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まなざしの向こう岸  作者: 十二滝わたる
13/15

安芸田と庄田

 テニスやりたければ、うちの高校にこいと安芸田はオリエンテーションで熱く語った。

 俺とヨシアはビョン・ボルグと黄色のテニスボールと土ではないお洒落な全天候型のテニスコートに引かれて、レベルは二つ程下であるが授業料もほとんどかからず、有名二流大学への推薦制度もあるという条件を提示され、地元の私立高校に行くことにした。

 安芸田はそこで数学の教師をしており、男女共学の高校のテニス部の顧問をしていた。

 一から徹底して教えてやると語ったその言葉はすぐにメッキが剥がれ、嘘と虚飾の安芸田の姿であることは直ぐに分かった。

 凡そ高校生らしくはない自由を履き違えた裕福な生徒達は、この高校のレベルを更に下げていたのだか、我々のようなさほど多くはない学業の特待生で体面を保っていた。

 オーストラリアに一年留学してきたという庄田は、当時、生徒会へも進出していた片寄った進歩的な考えと自称していた思考と、親の職業からくるロータリークラブでの自分の特別な位置と、学園での特別な扱いにより、常識を遥かに越えるような暴言、行動が黙認されていた。

 テニスの練習や合宿での女生徒達も、好き勝手に交際し、好き勝手に辞めて行った。辞めざるを得なくなるように男女関係はテニス部に限らず、学校の至るところであった。

 安芸田もそんな庄田を筆頭とする先輩生徒達と変わらない行動だ。馬鹿過ぎて批判するのも、改善の提言も無駄なのは明らかだ。

 何でおれたちはこんなん実態を知らないでこんな高校に来てしまったかなと高校に誘ったヨシアからはぼやかれた。

 安芸田は部費で自分の晩酌をするような男だった。使い込みは巧妙に隠されたし、看過された。高級外車で禁止されているコート脇に駐車して、白を基調としたウェアとは大きくかけ離れた派手なポロシャツときつい香水の父兄おじさん数人がコーチだった。安芸田はテニスなんかできないし、知らない。ただのいいカッコするだけで、生徒には見かけだけ人格者のように装った。高級外車の父兄にはそうでゲスの言葉のようなゲスをさらけ出した。

 安芸田は飲食運転の交通事故で呆気なく死んだ。庄田はオーストラリアがらみの大麻の疑いで捕まり、孕ませた女生徒とともの退学し、不労所得に頼る家業を継いでも困ることはなかった。

 僕はテニス部を辞めてもこの高校に残る選択をしたが、優秀なヨシアは条件のいい隣街の進学校に転入した。

 僕もヨシアもボルグにはなれないのは初めから分かっていた、テニスなんかには、さほど大きなファクターはない。変わったことをしたかっただけの人生のスイングを楽しんだ。

 出生届を1月1日に無理やり直せるような、捨て子を我が子として届けられるような、そんな時代の名残の時代のくだらない面白い経験だ。

 

 

 

 

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