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43. ベラド=アスタリア

 結論から言うと、諸悪の根源は世界樹の雫と世界樹の宝石をトリプレットデザートで広めようとしているギアナだった。

 いろんな意味で・・・




 戦闘とも言えない捕縛劇の後、俺たちは、戦闘の最後に残ってぶつぶつ言っていた男性から事情を聞くことにした。


「申し遅れました、私の名前は、ベラド=アスタリア。ヘリアーレイク王国国立研究所で神忌の地“天獄魔封域”の研究を行っております。この度は、会話の場を設けていただきありがとうございます。また、彼らを止めることができず、大変申し訳ありません」


 シンキノチ テンゴクマフウイキ? 聞いたことのない名前が出てきた。


「ちょっと待って、その天獄魔封域とは?」

「それは、この場所のことでございます」

「この村?」

「いいえ、深緑の隠れ里、葉隠のことではございません。この地域一帯の名称です」


 神忌の地 天獄魔封域 = 神の頂

 深緑の隠れ里 葉隠 = ヴィリジアンヴィレッジ


 ということらしい。

 なんかしっくりくる。葉隠流 短剣術とか言ってたし・・・


「そ、そうですか。それで、なぜこの場所に?」


「我々は、前人未到の地、天獄魔封域の調査に来たのです。ヘリアーレイク王国で、伝説で謳われておりました深緑の隠れ里で“世界樹の雫“という霊薬が手に入るという情報を手に入れました。こちらがその“写真“というものであります。王国で世界樹の雫を手に入れよと王命が下り、天獄魔封域の研究をしていた私に白羽の矢が立ったのです」


 つまりは、ギアナが方々で宣伝してくれた効果が巡り巡ってヘリアーレイク王国へ伝わり、彼がここに派遣されたということだね。


「まさか、ここが伝説の忍者ハンゾーの生地“葉隠“とは思いもよらず・・・。

 ブラック黒狼の四人と兵士たちも、ここに来るまで、死闘のくり返しで気が立っておりました。そして、ダンジョンを抜けた先に広がる天獄魔封域は文献にあった強力な魔物の跋扈する魔境ではありませんでした。そのせいで、この村もまた、葉隠だとしても、文献にあるような強者の集まる村であるはずかないとブラック黒狼のもの達が言い始め、そして、世界樹の雫を奪い、売り払って大金を得ようと。私は止めたのですが、力及ばず。本当に申し訳ありません」


 簡単にいうと、道中のダンジョンの中はエビルサーペントなどの強力な魔物に襲われ、這々の体でたどり着いた天獄魔封域(神の頂)は平和そのもの、魔物は最弱のホーンラビット程度。調子に乗った冒険者たちと欲に駆られた兵士たちが暴走したと。


 あの冒険者達は頭悪そうだったもんな・・・特にロシナンテ。


「事情はわかりました。それでベラドさん、この後どうされるおつもりですか?」

「わ、私ですか?もし、もしよろしければ、天獄魔封域の調査をさせていただければと・・・」


 さすがは学者だ。命よりも調査優先。そういう人嫌いじゃないですよ。


「ほう、この村に戦いを挑んでおいて、都合の良い言い分じゃの。その方の調査とやらを許したとして、我らのメリットはなんじゃ?まさかただでとは言うまい?」


 おお、師匠が悪い笑顔をしている。


「ひっ。も、もちろん、私のできることであれば、なんでもいたします」





「うむ、この村では、下界の情報が足りぬ。お主の知識をこの村のために役立ててもらう。さすれば、天獄魔封域の調査拠点としてこの村への滞在を許可するのじゃ」





「その程度で良いければ、こちらからお願いしたいくらいです。ぜひお願いします」


「それから、お主の共のものどもじゃが、奴らは殺されても文句の言えぬ立場じゃ。こちらの決定に従ってもらうが、構わぬな?」


「は、はい。それはもちろん」


「うむ。ならば良い」


「では、お主はドルフのもとで過ごすが良い」


 こうして、ベラドがドルフ村長の監視の元、村で過ごすことになった。





 ベラドが部屋へ案内した後、俺は、どうしてもドルフ村長に聞きたいことがあった。

 この村、いや、里についてだ。


「ドルフさん、深緑の隠れ里 葉隠とはどう言う意味なのですか?」


「アキラ様、お伝えできておらず、誠に申し訳ありません。ヴィリジアンヴィレッジは、数年前まで、葉隠と呼んでおりました。しかし、里の過疎化が進んだある日、ギアナが里の名前を変えるべきだと申しまして。隠れ里はやめて、普通の村として人を呼び込むことが必要だと。また、葉隠は今時ではなく流行らないと。それで、深緑からヴィリジアンヴィレッジという名に変えることとなったのです」


 村の名前を変えてた犯人はギアナだった。


「もう一つ、俺が習っている魔法は忍術であってます?」


「察しておられたのですね。これもギアナのアイディアなのです。・・・・・この村が普通の村になるようにと、彼女なりに懸命に考えた結果なのです」


 ああ、ギアナは村の未来を変えようと努力している。できることはなんでもしようとしているのだろう。その努力の方向がちょっと違う気もするが・・・


 やはり、村が活気を取り戻すためには、この地でしか体験できない経験をいかに作り出すか。食事、観光、娯楽。日本では、忍者の里は忍者体験が子供に人気の観光地だ。そっちの方向の方が、普通の村を目指すより盛り上がりそうな気がするけど・・・。今度ギアナが帰ってきたら提案してみよう。


 そして、ベラド達が来たことで、村の最大の問題点がわかった。


 それは




 一般人が来ることができる道がない。




 最大にして最悪の問題点。人が来れなければ村の復興などは夢のまた夢。


「この場所は、普通の人が来るには、ちゃんとした道か、ダンジョンのショートカットが無いと無理か・・・」


「それでしたら、楓様の転移陣を使うのも一つの方法かと」


 おっと、心の声が漏れてたか、ドルフさんが教えてくれた。


「その転移陣は、誰でも使えるのですか?」

「はい、多少の忍術の心得があれば、誰でも」


 つまり、ヴィリジアンヴィレッジの者しか使えないということ。


「簡単にこれる道はある。しかし、誰でも使えるものではない。ということは、お金が稼げるということになる。村への入場料という感じか。いけるな。後は、村の整備と道の整備ができれば・・・」


 ぶつぶつと言っていると、


「それでは、ここに来たもの達の使い道が決まったの。村の整備と道の整備じゃ。ガゾに指導させれば良かろう。それで衣食住が保証されれば、文句は言うまい。ちと、妾が話をつけてこようかの」


 あれは、絶対、話をするのではなく、脅してくるだな。

 Aランク冒険者パーティ ブラック黒狼 頭は悪そうだが、流石に師匠の前で悪態をつくことはしないだろう。



 ・・・・・・・・



「ぎゃぁぁ。わかった、従う、従うから」


 家の外から叫び声が聞こえる。

 だめだ、脳筋馬鹿だったようだ。土木作業には役に立つことを期待しよう。

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