74. 魔法のランプ3
魔神ジーニの速度は俺をわずかに上回る。如月の忍者刀では捉えることは難しい。気配察知を展開。集中・・・集中・・・集中。
「そこだ」
抜刀一閃。気配察知で魔神ジーニの現れる場所を斬りつける。
切った感触がない。
しかし、目の前の魔神ジーニが右脇から左肩にかけて切り裂かれている。
「く、か、まさか・・・私が切られちゃうなんて・・・」
「ふっ!俺をみくびりすぎたな。目に頼らなくても、お前を捉えることはできる」
魔神ジーニが目の前でバラバラに崩れ落ちている。あっけない。これで魔神ジーニを倒した・・・のか?
「なんてね。キャハ。勝ったと思った?思った?そんなわけないじゃん」
後ろから魔神ジーニの声がした。
振り向きざまに忍者刀を振り抜こうとするが、それよりも早くジーニの拳が背中に突き刺さる。
「ガハッ」
完全に遊ばれている。しかし、気づいたことがある。気配察知で魔神ジーニは急に現れた。すなわち、魔神ジーニはただ高速で移動しているわけではないということ。瞬間移動が組み合わされている?気づいたから対応できるかというとそんなことはないが、少なくとも知らないよりはマシだ。
魔神ジーニがまた姿を消す。俺は、気配察知を最大展開し、全身全霊で魔神ジーニの現れる場所を探る。後ろに現れる気配を感じ、忍者刀を振り抜く。
「ハズレ」
魔神ジーニの蹴りが鳩尾に突き刺さる。
「ぐはっ」
「君。ちょーよわ」
魔神ジーニが殴る、蹴る、殴る、殴る。一撃一撃はそれほど強力ではないが、手数が多い。
「ほら、ほら反撃してこないの?・・・・ほらぁ」
俺は体を縮めて防御を固め耐える。魔神ジーニの最後の蹴りで吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。進出鬼没の攻撃ラッシュに反撃の隙がない。というか、反撃しても幻影のように消えてなくなる。何か、きっかけが欲しい。
「アキラよ、ジーニに普通の斬撃は効かぬ。奴の体は魔素でできておるのじゃ。好きに分散、収束ができるのじゃ」
なるほど、瞬間移動ではなく分散と収束ね。分散している時は気配も分散されるから消えたように感じていたのか。つまり、魔神ジーニは魔素が集まって形作られているということ。すなわち、師匠の分体と同じようなもの。ふむ、なるほど。そういうことか。魔素でできているから分散と収束ができるわけで・・・・で、どうやって倒せと?わからん!
ともかく、今、俺の後ろは壁だ。ならば、攻撃してくるのは正面。気配も正面に集まってくる。姿を現した瞬間を狙って抜刀しようとするが、先ほどの魔神の一撃が効いており、痛みで一瞬体がこわばりタイミングが一呼吸遅くなった。くそ、しまった!これでは魔神に躱されてしまう。
「ぐふ」
あれ?手応えがあった。そういえば、一呼吸遅れたことで、偶然魔神ジーニの攻撃に対してカウンタータイミングになった。思えば、魔神ジーニの攻撃は俺に当たっているわけで、そのタイミングであれば攻撃が通る。そういうことか!
換装 弥生
起動
レンズを17−50mm F4に交換し武器化する。俺の両手にバンテージが現れる。魔神ジーニが素手で殴ってくる速度に対して、刀では振り遅れる。だから、こちらも格闘術で対抗する。
「まずは攻撃を当てないとな」
気配察知を最大展開。魔素の循環速度を限界まで引き上げ、思考加速で引き伸ばされた時間の中で魔神ジーニの攻撃を待つ。目の前に魔神ジーニの魔素が収束していく気配を感じる。目の前に魔神ジーニが現れ右ストレートを放ってくる。思考加速でギリギリ捉え、その右ストレートにカウンターを叩き込む。魔神ジーニの右ストレートが俺の顔面にヒットするが、俺の左拳も魔神ジーニの顔面を捉えている。
「当たる!」
これであれば、こちらもダメージを喰らうが、あちらにも確実にダメージを与えられる。魔神ジーニの口が歪む。これは、・・・・笑っている?魔神ジーニが狂ったように殴りかかってくる。ラッシュと言っていいほどの拳の嵐が襲いかかってくる。
「楽しい、楽しい、楽しいよ」
俺は魔神ジーニの攻撃の8割に対してカウンターを叩き込む。速度は若干魔神ジーニが上回っているので2割ほどの攻撃はそのまま受けている。魔素で体を強化しているが、魔神ジーニの攻撃は確実に俺の体力を削っていく。それでも、魔神ジーニの体力もだいぶ削ったと思う。
「はぁ、はぁ」
「どうしたの?もっと、もっと楽しいことしようよ」
「ああ、そうだな。再開だ」
葉隠の里でのダーシュの修行は、体力と気力が尽きてからが本番だった。俺は、自分が笑っていたことに今気づいた。まさか自分が戦闘民族だったとは気づかなかった。もうひとつ気づいたことがある。カウンターを当てるほど、魔神ジーニの速度が少しずつ遅くなっている。
『ユニークスキル 撮影者の武器は魔素を吸う力があります。』
メーティスさん。解説ありがとう。つまり、当てるほど、魔神ジーニの魔素を取り込み、弱体化させていけるということだろう。そして、吸収した魔素は俺の力として魔素の循環に取り込めそうだ。試しに、少し取り込んでみた。
「ウグゥ」
これはいかん。強烈なめまいと吐き気に襲われた。その隙を見逃す魔神ジーニじゃない。5発ほど喰らってしまった。しかし、取り込んだ魔素のお陰で身体の傷が回復したみたいだ。
「どうしたの?私はまだイってないよ」
「俺の固いものをぶち込んでやるよ」
「いいねぇ。そういうのちょー好きよ」
「だと思ったよ」
俺は、魔神ジーニに殴りかかる。魔神ジーニは分散せずに受ける。ここからはカウンターを当てる必要すらなく、純粋な殴り合いだ。
「オラオラオラオラオラオラ」
「激激激激激激激激激激激激激」
俺の攻撃が当たるたびに魔神ジーニの速度が少しづつ遅くなる。そして俺の速度が上回った。今だ。
「葉隠流体術 狐砲」
魔神ジーニの鳩尾に添えられた拳から内部を破壊する衝撃を加える。
「ぎぃゃゃゃぁぁぁ。」
魔神ジーニが叫び声を上げて腹部から崩れ分散していく。
「・・・・やった・・のか?勝ったのか?アキラ」
おぃぃぃ!ガンザスぅ。お前なんっつーフラグ立ってんだよ。




