表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/59

古代ローマの戦車競争(その十)

 アンチマスルスはなった強襲きょうしゅう部隊が、ローマいち評判ひょうばんの戦車工房に到着した。


 全員が顔にぬのいて、正体しょうたいかくしている。目の部分はむき出しだが、これだけで人物を特定するのはむずかしい。


 工房は無人だった。マスルスが自分の屋敷やしきに、職人とその弟子でしたちをまねいて作戦会議中だとか。どんな風に警備するのかを話し合っているそうだ。ベスボリウスとかいう部下の入れ知恵ぢえらしい。


「バカめ!」


 強襲きょうしゅう部隊のリーダーは笑った。


 マスルスめ、戦車の残骸ざんがいを見てやむといい。自分がいかに、のんびりしすぎていたのかを。


 本当にすぐれた者というのは、必要な時にばやく動く。そう、我々のように。


 工房のおくへと進んでいく。やはり無人だ。だれもいない。


 あまりに順調なので、わなの存在・可能性をうたがった。


 が、そういうものは仕掛しかけられておらず、外にいる見張みはりも異常を知らせてこない。


「あったぞ!」


 一番いちばんおく部屋へやで、一台の戦車を発見した。


 これに間違いないだろう。なかなかに見事みごとな外見だ。戦車の外側に、各種楽器が美しく配置されている。


「『音響おんきょう戦車』というらしいな」


 近くにあった金属片きんぞくへんに、そうられている。


 戦車にしては華麗かれい。「戦車競争」よりも、「凱旋式がいせんしき」の方が似合にあいそうだ。


 これほど美しい戦車が円形競技場コロッセウムあらわれたら、ローマ市民たちは喝采かっさいおくるだろう。


 だからこそ、先につぶしてしまうのだ。


破壊はかいしろ! たたこわせ!」


 強襲きょうしゅう部隊が棍棒こんぼうを手に、『音響戦車』にむらがった。


 躊躇ちゅうちょはしない。この戦車をこわせば、大金たいきんが手に入るのだ。棍棒こんぼうにぎる手にもちからがこもる。


 部屋へやの中にみだれ飛ぶ不協ふきょう和音わおん。さすが、『音響戦車』だ。戦車をぶったたく時に、どうしても楽器に当たる。


 これは外にも聞こえているだろう。


 なるほど。こんな細工さいくをしていたから、ここまで工房を無防備むぼうびにできたわけか。


(バカめ! こちらの人数をあまく見すぎだ)


 戦車はまだ原形げんけいとどめているが、


「これで十分だ! 撤収てっしゅうするぞ!」


 強襲きょうしゅう部隊のリーダーは言う。長居ながいは無用だ。


 自分たちは役目やくめたした。戦車は無惨むざん有様ありさまだ。明後日あさってまでに修理するのは、どう考えても不可能。


 去りぎわ金属片きんぞくへんひろっていく。『音響戦車』とられた金属片きんぞくへんだ。これを見せれば、自分たちのやとぬし納得なっとくするだろう。


 大笑いしたいのを我慢がまんして、強襲きょうしゅう部隊は工房から撤収てっしゅうした。


 これでマスルスの戦車は残り三台。


 この日の夕刻ゆうこくアンチマスルスはついに、『黄金戦車』を発見した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ