76. 魔法のランプ 5
天井をぶち抜いて現れたのは、絨毯に乗った桔梗とギアナ、それから王女!?なんで王女様がここに?というか、「我、参上」ってどういう登場の仕方だよ。
「随分と苦戦しておるな」
桔梗が近づきながら話しかけてくる。
「アラジン!ああ、アラジンが」
バドゥール王女が意識を失ったアラジンに縋り付いている。
「アラジン!?え?魔神?ここどこぉ」
王女の側でギアナがあわあわしている。
「バドゥール王女・・・さま。アラジン・・・」
ん?魔神ジーニの様子がおかしい。考えられるのはカンザスの意識が表に出てきていることか。
「グググガガァァ」
元々王女に対する嫉妬で選ばれたガンザスの目の前にアラジンに縋り付く王女様。そうなれば、嫉妬が増幅されるのは自明だろう。つまり、魔神ジーニの纏うオーラが倍増している。桔梗〜。状況を悪化させてどうすんだよぉ。
「ほほう、アキラよ。そっちは任せたぞ。我はアラジンを回復させよう。時間を稼ぐのだ。」
アサルトライフルになった卯月を構え、魔素を充填していく。魔神ジーニを狙い引き金を引き絞る。卯月から魔素弾が放たれる。魔神ジーニは右手を上げ、魔素を放つ。俺の魔素と魔神ジーニの魔素が衝突し、均衡する。
「はぁぁぁぁ」
俺はより魔素を卯月に込めていく。
「おぉぉぉ」
魔神ジーニも魔素を強める。魔素の押し合いが続く。
一方、アラジンの回復させている桔梗は、若干困っていた。
「ふむ、過剰な魔素で体が蝕まれておる。これは回復魔法ではなんともならんぞ」
「黒いの。お主でも、過剰な魔素を抜かねば、回復させられぬか」
「ああ、狐の。回復魔法は、魔素を与えて体の回復力を高めるのが原理だ。今のままでは、回復魔法がアラジンの体を蝕んでしまう」
「そうじゃな。どうしたものか・・・」
この世界の2大神獣の九尾の狐とブラックドラゴンでも対応が難しいのが魔素の過剰共有による体の崩壊だ。回復させようにも魔素による回復魔法が効かないのだ。
「うーん、魔素が邪魔なのかぁ。そうだ!」
「ギアナよ。何か思いついたのか?」
「ソラちゃんに魔素を食べてもらったらどうかな?」
「「!! それだ(じゃ)!!」」
「それじゃ、ソラちゃんよろしく」
「いいよぉ。ソラ食べるぉ」
ポムポムポムとソラちゃんがアラジンの体を蝕む魔素を食べていく。その後、桔梗が回復魔法をかけるとボロボロだったアラジンの体が元に戻っていき、目を覚ます。
「う、ここは?」
「意識が戻ったようじゃな」
「アラジン!!」
すかさずバドゥール王女がアラジンに抱きつく。それを見た魔神ジーニの放つ魔素の圧が上昇する。拮抗していた力が一気に押し込まれる。くっ、耐えきれない。
ズドゥガーーーン!
押し負けた俺は、魔神ジーニの魔素の爆発で吹き飛ばされる。魔神ジーニは王女に向かって襲いかかる。その右手を桔梗が掴む。
「ふん。我の前でその攻撃は悪手だぞ」
「お前は・・・ブラックドラゴン」
「そのくらいはわかるか・・・。お主の相手はあっちの小僧だ」
桔梗が俺に向かって魔神ジーニを投げつける。フラフラと立ち上がった俺に魔神ジーニが投げ飛ばされてきた。ぶつかったはずみに柔らかいものが俺の顔に押し付けられる。慌てて押しのけ距離をとる。
急に魔神ジーニの力が上がった。やはり、ガンザスの王女への嫉妬が魔神ジーニを強化してしまうようだ。
換装 如月
起動
俺は武器化した如月の忍者刀を構える。それを見た魔神ジーニが魔素のオーラで人差し指を伸ばした右手を覆う。まさかと思うけど、如月を人差し指で受けるつもりか?どこのスーパー戦闘民族だよ。
瞬脚で魔神ジーニに肉薄し、如月を振るう。魔神ジーニの人差し指で如月を受ける。まじかよ。指一本で如月を受けやがった。超高速で動き回り、剣撃を繰り返す。撃ち合うたびに火花が散る。嫉妬の魔素を受け入れた俺と、魔神ジーニの速度はほぼ互角。それに、俺の体はボロボロだ。そろそろ決着をつけないとジリ貧なのは俺のほうだ。一旦距離をとって如月を構える。
「葉隠流忍術、雷遁」
俺は、如月に雷遁を纏わせる。これで一気に決める。魔神ジーニは雷遁を見て少し驚いた顔をしたが不適な笑みを浮かべる。油断してくれてればそれでいい。
「雷遁斬り」
俺の雷遁斬りを受けた魔神ジーニの右腕が宙を舞う。その右腕から血が吹き出す。
「ぐ、まさか腕を切られるとはね」
「なぜ、腕から血が・・・」
魔神ジーニは魔素によって体が出来ているはずだ。血が吹き出すはずがないんだ。
「おい、黒いの」
「なんだ、狐の」
「あいつの体はガンザスのものなのじゃ」
「ガンザスとは?」
「え、ガンザスさんなの?あの魔神」
「そうじゃ、ギアナよ。今のまま魔神ジーニを倒せば、ガンザスも死ぬであろうな」
「なんだって!ガンザスが魔神に」
アラジンがつかみかかる勢いで前に乗り出してくる。
「まずいな。アキラはガンザスを殺すことはできまい。そうだ、狐の。アラジンが呼びかけて、ガンザスを目覚めさせれば我らの力で引き剥がせそうではないか?」
「悪くない。できそうじゃ」
「アラジンよ。ガンザスに全力で呼びかけよ」
「そういうことで、アキラよ。少し時間稼ぎをするのじゃ」
今の魔神ジーニはガンザスの体を乗っ取っている。そのため、攻撃が通るとガンザスの体が傷つく。
「ガンザス。聞こえるか?俺だ、アラジンだ」
魔神ジーニがピクッと動く。
「ガンザス。目を覚ませ、ガンザス」
「うむ、少しは効いておるか。だが目を覚ますほどじゃないか」
「ガンザス。小さい頃から一緒にいたお前と離れるなんて俺には耐えられない。頼む目を覚ましてくれぇ」
・・・・・・・・・
・・・・
「ア・ラ・ジ・ン・・・」
「ガンザス。目を覚ましたのか」
魔神ジーニの輪郭が揺らぐ。
「黒いの」
「ああ」
師匠と桔梗が両手をあげて魔素を操作して、魔神ジーニとガンザスを分離する。
「あぁ、体が」
「アキラ、今じゃ」
俺は、アラジンが呼びかけ始めてから忍者刀に魔素を溜めていた。溜まった魔素を圧縮し、研ぎ澄ませていく。しかし、魔神ジーニを消滅させるにはまだ足りない。
「桔梗、制限解除だ。」
「その体では保って10秒だぞ」
「構わない」
制限解除2nd
桔梗のかけた制限を解除すると、魔素が溢れる。魔素制御の精度も2倍に跳ね上がる。キーーーーンという高周波を放って如月に纏わせ溜めた魔素が薄皮一枚にまで圧縮され、青白い光を放つ。ピキっという音と共に如月が悲鳴をあげる。俺の体も溢れる魔素で血が滲み始める。
『残り10秒です』
地面を蹴って加速する。魔神ジーニが認識する間もなく如月を振るう。袈裟懸けに切り払い、逆袈裟できりあげる。
『残り5秒です』
とにかく、魔神ジーニを切り刻む。俺の体から血がさらに吹き出す。
「うらぁ」
『残り1秒です。アクセルの緊急停止します』
魔神ジーニが消え去るのと、メーティスさんに強制的にアクセルを解除されるのは同時だった。俺はそのまま、意識を手放してその場に倒れた。




