、呆然としているゲリエル侯爵の執務室を出て、冒険者ギルドへ向かった。


 冒険者ギルドを訪れると、まだ慌ただしさが残っている様子だった。事後処理が大変なんだろう。被害状況の確認、討伐した魔獣の回収や解体、素材を求めに来た商人との交渉、討伐に参加した冒険者達への報酬支払、侯爵家の文官や武官などの対応も絡んできているだろうしな。


「ああ!パトルさん!良い所へいらっしゃった!パトルさんに仕事があります魔獣の回収と解体を手伝って下さい!」


「ソロの冒険者は依頼を受けられないだろ?」


「だから依頼ではなく、ギルドの臨時職員と言う形で契約をして、仕事をお願いしたいのです」


「期間と報酬は?」


「今日から3日間です。討伐報酬とは別に臨時職員の給与と、平常時に解体して持ち込んだ素材を買い取るのと同じ額で買い取りします。つまり歩合制です。が、数が多いのでかなり良い報酬になると思います」


「疲れてるけど、しゃーねぇな。んじゃ行ってくるぜ」


「お疲れのところ、申し訳ございません。宜しくお願いします!」


 俺は自分が討伐した場所を重点的に回った。

 フォレストウルフ、ワイルドボア、アウルベアー、ケルベロス、ソードディアなど、買い取り金額の良い物だけを回収した。

 本当は全部の素材を採取することが理想なんだろうが、時間がない。ホーンラビット、ナインテールフォックスやポイズンスネークなどの小物は、かかる手間と手に入る報酬の効率が悪い。だから解体もせず穴を掘って燃やして埋める。


 1日目は獲物の回収を優先して行った。『収納』に入れてしまえば素材が痛まないし、屋外に長く魔獣の遺体を放置すると新たに魔獣が集まって来る危険もあるからな。

 膨大な量の魔獣の死体があったが、何とか俺が任された範囲は回収しきったと思う。


 2日目、3日目は早朝からひたすら解体だ。解体にはかなり手馴れている俺でも全ての魔獣の解体が終わったのは2日目の遅い時間だった。

 ギルドに寄ってみると、こんな時間なのにも関わらず職員と冒険者でごった返していた。魔獣氾濫(スタンビート)の影響からギルドが落ち着くにはもう少しかかりそうだ。

 解体素材を提出し、窓口で魔獣素材の買い取り金と臨時職員報酬、討伐報酬を受け取って帰路についた。

 討伐からの4日間、大変だったけどかなりの収入になった。剣を新調しようかな。



 屋敷の門に辿り着いた俺は、屋敷を見上げながら考えを巡らせた。ゲリエル侯爵とはあれから会っていない。俺の帰りが遅かったと言うのもあるし、あっちも領主だから魔獣の氾濫の事後処理関係で忙しくしているのだろう。

 ゲリエル侯爵は冒険者を辞めさせたがっていたが、今まで「好きに過ごせばいい」とか言って放置しておいて今更だよな。

 侯爵夫人として遇する気もない、好きにしていて良いが、自由も金も与えない。こんな理不尽に従う必要はない。庭でお花を愛でて、読書をしたり、刺繍をチクチクやったり、社交をやったり、そんな一般的な貴族女性の様な生き方はできない。

 これはもしや、離婚の時期が早まるのかもな・・・

 まぁ、それならそれで仕方がない。どっちに転んでも俺は俺らしく生きていくだけだ。

 そう決意した所で、門をくぐって屋敷に足を向けた。


 



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