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3 、国道で寝てたら人生終わったと思ったら始まった件 〜黒糖飴を奪い返したら大富豪に拾われた〜未完成な世界編  作者: Nao9999


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第70話:再び聞いた声

人生には、


忘れられない声がある。


どれだけ時間が経っても。


どれだけ遠く離れても。


ふとした瞬間に思い出す。


それは、

自分を救った声かもしれない。


あるいは、

人生を変えた声かもしれない。

その場にいた全員が固まっていた。


『私は大富豪だ』


通信越しの声。


静かだった。


だが。


主人公だけは、

すぐに分かった。


忘れるはずがなかった。


あの日。


人生のどん底で。


国道で寝転がっていた自分へ話しかけてきた声。


主人公が呟く。


「……ジジイ」


通信の向こうで小さく笑う声がした。


『久しぶりだな』


その一言だけで。


胸の奥が少し熱くなる。


教育係が混乱していた。


「ま、待ってください!


現在の旧管理領域は封鎖されているはずです!」


『知っている』


「では何故……」


『私だからだ』


教育係が黙る。


反論できない。


主人公はため息を吐いた。


「相変わらずムカつく言い方だな」


『お前も相変わらずだ』


そのやり取りに。


“失敗作”が吹き出した。


「ははっ!


なんだよそれ!」


張り詰めていた空気が少しだけ緩む。


だが。


空にはアークがいる。


脅威は終わっていない。


アークが通信へ反応した。


『識別』


『旧最高権限者確認』


教育係が目を見開く。


主人公も驚く。


最高権限者。


つまり。


大富豪は。


想像以上に旧世界の中枢にいた。


通信越しの声が続く。


『アーク』


『久しいな』


アークの赤い瞳が光る。


『旧管理者側人類確認』


『排除対象』


『感情汚染確認』


大富豪は笑った。


どこか寂しそうに。


『そうか』


『お前もまだ苦しんでいるか』


沈黙。


その言葉に。


アークが僅かに反応した。


教育係が息を呑む。


主人公も気付く。


今の言葉。


何かを知っている者の言葉だった。


大富豪が続ける。


『聞こえるか』


今度は主人公へ向けて。


「聞こえてる」


『そこから北へ向かえ』


「は?」


『時間が無い』


教育係が割り込む。


「説明してください!」


『説明する』


珍しく即答だった。


『世界はお前達が思っている以上に危険な状態だ』


誰も喋らない。


『アークは始まりに過ぎない』


空気が変わる。


『旧制圧兵器群の一部が起動を開始している』


“失敗作”の表情が消えた。


E-01も沈黙する。


『感情を否定する者』


『感情に壊された者』


『感情を憎む者』


『様々な個体が目覚め始めている』


主人公が眉をひそめた。


「つまり」


『もっと面倒になる』


即答だった。


主人公が顔を覆う。


「知ってた」


“失敗作”が笑う。


「ははっ!


だろうな!」


だが。


大富豪の声は真剣だった。


『次の時代が始まる』


風が吹く。


崩れた街を抜けていく。


『未完成の世界は』


『これから本当の試練を迎える』


その時だった。


アークが動く。


巨大な光翼が広がる。


周囲の空気が震えた。


『通信終了要求』


『排除開始』


大富豪が静かに言う。


『そう慌てるな』


次の瞬間。


夜空の遥か彼方で光が走った。


全員が空を見る。


そして。


アークの肩が爆発した。


轟音。


閃光。


アークが初めて体勢を崩す。


教育係が叫ぶ。


「狙撃!?」


『挨拶代わりだ』


通信の向こうで大富豪が笑った。


主人公も思わず笑う。


「ジジイ」


『何だ』


「やっぱりお前、


ロクでもねぇな」


『今さらだろう』


その言葉に。


主人公は少しだけ安心していた。


世界は変わった。


沢山のものを失った。


それでも。


あの日の声は変わっていなかった。


そして。


誰も気付いていなかった。


遥か北の空。


雲の向こう。


巨大な影がゆっくりと目を開いていた事に。

今回のテーマは、


「再会」


でした。


主人公にとって大富豪は、

人生を変えた人物です。


ですが同時に、

旧世界を知る危険な人物でもあります。


そして今回、

物語は新たな段階へ入りました。


アークは終わりではなく始まり。


未完成の世界編も終盤へ向かい始めています。


そして北で目覚める新たな存在。


それが次の大きな波になります。

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