【第十四章番外:恋銃癖のハーレム生活】
ナレーション:
「……おや? 諸君、本当にクリックしたのかい? この変態にそこまで興味があるとはね。
いいだろう、分かっているさ。だが始める前に、この免責事項に同意してもらおうか。
以下は――第十三章の終盤から第十四章にかけての、別キャラクター視点による物語である。
……つまり。
君たちが読みたがらないであろう部分は、私が気を利かせてスキップしておいたよ。
応援してくれてありがとう。では、始めようか……」
窓から差し込む陽光が、華麗な室内を照らし出す。最高級の柔らかなベッドの上では、ハイエルフの男が髪を乱して横たわっていた。その両脇には、毛布から覗く冷たい金属管と、その奥に刻まれた精緻なライフリング(腔線)が寄り添っている。
彼はゆっくりと目を開け、横を向くと、幸福そうに微かな笑みを浮かべた。
「……おはよう、ダーリン」
彼が毛布を跳ね除けると、そこには二挺の銃器が、彼の左右に並んで鎮座していた。
バスローブを羽織った彼は、木製のキャビネットへと向かった。棚から円形の水晶ディスクを取り出し、精巧な蓄音機(蓄晶機)へと挿入する。側面のスピーカーからは、軽やかな交響曲が流れ始めた。
音楽に耳を傾けながら、彼は満足げにベッドの側へと戻った。銃身に顔を近づけ、優しく囁く。
「……起きる時間だよ、このお寝坊さんめ」
彼は片手で銃身を愛おしそうに引き寄せ、もう片方の手でその身を抱くと、音楽に合わせて一人と一挺で、部屋の中を優雅に舞い始めた。
浴室の前まで来ると、彼は鼻歌を歌いながら、手に持った銃を壁にそっと立てかける。そして指先で銃口をトントンと叩いた。
「ハニー、少し待っていてくれ。私が身支度を終えたら、他の側室(愛妾)たちと一緒に朝食を摂ろう」
数分後。湯気を纏って浴室から出てきたエルフは、壁際で待っていた彼女を抱き上げ、快活な足取りで部屋を出た。
食堂へ続く廊下の壁には、ありとあらゆる銃器が飾られていた。――市販モデル、試作機、陽の目を見ることのなかった徒花、そして華美なだけの観賞用。エルフは手に抱いた銃をエスコートするように、通りかかる「銃の紳士」たちへ個別の型番を呼びかけ、朝の挨拶を交わしていく。
ホールを通り過ぎる際、壁に掛けられた巨大な肖像画が目を引く。そこには、豪華なソファに腰掛けるエルフの姿があった。その周囲には、まるで彼に仕える後宮のように、無数の銃器が配置されている。
「スウィートハートたち、お腹が空いたかい? すぐに準備するよ」
エルフは手にしていた「愛妻」を主賓席へ立てかけ、他の席で待ち構える「側室」たちを見渡した。幸福な笑みを湛えてキッチンへ向かうと、エプロンを締め、朝食の準備に取りかかる。
彼は出来立ての料理を載せたトレイを運び、テーブルの銃器たちの前へ順に並べていった。
「さあ、愛しい人たち。君たちの好物を用意したよ。冷めないうちに召し上がれ」
エプロンを脱いで椅子に掛け、彼は幸福感に包まれながら着席し、優雅に食事を始めた。微動だにしない妻妾たちの皿を眺め、彼は心配そうに声をかける。
「……どうしたんだい? 食欲がないのか? それはいけないな……」
しばしの沈黙の後、彼は優しく言い聞かせた。
「……分かった、分かったよ。今回だけは私が君たちの分も食べてあげよう。だが、次はダメだよ。健康に良くないからね、分かったかい?」
食後、部屋の掃除と論文の執筆に半日を費やし、夕刻が近づく頃。彼は家族のために夕食の準備を始めた。
――ブーッ、ブーッ。
調理台の上に置かれた長方形の金属デバイスが光を放った。エルフは火を止め、デバイスを手に取って蓋を開ける。魔法水晶のディスプレイには、マッド・ゴブリンの顔が映し出されていた。
恋銃癖は眉をひそめ、通信に応じた。
「……何だい?」
『おれの元素にかけて! ガンマニア、ニュースを見てないのか? モールで大変なことが起きてるぞ!』
通信機越しにゴブリンの怒鳴り声が響く。
「……はい、はい。分かったよ」
彼は通信を終えると、傍らの「妻」である狙撃銃に優しく微笑みかけ、ホールに向かって大声を上げた。
「ハニーたち! ショッピングモールへ買い物に行きたい子はだーれだ?」
頭の中で思考を巡らせ、戦場の「ショッピング」に相応しい相手を選び抜く。まずは手のひらサイズの「袖珍注魔ピストル」を手に取った。
「おや、愛しのリトル・レディ。君は一番のお利口さんだ。いつも静かに仕事をしてくれるからね」
続いて、壁に掛けられたサブマシンガンへと視線を向け、その銃口を愛撫するように指で弾いた。
「……おっと、そんなふうに唇を尖らせて嫉妬しないでくれ。君を連れて行かないなんて言っていないだろう?」
装備を整えた恋銃癖は、愛妻と側室たちを連れて家を出た。玄関の扉を閉める。
「……おっと、忘れるところだった」
独り言を漏らし、彼は再び扉を開けた。入り口のカウンターにある棚に手を伸ばし、フォトフレームの前に置かれた金指輪を掴み取る。
照明を落とした室内。光の消えた部屋に、一つのフォトフレームが残されていた。そこには、地味で垢抜けない容姿の男性エルフと、その首に快活に腕を回す女性エルフの姿が映っていた。
恋銃癖はヘッドセットを長い耳に装着し、通信の向こう側に確認を入れた。
「……それで? 今回は外で妻と『目の保養』をしていればいいのかい? それとも、側室たちとモールの中で派手に買い物(血戦)を楽しんでもいいのかな?」
『現在、監視システムとセキュリティを掌握した。中には人質が多数。敵の数は多いが、配置は杜撰だ』
ビッグボーイの声が返ってくる。
「ふむ」と恋銃癖が応じる。
『……相手の生死は問わん。人質の安全を確保できるか?』
「……それこそ、私が聞きたかった言葉だ。到着したよ。壁を越えれば、そこはモールの搬入口だ」
彼は車を降りて路地裏へと入り、ゴミコンテナを壁際へ引き寄せると、その上に乗って搬入口の様子を窺った。
『……君の後頭部が見える。入り口に見張りが二人だ』
「……プロに任せたまえ」
ビッグボーイの言葉が終わる前に、恋銃癖は地面に飛び降り、車へと戻った。
「ダーリン、少しおめかしの時間だよ。サービス担当の方に挨拶をしておいで」
彼は後部座席から狙撃銃を取り出した。出力を近接戦闘用に調整し、炎の魔力が注入された魔法水晶をスロットへと叩き込む。
車内から特注の小型ミラーを取り出すと、壁にミラーを押し当て、角度を微調整した。二人のテロリストの姿が鮮明に映し出される。
彼は高額の紙幣を一枚取り出すと、指の隙間に微風を集めた。紙幣を優雅に宙に浮かせ、搬入口の中へと音もなく滑り込ませる。
恋銃癖は身を屈めてミラーを凝視した。談笑していたテロリストAが宙を舞う紙幣に気づき、相方のBの胸を叩いて指を差し、それを追いかけていった。
テロリストBが仲間の様子に気を取られたその瞬間。狙撃銃を構えた恋銃癖が壁の上から身を乗り出し、テロリストBの眉間に向けて一弾を放った。
閃光に気づき、振り返ったテロリストA。しかし次の反応を見せる前に、恋銃癖の弾丸がその命を刈り取っていた。
「……やはり君は素晴らしい。一瞬でサービス担当(見張り)を説得してしまうんだから」
外周の掃除を終えた恋銃癖は、狙撃銃を抱えて車へと戻った。エアコンの効いた車内で、銃にそっと毛布を掛ける。
「少し休んでいてくれ。すぐに戻るよ」
『おめでとう。店員からVIP待遇(安全な侵入路)を勝ち取ったようだな。扉の向こうに脅威はない。自宅のキッチンのように自由に出入りしてくれ』
ビッグボーイの合図を受け、恋銃癖はコンテナを足場に塀を乗り越え、搬入口横の非常扉からモール内へと潜入した。
「側室の一人が三階で買い物をしたがっているんだが、情報をくれるかい?」
恋銃癖は身を低くして移動しながら、遠くにロビーの状況を伺った。
「おっと、警備室の監視システムは君が麻痺させたんだろう?」
『当然だ。左手の非常階段から上れ。階段室はクリアだ。……現在、奴らはエルフ族を全員集め、他の人質から分断して移動させている』
事情を把握した恋銃癖は、慎重に階段を上り始めた。
「ほう? 彼女たちがどこへ連れて行かれたか見ておいてくれ。後で側室を連れて、エルフたちと社交(交戦)を楽しむことにするよ」
『三階に到着。数名が定点で巡回している』
三階の扉に辿り着いた恋銃癖は、扉を細く開けて外を窺った。遠くから口笛の音が聞こえてくる。目の前を横切った見張りが、退屈そうに周囲を一瞥し、扉から遠ざかっていった。
恋銃癖は音もなく外へ滑り出し、ディスプレイの影に身を隠した。消音器付きのサブマシンガンを握り、見張りが戻ってくるのを待つ。
『……分断された人質たちは、ガイド(テロリスト)に連れられてアパレルショップへ向かった。三階の反対側にある非常階段を使えば、ショップへ直通だ』
見張りが戻ってきた瞬間、恋銃癖はサブマシンガンの銃口を見張りのこめかみに向けた。
「ダッ」という微かな音と共に、彼は崩れ落ちる遺体を壁際へと押しやる。
そのまま遺体を機械室へと引きずり込みながら、ビッグボーイに応答した。
「結構。側室も新しい服を選びたがっている。まずは三階のサービス担当に挨拶を済ませてからね」
ビッグボーイが絶妙なタイミングで機械室のロックを弾き飛ばし、恋銃癖は遺体を中へと隠した。
一瞬の後、彼は剥ぎ取った衣類を血糊のついた床に放り投げ、次の標的を見据えながら足で無造作に血を拭い、角へと蹴り飛ばした。
恋銃癖は姿勢を低く保ち、口笛を吹きながら巡回するテロリストへと接近した。楽器店の中に入り、棚を視覚的な死角として利用する。彼は注魔手槍を抜き、水晶に魔力を充填して、必死の間合いを待つ。
『……ツキがあるな。最高のチャンス(ウィンドウ)だ。見張りの一人がトイレに入った』
報告と同時に、口笛の音が近づいてくる。角から人影が現れた瞬間、恋銃癖は片手でテロリストの襟首を掴み、もう片方の手でピストルを下顎へと押し当てた。引き金を引くと同時に水晶が砕け散る。彼はテロリストが吹いていたメロディを引き継ぎ、何食わぬ顔で口笛を吹き続けた。
ピストルから水晶の破片を捨て、新しい魔法水晶を装填すると、彼は悠々とトイレへ向かった。
口笛を吹きながら、小便器で用を足している見張りの隣に立つ。用を足すふりをしながら、手には既に魔力を充填したピストルを握っている。彼は隣のテロリストを静かに見下ろした。
隣のエルフが自分を凝視していることに気づき、テロリストがその銃口を振り返った瞬間、引き金が引かれた。
その直後。外からテロリストたちの騒ぎ出す声が聞こえてきた。
『恋銃癖、難易度を「ノーマル」から「ハード」に引き上げる。ルートを再設定する。エルフの人質がいる場所へ向かう道中、すべてのテロリストを排除しろ』
恋銃癖は一瞬驚き、眉を寄せて愚痴をこぼした。
「……はぁ? 何をいきなり……。まあいい、ルートをよこせ。これ以上難易度を上げるなよ」
『予期せぬトラブルだ。議長令嬢が乱入した。君の行動権を俺が掌握し、彼女の進路を確保する必要がある』
『現在、すべての非常扉をロックした。奴らがこちらの権限を強制奪還するかどうかは未知数だ』
恋銃癖の顔から血の気が引いた。
「……議長の娘!? なんでそんなのがここにいるんだよ!」
『理由は不明だ。だが計画を変更する。議長令嬢の障害を優先的に排除しろ。俺が暗に彼女を誘導する……』
モールを移動しながら、大男と計画のすり合わせを行う。手順の再構築を終えると、彼は解錠された非常扉を開けた。
「……了解。手筈通りに進めよう。配置についた、あとは任せるよ」
ほどなくして、一階の非常扉からロックの作動音が不規則に響き、続いて「ドンッ」と扉を蹴破るような音が階段室に反響した。恋銃癖はそれを聞き、静かに扉を閉じて待機した。
『……一階の見張りが上がってきたぞ』
ビッグボーイの指示通り、扉が開かれる。飛び込んできたテロリストは、既にサブマシンガンを構えていた恋銃癖の斉射を胸に浴びた。衝撃でよろめき、階段の踊り場へと後退するテロリスト。状況を把握する間もなく、彼は恋銃癖の追撃を受けて絶命した。
恋銃癖は遺体を二階の非常扉へと引きずり、ロックが外れたタイミングで扉の裏の見えにくい場所へと放り込んだ。そして再び一階へと戻り、人質たちの注意を逸らしながら、静かに群れの中へと紛れ込んだ。
ビッグボーイの次なる指示を待ち、騒乱に乗じて二階の脅威を排除するために。




