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42. 来客

 戦闘訓練を始めて1ヶ月ほど経ったある日昼下がり、村の入り口が騒がしくなった。


 この静かなヴィリジアンヴィレッジで騒ぎが起こるのは、パン酵母で作ったパンを皆で試食した時以来の出来事だ。


「いいから出せって言ってんだろうが!」


「どこのどなたか存じませんが、いきなり来られて世界樹の雫を渡せともうされましても・・・」


 村長のドルフさんが対応に当たっているが、ガラの悪い赤毛の男が喚いている。

 腰にはロングソードが下がっている。プレートアーマーを装備している。ゲームなんかでは戦士系のジョブっぽい。装備自体はあまり特徴がないため、騎士ということはないだろう。


 その隣には、ローブを纏い、ハテナマークのような杖を持った壮年の男、背後に軽装にダガーを構えている盗賊のような男、そして、長髪の黒髪を一つにまとめた侍。この四人を前面に、背後にはフル装備の戦士がざっと20名ほど。


 前面に出てきている四人は冒険者と考えるべきだろう。

 後ろの戦士達は、装備が揃っていることから、どこかの兵士のような雰囲気である。


 彼らの目的は、世界樹の雫であるようだ。


「いいか、俺たちはな、Aランク冒険者パーティ 『ブラック黒狼』だ。お前たちがエリクサーを上回る回復薬“世界樹の雫“を持っていることはわかっている。それを俺たちに渡せば、痛い目をみることはない。後ろの奴らを見てみろ、奴らはヘリアーレイク王国に使える精鋭の兵士たちだ。こんな村を滅ぼすのはわけないというのは見てわかるだろう?」



 おう、ブラック黒狼。馬から落ちて落馬するシステム。こいつら馬鹿だ。




「ええ、ですから、世界樹の雫は一本5,000G(ガウス)でお譲りできます」



「それがたけぇっつてんだろ。あんたらを殺して奪うことだってできるんだぜ。ただで渡すだけで生き残れるんだ。安いもんだろ?」


 おーおー。テンプレ的なあれだ。あいつ死んだな。


「なんじゃ、騒がしいぞ」


 師匠と師匠に抱えられた俺登場。


「おいおい、えらく別嬪が出てきたな、おい小僧。女に抱えられて情けねぇなぁ。ハッハッハ」


 俺は、魔力操作訓練5ループが終わり、魔力切れ状態だった。

 そのまま師匠の野次馬根性に火がつき抱えられてきたところだ。

 どさっと床に落とされる。


「師匠、もっと優しくぅ」

「うるさいのじゃ」


 状況を整理すると、ギアナが世界樹の雫の情報を持って神の頂を出たのが約1ヶ月前で、その情報を聞きつけたヘリアーレイク王国が冒険者に依頼して奪いに来たというところだろうか

 。

 それにしちゃ、兵士20人も一緒とは解せぬ。


「では、お主」

「ロシナンテだ」


 こいつ、美女には名前を呼んでほしいタイプだ。


「ロシナンテとやら、お主が小僧と呼んだこやつと戦って勝てたら世界樹の雫を好きなだけ渡してやろうではないか。どうじゃ?」


 そうなりますよね〜。ここに連れてこられた時点でわかってましたよ。


「はっ、乗ったぜ」


「そちらは、後ろの兵士を合わせて全員でかかってきても良いぞ。もちろん、妾もそこのドルフも手を出さぬでな」


「ちょ、師匠」


 Aランクの冒険者って言ったら、大体の物語でランクの上の方の人たちですよ?その人達+20人の兵士 VS 魔力切れの俺。無理無理無理無理。


「アキラよ、こやつらを殺してもつまらぬから、お主は素手でやるのじゃ」


 Oh。さらに縛りが追加されました。


「ば、馬鹿にしやがって、小僧、死んでも文句言うなよなぁ」

 そう言ってロシナンテはロングソードを抜き放ち、俺に向かって構えた。


 え、俺?まだ、地面にへばりついてますけど何か?

 もう少し、魔力が回復しないと立てない状態です。


「いつまで休んでおるのじゃ、立つくらいの魔力は回復しておろう」


 バレてら。


 仕方ないので、立ち上がった。

 まだ、軽く動く程度しかできないが・・・


 ロシナンテがこちらに向かって走ってくる。上段からロングソードを振りかぶり、上から下へ切り下ろす。目にも止まらぬ斬撃繰り出される。普通の状態なら見切ることもできずに切られていただろう。


 しかし、俺は、少し回復した魔力で魔素を循環して身体能力を強化している。動体視力上がっている上に思考加速もできている。そして、ダーシュの攻撃に比べれば月とスッポンだ。魔力の回復を優先して、回避に専念する。


「よ、ほっ、ほい」

 ロシナンテが繰り出す斬撃を全て避ける。

 当たらなければどうということはないのだ!


「くそ、ちょこまかと」


「うーん、これがAランクか」

 煽る気なんてさらさらないんですよ?ただの感想が口から漏れただけで。


 この時点で、意外と余裕かもと思ってしまった。





「テメェ、調子に乗るんじゃねぇ。くらえ、狼牙ファング」





 ネーミングセンス!


 俺は、迫ってくるロングソードの腹をそっと拳で押し除ける。


「はぁ、はぁ、俺の狼牙ファングを」


 魔力が2割ほど回復したところで、魔素の循環のレベルを引き上げる。

 足に魔素を溜めて、弾くように踏み出す。


「葉隠流体術 瞬脚」


 一瞬にしてロシナンテの懐に入り、流れるように魔素を右手に移して、かるーく腹部を殴る。

 ロシナンテが吹っ飛んだ。自分でもびっくりするくらい吹っ飛んでいった。

 ロシナンテは白目を剥いて伸びている。よかった生きている。

 これじゃ強すぎるか、気をつけよう。


「よくもロシナンテを!お前ら、全員でかかれ!」

 盗賊らしき冒険者の号令で、兵士達が一斉に動き出す。

 さらに、盗賊、侍が先頭に立ち切り掛かってくる。

 魔術師は詠唱を開始している。


 盗賊と侍のスピードはロシナンテよりも速かった。

 短剣を投擲してこちらの動きを牽制、その隙に近づいてきた侍の抜刀切り上げが迫る、それを躱すと盗賊の蹴りが飛んでくる。2人が飛び退くと、そこに魔術師のファイヤーボールが飛んでくる。


 俺はスキルスロット3から氷魔法を発動させ、ファイヤーボールを打ち消す。


 3人の連携は取れているけど、いかんせん、遅すぎる。

 瞬脚で近づき、首筋に手刀を叩き込んで眠らせる。


 兵士達がドタバタと集まってくるが遅い。

 メイン武器は槍。それぞれが一斉に俺に向かって突きを繰り出す。

 槍は避ける隙がないほどの密度で襲ってくる。速度はないが、集団での強みを活かしている。


 バックステップからの瞬脚を使って上方への跳躍。

 1人の兵士の後ろに周り、背中を軽く殴打する。

 その兵士はよろめいたが、鎧が思いの外固く、力加減が難しい。

 やりすぎると多分死ぬ。


 ここは、ダーシュに習ったアレで行こう。


「葉隠流体術 鎧通し」


 手のひらに魔素を溜めて、鎧の中に魔素を通し波紋を広げ衝撃で気絶させる。

 攻撃の通らない固い魔物に有効な体術だ。もちろん、武器に応用することも可能だ。


 軽く軽く、やりすぎないように、丁寧に魔素を絞り、1人ずつ倒していく。

 なんとか全員殺さずに勝てた。


「遅いのじゃ。しかも、に、魔法を使ったであろう。減点じゃ」


 怒られた。解せぬ。


 全員を葉隠流捕縛術で縛り上げる。


 それで、最後にオドオドとした30代過ぎくらいの男が残っている。

 彼は、最初から、「皆さん、穏便に、穏便に」「ダメですよ」「ああ、私はどうしたら」と小さな声でつぶやいていたので、とりあえず残しておいた。


 それにしても、Aランクの冒険者パーティがこんなに弱くていいのだろうか?

 俺なんてダーシュからまだ勝負で一本も取れていないのに・・・


 これは、彼から詳しく事情を聞かねばならないな。

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