このルービックキューブの大会では
審判が私の前に、ルービックキューブを置いた。
といっても、箱をかぶせた状態なので、中のキューブがどうなっているのか、まだ見ることはできない。
この大会には、他の大会とは違う「参加資格」が存在する。「プロ野球のファン」であることだ。
とはいえ、自称でもまったく問題なかった。ただし、応援している球団のレプリカユニフォーム、その着用が義務づけられている。
「準備はよろしいですか?」
審判が尋ねてくる。
私は一呼吸してから、「はい」と答えた。
すると、審判によって、ルービックキューブを覆っていた箱が取り除かれる。
すぐさま私はキューブを手にした。各面の状態を素早く確認する。
予選通過の目安タイムは、おそらく二十秒前後だろう。普通にやれば、達成可能なタイムだ。
ただし・・・・・・。
私が緊張していると、審判が重要な情報を告げてくる。
「1985年」
それを聞いて、ホッとした。
ルービックキューブから一旦手を放すと、タイマーをスタートさせる。
ここから競技開始だ。キューブを再び手に取ると、高速で回転させていく。ばらばらになっている各面の状態を、正しい形へと近づけていった。
そして、キューブが完成すると、それをテーブルの上に置いて、タイマーを止める。
六つの面がそれぞれ、プロ野球の六球団、いずれかのロゴマークになっていた。
ただし、各面の中央にある一マスだけは違う。白地に黒で、数字が書かれていた。
これは順位だ。今回の場合、「1985年」のプロ野球、その順位通りでなければ、正しい形とはみなされない。数字は「1」から始まり、「6」まである。あの年の順位は、これで合っているはず。
さっそく審判が各面の状態を確認する。
問題ないということなので、タイマーの数字を私も一緒に確認した。十五秒弱だ。
これなら予選通過は確実だろう。静かに喜ぶ私。
一方、隣のテーブルでは、別の参加者が競技を開始した。
横目で見ていたが、かなりの速さだ。十秒を切るかもしれない。
ところが、直後の確認で審判が言う。
「どの面もひとまず、図柄は完成しています。ですが、順位が間違っていますね。この年の三位と六位が逆です」
たとえルービックキューブの実力がすごくても、順位を間違えれば「失格」だ。
昔のプロ野球の順位を、私も一通り暗記してきたけれど、いくつか不安な年がある。
なお、この大会には、お決まりの光景があった。
順位を間違えて失格になった参加者が、数字の「1」がある面を審判に見せて、
「自分はこの球団のファンなんで、ここが優勝したことさえ合っていれば、あとは問題ないんです!」
もちろん、失格が取り消されることはないけれど、「お約束」を実行したことに対して、他の参加者たちから拍手が送られる。
そういうわけで、私がにやにやしながら、拍手のタイミングを待っていると、
「自分はこの球団のファンなんで、ここが優勝したことさえ合っていれば、あとは問題ないんです!」
隣のテーブルの人は、「この球団のファンです!」と力強く主張しているが、着ているレプリカユニフォームは、別の球団のものだ。
この大会では、贔屓の球団が突然変わる、そんな参加者が珍しくない。
次回は「ピッチクロック」のお話です。




