第79話:世界が目覚める日
世界は一人では変えられない。
一人の英雄が全てを救う事もない。
誰かが手を伸ばし。
誰かが受け取り。
その繰り返しでしか、
未来は作れない。
だからこそ。
人は一人では生きられない。
静寂だった。
誰も言葉を失っていた。
三十。
旧制圧兵器群。
世界各地で同時起動。
教育係の端末には、
赤い警告が並び続けている。
主人公が頭を押さえた。
「三十って……」
教育係が苦しそうに答える。
「確認できているだけで三十です」
「未確認を含めれば更に増える可能性があります」
“失敗作”が吐き捨てた。
「クソが」
E-01は空を見ている。
世界中から上がる光。
その光景を。
静かに。
ただ見つめていた。
その時。
通信端末が鳴った。
全員が振り向く。
知らない回線。
教育係が警戒する。
「誰ですか」
数秒後。
ノイズが走る。
そして。
若い女性の声が響いた。
『聞こえる?』
全員が固まる。
知らない声だ。
主人公が答える。
「誰だ」
女性は言う。
『自己紹介してる暇ない』
『そっちも見えてるでしょ』
『旧兵器群』
主人公達は顔を見合わせた。
教育係が通信を解析する。
そして驚く。
「海外です」
主人公が眉をひそめる。
「海外?」
『あー』
『やっぱ日本か』
女性が少し笑う。
だが。
その声は疲れていた。
『こっちは地獄』
『そっちも同じでしょ』
主人公は苦笑した。
「まぁな」
通信の向こうで、
小さく笑う声。
それだけで。
不思議と少し人間味を感じた。
女性は続ける。
『こっちは旧兵器三体』
『都市が二つ消えた』
沈黙。
空気が凍る。
主人公の顔から笑みが消える。
『聞いて』
『もう国とか言ってる場合じゃない』
『世界中で同じ事が起きてる』
教育係が震える声で言う。
「何故通信を」
女性は答える。
『一つだけ理由がある』
少し間。
そして。
全員が予想していなかった言葉を口にした。
『あなた達を探してた』
主人公が固まる。
「は?」
『黒糖飴の男』
沈黙。
主人公が変な顔になる。
「その呼び方やめろ」
『無理』
即答だった。
“失敗作”が吹き出す。
教育係まで笑いそうになる。
緊張が少しだけ緩んだ。
だが。
女性の声は真剣だった。
『今、世界中で噂になってる』
主人公が嫌そうな顔をする。
『感情を取り戻した世界の中心人物』
『執行者を変えた男』
『管理者を止めた男』
『救世主』
主人公が即答した。
「違う」
『知ってる』
また即答だった。
主人公は少し安心する。
女性は続けた。
『でも』
『みんな希望を探してる』
風が吹く。
崩れた街を抜ける。
『世界は今』
『生まれ直そうとしてる』
『だから』
通信の向こうで。
女性が言った。
『協力しよう』
沈黙。
主人公は空を見る。
光。
炎。
瓦礫。
人々。
未完成な世界。
そして。
隣には仲間達がいる。
主人公は小さく笑った。
「断ったら?」
女性も笑う。
『殴る』
「怖ぇな」
『でしょ?』
思わず主人公も笑った。
教育係が呆れる。
“失敗作”が笑う。
E-01は静かに見ている。
そして。
主人公は答えた。
「まぁ」
空を見る。
世界を見る。
「悪くねぇ」
その時だった。
E-00が再び動く。
巨大な翼が広がる。
赤い瞳が世界を見下ろす。
そして。
空へ向けて信号を放った。
教育係の顔色が変わる。
「まずい!」
主人公が振り向く。
「何だ!」
教育係が叫ぶ。
「呼んでいます!!」
「旧兵器群を!!」
沈黙。
次の瞬間。
世界各地の光が動いた。
一斉に。
まるで。
王の命令を受けた軍勢のように。
全てが。
この街へ向かい始めた。
今回から物語は大きく広がります。
未完成の世界編後半は、
「街を救う話」
から
「世界を繋ぐ話」
へ変化していきます。
そして今回、
初めて海外勢力が登場しました。
この人物は今後かなり重要になります。
また、
主人公が望まない救世主化も少しずつ始まっています。
次回。
世界中の旧兵器群が動き出します。
未完成の世界編最大の危機が、
いよいよ本格的に始まります。




