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【第十一章番外:かつての勇者】

【番外編について】


本シリーズは各キャラクターの日常生活を題材に、世界観の詳細や技術設定を補完することを目的としています。内容は本編から独立しており、未読でも本編の理解に支障はありません。お好みに合わせてお楽しみください。

 世界を遙か高みから見下ろす視線が、加速しながら地上へと墜ちていく。

 西大陸から連合議会へ、そしてハイ州の首都へとズームし、ひしめき合う建築物の群れを抜け、庭付きの二階建ての一軒家を捉えた。

 カメラは屋根をすり抜け、建物の中へと滑り込む。薄暗い室内で、唯一キッチンの明かりと、リビングのテレビの光源だけが明滅していた。


 無精髭を蓄えた中年の男が、片手に開けたばかりのビール缶を握り、もう片方の手でリモコンを弄んでいた。

 ソファに深く沈み込み、ぼんやりとテレビを眺める彼の背後の壁には、かつて彼が連合議会や連合帝国の指導者たちと肩を並べて撮影したホログラム写真が、誇らしげに掲げられている。その周囲を彩るのは、額装された数々の勲章。テレビボードの両脇には、うっすらと埃を被った小銃と宝剣が、静かに立てかけられていた。


 テレビからはニュースが流れている。

『――衝撃の事実です! 帝国の層圏戦略艦が爆発! 犯人は斑紋ハイエナか、帝国国防省の発表によれば……』


 男はビールを一口煽ると、誰に聞かせるともなく独り言をこぼした。

「……へっ、派手にやりやがって。ゲフッ――昔の俺のパーティーの、あの……魔術師! そう、あの魔術師ならさ、デカい火球一つで終わりだ。俺の宝剣とライフルがありゃ、敵を何度だってあの世へ送ってやれたんだがなぁ……。うぅ、ゲフッ」


 その時、キッチンの奥からテレビの音をかき消すほどの怒声が飛んできた。

「庭の草むしりは終わったの!? 一日中テレビの前にかじりついて! 何度言えば分かるのよ。子供たちがもうすぐ学校から帰ってくるんだから、早く迎えに行きなさい! 草むしりはどうせ誰もやってくれないんだから!」


 怒声に弾かれるように、男はソファから飛び起きた。手の中の飲みかけのビールを見つめ、慌ててキッチンに向かって声を張り上げる。

「あ、ああ! 分かってる、今行くから! ――これだけ飲み干したら、すぐに行くよ!」


 ビールを一気に飲み干すと、男は空き缶を無造作に握りつぶした。怠そうに腰を上げ、大きく背伸びをすると、尻を掻きながら玄関へと足を進める。

 玄関の脇にある棚の上には、投影水晶が置かれていた。男は表示が乱れている水晶を見て眉をひそめると、それを軽く叩いた。

 水晶が再び輝きを取り戻し、明滅していたホログラムが安定した映像を映し出す。


 そこには、一団の集合写真が映っていた。

 中心には、宝剣と小銃を手に微笑む若き日の男。その傍らには巨体のオークと、ローブに身を包んだ精霊。背後の戦車の上には、一人のドワーフが寝そべっている。

 彼らの後ろには、一際目立つ横断幕が掲げられていた。

 そこには、こう記されている。


『勇者パーティー、凱旋す』

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