恋人と犯罪者(弐)
「ハァ、ハァ、ハァ…」彼女は走る。給湯室から逃げ出して、どこへ向かうのか。その当ても無く、とにかく帝都から出ようとする。帝都を円形に取り囲むこの壁―〈凱壁〉を、正規の出入口からではなく、跳躍により飛び越える。
「―っ!!」着地に失敗する。
左足首がイかれたらしいが気にしない。そもそも、感情なんかあるからいけないのだ。ならば、消してしまえば良いだけの事。痛みなんて要らない。心なんて要らない。第一部隊長への、淡い気持ちすらも、捨て去って―。次第に、外見が停滞者になっていく。例の停滞者の大群に合流する頃には、もう。
見分けが付かなかった。
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「やはりな」ルナのその反応に、ヤシロは眉をひそめる。まるで、知っていたかの様な答えに幾つか疑問が浮かぶ。
「知っていたのですか?」それに対して、無言で頷く。そして続ける。
「アイツを、殺せ」
その言葉には、温度が無かった。感情が無かった。気持ちが無かった。心が無かった。しかし、そんな言葉の裏には、〈ヤシロを自分のモノにしたい〉という欲があった。ヤシロには、それも解っていた。だが、ヤシロは気付かない振りをした。
「、、、はい」既に、ヤシロの腹は決まっていた。誰が何と言おうと、〈エヴァ〉を連れ戻す。
それ以外に、選択肢は無かった。
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TO BE CONTINUED……




