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3 、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜未完成な世界編  作者: Nao9999


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第54話:初めての孤独

第54話です。


感情を知った執行者。


だが、

理解すればするほど、

人間という存在は難しくなる。


そして彼は、

初めて“孤独”を知る。

「……戻るぞ」


“失敗作”が低く言う。


群衆の怒号はまだ続いていた。


「化け物!」


「管理側の犬!」


「消えろ!!」


石が飛ぶ。


空き缶が転がる。


教育係が悔しそうに唇を噛んだ。


「どうして……」


執行者は動かない。


ただ、

静かに人々を見ている。


まるで。


理解しようとしていた。


「執行者」


俺が声を掛ける。


すると。


執行者は小さく呟いた。


「胸部に異常」


「……何?」


「熱ではない」


白と黒の瞳が揺れる。


「重い」


空気が静まる。


“失敗作”が苦笑した。


「そりゃ傷ついてんだよ」


「……傷」


執行者が繰り返す。


理解しようとしている。


でも、

まだ完全には分からない。


「行くぞ」


俺は執行者の肩を軽く叩いた。


執行者は、

数秒だけ群衆を見つめ――


静かについて来た。


その背中に。


また石が飛ぶ。


ガンッ!!


教育係が振り返る。


「やめてください!!」


だが、

怒りは止まらない。


「全部こいつらのせいだ!!」


「ふざけんな!!」


執行者は、

何も言わなかった。


ただ。


少しだけ歩く速度が遅くなった。


―――


施設へ戻る。


静かだった。


外の騒音が嘘みたいに。


執行者は窓際へ座る。


そして、

街を見続けていた。


夕焼け。


赤い光。


以前なら、

ただの情報処理だった景色。


でも今は違う。


「……なぁ」


“失敗作”が壁にもたれながら言う。


「無理すんなよ」


執行者は答えない。


教育係が温かい飲み物を置いた。


「どうぞ」


執行者はカップを見る。


湯気。


香り。


「これは?」


「ココアです」


教育係が少し笑う。


「甘いですよ」


執行者は恐る恐る飲む。


数秒停止。


「……」


「どうだ?」


俺が聞く。


執行者は、

ゆっくりこちらを見る。


「理解不能」


「は?」


“失敗作”が吹き出す。


「不味いのか?」


「違う」


執行者が小さく首を振る。


「胸部の重さが少し軽減した」


空気が止まる。


教育係が目を丸くした。


「それ……」


執行者はカップを見る。


「温かい」


小さな声。


「……これも感情か」


誰もすぐに答えられなかった。


その時だった。


施設内のモニターが突然点灯する。


《緊急速報》


ノイズ。


そして映像。


街。


暴動。


炎。


「……悪化してる」


教育係が青ざめる。


映像の中で、

人々が争っていた。


奪い合い。


殴り合い。


叫び。


自由になった世界。


だが、

秩序はまだ生まれていない。


「各地で衝突発生……」


教育係の声が震える。


「食料庫襲撃、武器奪取、区域封鎖……」


“失敗作”が舌打ちした。


「最悪だな」


その時。


映像の中で、

誰かが叫ぶ。


《執行者を探せ!!》


空気が凍る。


《管理側を許すな!!》


《全部あいつらが悪い!!》


執行者が静かにモニターを見る。


怒号。


憎悪。


敵意。


全部、

自分へ向けられている。


「……なるほど」


小さな声。


「私は嫌われている」


「違う」


俺は即答した。


執行者がこちらを見る。


「人間は今、混乱してるだけだ」


「同義では?」


「違う」


少し強く言う。


「感情ってのは、今だけで全部決まらねぇ」


執行者は黙る。


理解しようとしていた。


「……難しい」


本当に小さな声だった。


その瞬間。


俺は気付く。


あれほど完璧だった存在が、

今――


“独りぼっち”になっていることに。


感情を知ったからこそ。


傷つくことを知ったからこそ。


執行者は、

初めて“孤独”を感じていた。

読んでいただきありがとうございます。


第54話では、

執行者が初めて“孤独”を知りました。


感情を理解するということは、

優しさだけではなく、

傷つくことも覚えるということ。


そして世界の混乱は、

さらに大きくなっていきます。


次回、

主人公達は新世界最初の決断を迫られます。


引き続きよろしくお願いします。

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