第68話:雨のように降る終わり
終わりは、
いつも突然やって来る。
準備なんて出来ない。
覚悟も間に合わない。
だから人は、
その瞬間に本当の自分を知る。
夜空が光っていた。
アークの背後に展開された無数の光。
それはまるで――
処刑の雨だった。
教育係の顔色が変わる。
「広域殲滅兵装……!」
"失敗作"が舌打ちした。
「クソッ!!
街ごと消す気か!!」
人々が怯える。
逃げ場はない。
避難も間に合わない。
絶望が広がる。
だが。
その時だった。
主人公が前へ出る。
「おい」
静かな声。
E-01が振り向く。
ベルゼも見る。
教育係も。
主人公は空を見上げたまま言う。
「守りたいんだろ」
E-01は答える。
「肯定」
「なら」
主人公は少し笑った。
「最後までやれ」
E-01の瞳が揺れる。
その言葉は。
ずっと昔。
国道で倒れていた一人の男へ、
誰も言ってくれなかった言葉だった。
だからこそ。
今は自分が言う。
E-01は静かに頷いた。
「……了解」
次の瞬間。
光の雨が降り始めた。
無数の閃光。
轟音。
爆発。
街が揺れる。
だが。
E-01が飛び出した。
限界を超えた身体で。
一発。
二発。
三発。
落下する光を迎撃する。
爆炎が夜空に咲く。
ベルゼも砲撃を開始した。
赤い閃光が空を貫く。
『排除』
『否定』
『守ル』
言葉が少しずつ変わっていた。
教育係が目を見開く。
「自我形成速度が上がっている……」
"失敗作"は笑う。
「ははっ!
人間ってのは面倒な病気だからな」
しかし。
数が多すぎた。
一つ。
また一つ。
光が地上へ迫る。
その時。
老人が立ち上がる。
「あっちだ!!」
周囲の人々へ叫ぶ。
男達が動く。
「子供を先に!」
「地下へ運べ!」
「急げ!!」
誰かが命令した訳じゃない。
誰かに管理された訳でもない。
人々が。
自分で選んで動いていた。
教育係はその光景を見ていた。
完璧な世界では存在しなかった光景。
非効率。
混乱。
無駄。
それなのに。
なぜか美しく見えた。
その時。
主人公の視界に、
一人の少年が映る。
瓦礫の下。
動けない。
周囲は爆発。
間に合わない。
主人公は反射的に走った。
教育係が叫ぶ。
「危険です!!」
聞こえない。
ただ走る。
少年へ向かって。
その瞬間。
主人公の脳裏に、
別の光景がよぎった。
雨。
暗い部屋。
伸ばした手。
届かなかった誰か。
忘れたはずの記憶。
救えなかった過去。
胸が痛む。
息が苦しい。
それでも。
主人公は走る。
「今度は……!」
瓦礫を掴む。
持ち上げる。
腕が軋む。
少年が泣いている。
怖かったのだろう。
主人公は笑った。
不器用に。
「大丈夫だ」
そして。
少年を抱えて飛び出した瞬間――
巨大な爆発が背後で起きた。
衝撃波。
熱風。
世界が揺れる。
教育係の悲鳴。
"失敗作"の怒鳴り声。
E-01の叫び。
主人公の身体が吹き飛ぶ。
地面を転がる。
意識が揺れる。
空が見えた。
真っ黒な夜空。
その向こうで。
アークだけが静かに浮いていた。
そして。
無機質な声が響く。
『確認』
『人類ハ依然非効率』
『故ニ排除スル』
その言葉に。
E-01の瞳が変わった。
今まで見た事のないほど。
深く。
激しく。
感情が揺れていた。
今回のテーマは、
「それでも手を伸ばす」
でした。
主人公が抱える
“救えなかった過去”。
その傷は、
まだ完全には語られていません。
ですが今回、
初めてその影が見え始めました。
そしてE-01。
彼は今、
感情を学ぶ段階から、
感情で選択する段階へ入ろうとしています。
未完成の世界編も、
いよいよ核心へ近付いています。




