第78話:守る理由
強さとは何だろう。
誰かを倒す力か。
支配する力か。
違う。
本当に強い者は。
失う事を知っていても、
それでも守ろうとする者だ。
空が震えていた。
E-00。
F-00。
二体の巨影が向かい合う。
街全体が息を呑む。
誰もが理解していた。
もし戦えば。
この街は消える。
人も。
希望も。
何もかも。
E-00が口を開く。
『最終警告』
『保護対象を引き渡せ』
F-00は動かない。
赤い瞳だけが光る。
『拒否』
即答だった。
その瞬間。
空気が裂けた。
轟音。
E-00の背後の光輪から無数の光が放たれる。
夜空が白く染まる。
教育係が叫ぶ。
「伏せてください!!」
だが。
光が街へ届く前に。
F-00が前へ出た。
巨大な腕を振るう。
衝撃。
光が弾け飛ぶ。
空そのものが爆発したような音。
窓ガラスが砕ける。
地面が揺れる。
主人公は歯を食いしばった。
「無茶苦茶だな……」
“失敗作”が笑う。
「今さらだろ」
だが。
その笑顔は固い。
相手の恐ろしさを知っているからだ。
空では。
二体の怪物が激突する。
E-00の光。
F-00の黒い装甲。
ぶつかる度に空が揺れる。
まるで神話だった。
だが。
主人公の目は別のものを見ていた。
F-00。
その動きだ。
攻撃していない。
いや。
正確には攻撃できるのにしていない。
守っている。
街を。
人を。
自分の後ろにいる者達を。
主人公が呟く。
「似てるな」
教育係が振り向く。
「何がです?」
主人公は苦笑した。
「親ってやつだろ」
教育係が黙る。
空では。
再び光が放たれる。
F-00が身体で受け止める。
装甲が砕ける。
火花が散る。
それでも下がらない。
『保護対象』
また呟く。
何度も。
何度も。
まるで壊れた機械みたいに。
だが。
主人公には分かった。
あれは命令じゃない。
意思だ。
その時だった。
E-00が空中で停止する。
そして。
ゆっくりとF-00を見る。
『理解不能』
低い声。
『何故そこまでする』
F-00は答えない。
沈黙。
だが。
数秒後。
初めて違う言葉を口にした。
『失いたくない』
空気が止まる。
教育係が目を見開く。
E-01も。
“失敗作”も。
主人公も。
全員が固まった。
今。
確かに言った。
感情を。
E-00も沈黙する。
F-00は続けた。
『また』
『失いたくない』
その声は震えていた。
壊れた機械の声。
だが。
どこまでも人間らしかった。
そして。
“失敗作”が前へ出る。
空を見上げる。
「親父」
小さく呼ぶ。
F-00が視線を向ける。
「俺は帰らねぇ」
風が吹く。
「ここが俺の居場所だ」
沈黙。
長い沈黙。
やがて。
F-00の瞳が僅かに揺れる。
そして。
初めて。
ほんの少しだけ。
優しく見えた。
その瞬間だった。
教育係の端末が真っ赤に染まる。
警報。
警報。
警報。
主人公が嫌な顔をする。
「今度は何だ」
教育係の唇が震える。
「反応増加……」
画面を見る。
そして。
絶望した。
「嘘です……」
主人公が奪い取る。
画面を見る。
そこに表示されていた数字。
一。
ではない。
二。
でもない。
三十。
沈黙。
教育係が呟く。
「旧制圧兵器群です……」
風が止まる。
「全機起動しました」
誰も喋れなかった。
遠くの空。
世界の各地から。
無数の光が立ち上がる。
まるで。
眠っていた悪夢が。
一斉に目を覚ましたように。
今回のテーマは、
「守る理由」
でした。
F-00は壊れています。
ですが。
壊れているからこそ、
失う痛みを知っていました。
そして物語は次の段階へ入ります。
E-00という脅威。
F-00という過去。
その先に待っていたのは、
世界規模の危機でした。
未完成の世界編は終盤へ向かいます。
次回から、
世界そのものを巻き込む大きなうねりが始まります。




