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【書籍化】捨てられ令嬢は錬金術師になりました。稼いだお金で元敵国の将を購入します。  作者: 束原ミヤコ
ディスティアナ皇国復興365日

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錬金術での街の改造計画



 ジャハラさんは私の錬金部屋をしげしげと見渡して言った。


「ここにくる時にハルモニアを飛竜に乗って上空から見下ろしたのですが、海がありましたね、クロエさん」


「最近造りました」


「地形も弄っていいなんて、なんて楽しそう……ではなくて、非常に興味深いことです。クロエさんの独自性に溢れた錬金術は、僕も見習いたいものだと思っていました」


「いえいえ、それほどでもないです……」


「クロエさん、もう、あれはやってくれないんですか? それはもちろん、天才美少女錬金術師ですから! という、あれを……見たかったな」


 ジャハラさんがすごく寂しそうに言うので、若干胸が痛んだ。


「廃業したんです、美少女」


「そうなんですね。残念です」


「クロエさんは、私から見れば十分美少女なのだがな」


 ジャハラさんとラムダさんが顔を見合わせて言った。


「やはり、人妻になってしまったからには、美少女は問題があるということなのでしょうか」


「……ジャハラさん、人妻とか言っちゃ駄目です」


 いえ、確かに人妻なんだけど。

 あらためて言われると照れてしまうわね。そんな人妻こと私の旦那様であるジュリアスさんは、錬金部屋に置いてある椅子に座って長い腕と足を組んで、私たちのやりとりを静かに見ている。

 私がヴァイラスさんと話をしているときはご機嫌が悪いことが多いのだけれど、ジャハラさんとラムダさんは平気みたいだ。


 飛竜愛好家のジュリアスさんは、同じく飛竜愛好家でありリュメネちゃんの育てのお父さんであるラムダさんのことはそう悪く思っていないようだし、ジャハラさんのこともそんなに嫌いじゃないみたいだ。


「ジュリアスさんと結婚したクロエさんは、人妻なのではないですか? 何か駄目でしたか」


「い、いえ、なんとなく……!」


 きょとんとした表情で不思議そうにジャハラさんが言うので、私はふるふると首を降った。

 人妻という単語に反応してしまった私の方が問題があるみたいな感じになってしまった。

 案の定ジュリアスさんじっと、何か言いたげに私を見ている。できればそのまま何も言わないで欲しい。


「クロエ。お前は、俺の妻ではなかったか。それとも、人妻という言葉に何か別の意味が?」


「妻ですけど……! それに特に別の意味はありません! 人妻で盛り上がっている場合じゃなくて、錬金術の話をしましょう、錬金術の!」


 ジュリアスさんが余計なことを言ってくるので、私は話題を変えることにした。

 ラムダさんが口元を押さえて、肩をふるわせて笑っている。


「そうでした。錬金術の話をしましょう。飛竜温泉を造るからには、広大な湖のような浴槽が必要ですね。飛竜用の露天風呂を眺めながら入ることのできる人間用の露天風呂……でしょうか」


「ジャハラ。飛竜を温泉に入れたいと望む者は、飛竜と共に温泉に入りたいと望むだろう」


 ラムダさんに言われて、ジャハラさんは「なるほど、ジュリアスさんもですか?」と尋ねる。


「あぁ。そうだな」


「そうなんですね……」


 私はヘリオス君と混浴しているジュリアスさんの姿を想像した。

 すごく幸せそう。ジュリアスさん、今までにないぐらいに幸せそうな表情を浮かべている。私の想像の中で。


「飛竜は神竜シャガラ様の子供たちのようなものらしいので、つまり神の御使いですね。混浴は、なんだかすごくご利益がありそうな感じがします」


「そうですね。飛竜の持つ魔力が湯に溶けだして、肌が艶々になりそうですね」


 私の言葉に、ジャハラさんが同意してくれる。


「確かに。飛竜と混浴できる露天風呂と、飛竜を飼育していない人たちも楽しめる露天風呂と、二か所つくりたいですね。お湯につかる飛竜の姿を見ることができるとか、最高ですね……最高に可愛いです」


 私は湖のようなお風呂に沢山の飛竜がつかっている姿を想像した。

 ジュリアスさんとラムダさんも一緒に露天風呂に入って幸せそうにしている。とてもいい。


「つまり、飛竜温泉のために土地を好きなだけ掘っていい、ということですね。そして湯脈を探り当てる、と。好きなように土地を弄っていいということですね」


「ええと、その、常識の範囲内で」


「……常識の範囲内」


 ジュリアスさんが私をじっと見ながら呟いた。再び何か言いたげよね。私は常識の範囲内で頑張ってる。と、思う。多分。


「そのほかに、遊園地と、変形する城もつくるつもりなんですけど、変形するよりは、空に浮かべたいなと思っていて」


「遊園地! 空に浮かぶ城!」


 ジャハラさんがやや興奮気味に言って、瞳を輝かせた。

 それから、こほんと、咳払いすると、いつもの落ち着きのあるジャハラさんに戻った。


「それはとても、いいですね……浮遊する城。浮遊自体にはあまり意味はなさそうですし、空を飛ぶ機能、とても無駄、という感じがしてとてもいいです。無駄こそ心の余裕といいますし。飛ばしましょう」


「はい、飛ばしましょう……!」


 ジャハラさんはプエルタ研究院が不遇だった数年間、資金繰りのために錬金物を錬成して売りさばいていたようだから、錬金術師でもあるのよね。

 やっぱり、同じ錬金術師。意見が合う。

 ラムダさんがにこにこしながら「こんなに楽しそうなジャハラは久々に見たな」と言った。


 

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