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3 、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜未完成な世界編  作者: Nao9999


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第58話:希望の火

第58話です。


絶望が広がる新世界。


だがその中で、

小さな“希望”が生まれ始めていた。


それは、

誰かを守ろうとした行動。


そして――


初めて執行者へ向けられた、

本当の笑顔だった。

夜空へ火の粉が舞っていた。


崩れた建物。


燃え続ける瓦礫。


その前で、

人々が息を呑んでいる。


「……生きてる」


誰かが呟いた。


執行者が、

女の子を抱えたまま立っていた。


全身ボロボロ。


腕は焼け、

白と黒の装甲は砕けている。


それでも。


女の子だけは、

しっかり守られていた。


「ママぁ!!」


女の子が泣きながら飛び出す。


女性が駆け寄った。


「よかった……!」


強く抱き締める。


泣き崩れる母親。


周囲の空気が変わっていく。


ざわつき。


戸惑い。


そして――


困惑。


「……執行者が助けたのか?」


「化け物じゃ……」


「でも今……」


誰も言葉を続けられない。


執行者は、

静かに女の子を見ていた。


「……対象の安全を確認」


小さな声。


だが。


女の子は執行者の服を掴んだ。


「おにーちゃん」


空気が止まる。


執行者の瞳が揺れる。


「……何故触れる」


「助けてくれたから!」


即答だった。


涙でぐしゃぐしゃの顔。


でも。


笑っていた。


「ありがとう!」


執行者が固まる。


完全停止みたいに。


教育係が、

少し泣きそうな顔で笑った。


「……ふふ」


“失敗作”も鼻で笑う。


「良かったな」


執行者は、

ゆっくり胸へ手を当てる。


激しく脈打つ感覚。


熱い。


苦しくない。


むしろ――


温かい。


「……理解不能」


小さな声。


「だが」


夜空を見る。


燃える街。


壊れた世界。


でも。


確かに今、

そこには優しさがあった。


「悪くない」


空気が静まる。


教育係が目を見開く。


“失敗作”がニヤッと笑った。


「お前、変わったな」


執行者は答えない。


ただ。


少しだけ笑っていた。


その時。


群衆の奥から、

昼間にいた武装した男達が現れる。


周囲が警戒する。


だが。


男達はゆっくり近付くと――


頭を下げた。


「……悪かった」


教育係が驚く。


男は苦しそうに続けた。


「俺ら……怖かったんだ」


震える声。


「急に全部変わって……」


「どうすればいいか分かんなくて……」


執行者は黙って聞いている。


男は執行者を見る。


「でも」


小さな間。


「さっきの見たら……」


視線が揺れる。


「お前、本当に守ったんだな」


沈黙。


執行者は静かに答える。


「肯定」


男は少し笑った。


ぎこちない笑顔。


でも。


確かにそこにあったのは、

憎しみじゃなかった。


「……手伝う」


男が言う。


「瓦礫撤去、人集める」


周囲の人々も少しずつ動き始める。


「こっち運べ!!」


「怪我人いるぞ!!」


「水持って来い!!」


バラバラだった人間達が、

少しずつ助け合い始めていた。


完璧じゃない。


混乱している。


それでも。


前へ進もうとしている。


執行者は、

その光景を静かに見ていた。


そして――


小さく呟く。


「……希望」


その瞬間。


燃え続ける街の中で。


確かに、

小さな“希望の火”が灯っていた。

読んでいただきありがとうございます。


第58話では、

執行者が初めて“感謝”と“希望”を知りました。


そして、

混乱していた人々も少しずつ変わり始めます。


世界はまだ壊れている。


でも――


人は、

もう一度やり直せるのかもしれない。


次回、

新世界に新たな脅威が現れます。


引き続きよろしくお願いします。

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