73. その頃の王宮では
時はアキラが桔梗を呼ぶ少し前に遡る。
王宮のバドゥール王女の寝室で桔梗とギアナが状況についてバドゥール王女を交えて整理していた。
「まさか、私みたいな庶民が王宮の中に入れるとはね。びっくりだよ」
「我がバドゥールに言っておいたからな」
「貴方がギアナですか?私がバドゥールです」
「は、王女様!ギアナです。よろしくお願いします」
「それでは、ギアナ、リーカ教団について何かわかったか?」
「ええ、リーカ教団の司祭が広場で説法をしていました。各地の龍脈から出ている魔素が各地で魔素蓄積病を生み出していると言っていました。そしてその薬をリーカ教団が作ったと。多分王女様の病についての薬もその薬かもしれません」
「ふむ、そやつが言っていることは間違っておらぬな。確かに龍脈から魔素が溢れている。そしてバドゥールの病もそれに類するものだ」
「ええ!?そうなんですか?私はてっきりリーカ教団が自分で病を広めて、薬で治して信者を増やしているものだと思ってました」
「なぜだ?」
「だって、世界が滅ぶとか、自分たちだけは助かるとか怪しすぎるっていうか」
「うむ、奴らだけが助かるというのは知らぬが、世界が滅ぶというのはあながち間違いでもない」
「でも、街のチンピラがそばに寄っていって話してましたよ?」
「そのチンピラのボスか何かが魔素蓄積病になったのかもしれぬな」
「あー。そういう・・・・。でも、そのリーカ教団の司祭様はバドゥール王女様の病気は治せなかった」
「その通りだ。そしてその魔素蓄積病の薬のせいで魔素の色がわかりにくくなっておったが、ようやくわかった」
「あの、私は普通の魔素蓄積病ではないのですか?」
「リーカ教団の司祭が魔法のランプが原因だと言っておっただろう?魔法のランプの中には、魔神がおる。その魔神の魔素“嫉妬“色がお主の病の原因だ」
「“嫉妬“ですか?」
「ああ、“嫉妬“だ。魔神はお主に“嫉妬“しておるのだ。元来“嫉妬“を抑えるのが魔神の役割なのだがな。暴走しておるのやもしれぬ」
「それでは、どうすれば私の病を治せるのでしょうか?」
「魔神を正気に戻すしかないな。・・・ん、ちょっと待て」
(桔梗、聞こえるか?)
(我を呼ぶとは、緊急事態か?)
(アラジンが見つかった。砂漠のダンジョン。砂塵の墓所だ)
「ちょっと待て、いま ギアナと合流しておる。スピーカーにするからちょっと待て」
「アラジンを発見したが魔神の魔素にやられて死にかけている。桔梗の助けがいる。なんとかダンジョンまで来れないか?」
それを聞いたバドゥール王女が叫ぶ。
「アラジン!アラジンがいるのですか?死にかけて・・・・。桔梗さんお願いです。アラジンを助けてください」
桔梗にふらつきながらもしがみつくバドゥール王女
「わかっておる」
アキラにも応えねばならないな。
(今からそちらに向かう。我が行くまでアラジンに応急処置をしておくのじゃ。心臓マッサージと人工呼吸をな♡)
「さて、緊急事態だ。我がドラゴンの姿になって空を飛べば一瞬でダンジョンに着くが、流石にそれは不味かろう。バドゥールよ何か空を飛んでおっても不思議でないものはないか?」
「鳥か絨毯くらいでしょうか?」
「え?絨毯って空飛ぶの?」
ギアナが驚いている。
「全部というわけではありませんが、アラジンがダンジョンで見つけた絨毯が空を飛べるアーティファクトだったようで、何度か乗せてもらったことがあるんです」
「つまり、アラジンの絨毯が飛んでいるところを見たものはそれなりにおるということだな?」
「はい、有名でしたから」
「なら、絨毯で決まりだな」
「はい!桔梗さん」
「なんだ、ギアナ」
「アラジンの絨毯が特別であって、今はその絨毯はないのではないでしょうか?」
「ふふふ、我を誰だと思っておる。他国には柱を投げてそれに飛び乗って空を移動する武術の達人がおるのだぞ。絨毯で移動するなど、我にかかれば造作もない」
「そ、そうなんですね」
「桔梗様、早くお願いします」
やはり、人間とは面白いものじゃ。
少しは回復したとはいえ、立つのもやっとであったバドゥールが、すごい力で引っ張っておる。愛するものを助けたい一心というやつなのだろう。
我も愛を知りたいものだ。
「では、皆絨毯にのれ」
3人が絨毯に乗ったところで、我の魔法で絨毯を浮かせる。
「では、いくぞ」
「桔梗さん。窓があります!」
「気にするな。いくぞ」
豪快に窓を突き破り、3人を乗せた赤い絨毯が空を飛びダンジョンへ向かって行く。
眼下では、宰相のジャファルが大慌てで叫んでいる。
「王女様、王女様が攫われた。衛兵、追え、追うのじゃ〜」
「ジャファル様。お気を確かに!!」
「また、ジャファル様がお倒れになられたぞ。医務班を呼べ」




