表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/59

古代ローマの戦車競争(その五)

 ローマで秘密ひみつ会合かいごうおこなわれていた。


 顔を並べているのは、来月の選挙に立候補する予定の者たちだ。その全員ではないが、大半がこの場に集まっている。


 このまま何もしなければ、マスルスの当選は確実だろう。


 それを阻止そしするために、彼らは手をむことにしたのだ。


 もともと、マスルスの『戦車競争』を警戒していた。


 なので、それぞれがひそかに準備していた。ローマにやって来る途中とちゅうで、戦車を襲撃しゅうげきする計画。


 アテネから来た船が海賊かいぞくおそわれたのも、これが原因げんいんである。


 マスルスが元老院でけの話を持ち出す前から、「やつの戦車をつぶせ、ローマに到着させるな」という指示しじを出していた。


 早馬が情報を持ってくる。


「『魚鱗戦車』を乗せた船が沈没ちんぼつした模様もようです」


 さらに、『魚鱗戦車』のものと思われる車輪が一つ、海上にただよっていたのが回収されたとか。


「それはめでたい!」


 まずは一台。この数はこれからえていくことになる。残りは四台だ。


 この場にいる者たちは葡萄酒ぶどうしゅ乾杯かんぱいする。


けの話が出た時には、おどろきましたがね」


「しかし、すべての戦車がローマにたどり着けなければ、あのけは成立しない」


「マスルスのあかぱじというわけだ」


 大笑いをしながら葡萄酒ぶどうしゅを飲みす面々。


 他の戦車に関する悲報ひほうも、間もなくもたらされるだろう。ああ、かわいそうなマスルス。我々にとっては、吉報きっぽうだが。


 戦車がなければ、『戦車競争』はできない。


「この分だと、マスルスは『かけっこ』でもする羽目はめになるかもしれませんな。あれなら戦車はいらない。あはははははは」


 新たな使者がやって来る。ガリア方面からの知らせだ。


「そうか。『鉱石戦車』を仕留しとめたか」


 山賊さんぞくたちの襲撃しゅうげきで、ふかい谷底に転落していったという。


 これで二台をつぶした。残りは三台。


 だが、気になることがある、と使者がかたる。


奇妙きみょうな戦車だったそうです。ごつごつした大きな岩に車輪をつけただけ、そんな感じだったと」


 そして、一息ひといき置いてから口にする。


「ニセモノでしょうか?」


 部屋へや雰囲気ふんいきが一瞬で静まり返る。


 マスルスは潤沢じゅんたくな予算をあたえて、ローマ各地のうでき職人たちに戦車をつくらせた。


 それなのに、岩に車輪をつけただけの戦車?


「たしかに。ニセモノかもしれんな」


 そのくらいの用心をしていてもおかしくない。


 そうやって襲撃しゅうげき部隊の目を引きつけておいて、本物の戦車は別の街道でローマに向かっているとか?


 そこで急遽きゅうきょ周辺しゅうへん街道の捜索そうさくに人員をく。もともとの予定では、ガリアの『鉱石戦車』を仕留しとめたあと、ヒスパニアの『猛牛戦車』をおそう部隊と合流させるつもりだったが、これは仕方がないだろう。


 谷底に落ちた『鉱石戦車』がニセモノであったとしても、本物の方にもローマの土はませない。確実につぶす。


 一時的に場がしらけてしまったが、ふたた葡萄酒ぶどうしゅを飲み始める面々。


 その一人が自信たっぷりに言う。


「そろそろ私の手配した者たちも動き出すころでしょう」


 この男はシチリア島南の海域かいいきに、武装ぶそうした商船を配置していた。


 見た目は普通の商船だが、乗りんでいるのは商人ではない。海賊かいぞくたちだ。


「彼らがつぶしてくれますよ。シチリアの『跳躍戦車』をね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ