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3 、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜未完成な世界編  作者: Nao9999


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第53話:自由の代償

第53話です。


感情を得た世界。


だが、

自由は平和だけを生まない。


抑え込まれていた欲望は、

今、

世界中で溢れ始めていた。

「急ぐぞ!」


“失敗作”が走り出す。


俺達も後を追った。


施設の外へ出る。


瞬間――


熱風が吹き抜けた。


「……っ」


街の一角が燃えている。


黒煙。


怒号。


逃げ惑う人々。


以前の静かな世界では、

絶対に存在しなかった光景。


「止めろ!!」


誰かの叫び声。


次の瞬間。


ガラスが砕け散る。


バリンッ!!


店のショーウィンドウだった。


数人の男達が、

中の商品を奪っている。


「うおおお!!」


「全部持ってけ!!」


目がギラついていた。


教育係が顔を青くする。


「こんな……」


「管理が消えた反動だ」


“失敗作”が低く言う。


「今まで押さえ込まれてたもんが、一気に噴き出してる」


その時。


近くで女性の悲鳴が響いた。


「やめてっ!!」


男が女性の腕を掴んでいる。


周囲は混乱。


誰も止められない。


「チッ」


俺は走った。


男の腕を掴む。


「離せ」


「はぁ!?」


男が振り返る。


目が完全に興奮していた。


「邪魔すんな!!」


殴りかかってくる。


遅い。


避ける。


そのまま腹へ一発。


ドゴッ!!


男が吹き飛ぶ。


周囲が静まる。


「……」


倒れた男は震えていた。


「な、何だよお前……」


「普通の人間」


即答。


女性を後ろへ下がらせる。


「大丈夫か?」


「は、はい……」


涙目だった。


その時。


執行者が、

静かに周囲を見ていた。


「……理解不能」


小さな声。


「何でだ?」


俺が聞く。


執行者は燃える街を見る。


「自由を得た」


「なのに何故、互いを傷つける」


沈黙。


教育係も答えられない。


“失敗作”が苦笑した。


「人間だからだよ」


「……人間」


執行者が呟く。


「感情は、希望を生む」


以前の言葉。


だが――


今、目の前にあるのは混乱だった。


「同時に」


執行者が続ける。


「破壊も生む」


空気が重くなる。


その時だった。


群衆の奥から、

怒鳴り声が響く。


「全部あいつらのせいだ!!」


誰かが叫んでいた。


「あの管理者共が世界壊したんだろ!!」


「執行者も同罪だ!!」


空気が変わる。


人々の視線。


一斉に執行者へ向く。


「……」


教育係が息を呑む。


「マズい……」


一人の男が指を差した。


「そいつだ!!」


「白いやつ!!」


「管理側の化け物だ!!」


ざわつきが広がる。


怒り。


恐怖。


憎しみ。


執行者は動かない。


ただ、

静かに人々を見ていた。


「……なるほど」


小さな声。


「これが“憎悪”」


胸が少し痛くなる。


人間を理解し始めた執行者へ、

最初に向けられた感情。


それが敵意だった。


「おい」


“失敗作”が前へ出る。


「下がれ」


だが群衆は止まらない。


「お前らのせいで!!」


石が飛んだ。


ガンッ!!


執行者の額へ当たる。


教育係が息を呑む。


「やめてください!!」


でも止まらない。


怒号が増える。


その時。


執行者が、

静かに口を開いた。


「……理解した」


全員が止まる。


執行者は、

ゆっくり人々を見る。


「感情とは」


白と黒の瞳。


そこに、

悲しみが混ざっていた。


「痛みを伴う」


沈黙。


そして――


執行者は初めて、

少しだけ寂しそうに笑った。

読んでいただきありがとうございます。


第53話では、

自由を得た世界の“代償”が描かれました。


希望。

怒り。

欲望。

憎悪。


感情は、

美しいだけではありません。


そして執行者は、

人間の“痛み”を知り始めます。


次回、

執行者最大の試練が始まります。


引き続きよろしくお願いします。

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