第67話:守る理由
守るという行為に、
正解なんて無い。
守れない事もある。
届かない事もある。
それでも。
人は、
誰かの為に前へ出てしまう。
白い閃光が、
街を呑み込んだ。
轟音。
熱風。
建物が吹き飛ぶ。
人々の悲鳴が夜へ響いた。
教育係が叫ぶ。
「防御を――!」
その瞬間。
E-01が前へ出る。
壊れた身体。
限界を超えた装甲。
それでも。
両腕を広げ、
人々の前へ立った。
超高熱光線が直撃する。
世界が震えた。
地面が抉れる。
“失敗作”が目を見開く。
「おい!!
無茶しやがって!!」
主人公は咄嗟に前へ出ようとする。
だが。
凄まじい熱風が押し返した。
光の中。
E-01の装甲が、
少しずつ溶けていく。
警告音。
内部損傷。
出力低下。
それでも。
E-01は退かなかった。
『……何故』
空から、
アークの声が響く。
『何故、
他者ヲ守ル』
『非合理』
『非効率』
『自己損耗確認』
『理解不能』
E-01は、
光を受けながら呟く。
「……最初は」
声が掠れる。
「俺も、
そう思っていた」
主人公が目を見開く。
E-01は続ける。
「だが」
焼ける装甲。
砕ける腕。
それでも。
その瞳だけは、
真っ直ぐ前を見ていた。
「誰かを守りたいと思う感情は」
少し間。
「効率では測れない」
アークの瞳が赤く光る。
『感情ハ、
世界ヲ壊ス』
E-01は静かに返す。
「肯定」
『……』
「だが」
その瞬間。
後ろから、
小さな手がE-01へ触れた。
少女だった。
震えている。
怖いはずだ。
それでも。
E-01の壊れた装甲へ、
そっと触れていた。
「がんばれ……!」
E-01の瞳が揺れる。
その光景を見て。
周囲の人々も、
少しずつ前へ出始めた。
老人。
母親。
瓦礫撤去をしていた男達。
誰も戦えない。
強くもない。
でも。
逃げなかった。
主人公は、
その光景を見て少し笑う。
「……変わったな」
教育係が、
小さく頷いた。
「はい」
“失敗作”は鼻で笑う。
「クソ未完成共が」
だが。
その声はどこか嬉しそうだった。
アークは沈黙する。
赤い瞳が、
人々を観測していた。
『……解析不能』
その時。
ベルゼが、
ゆっくり立ち上がる。
巨体が軋む。
赤い単眼は、
まだ不安定に揺れていた。
教育係が驚く。
「ベルゼ……!?」
ベルゼは、
握っていた黒糖飴を見る。
小さい。
脆い。
意味不明。
でも。
その小さな存在が、
今この場の人間達を繋いでいた。
ベルゼは、
ゆっくりアークを見る。
そして。
初めて自分の意思で言葉を発した。
『……攻撃行為』
『不快』
空気が止まる。
“失敗作”が笑う。
「ははっ!!
お前も汚染されたなぁ!!」
ベルゼの単眼が揺れる。
『……理解不能』
だが。
その声は、
少しだけ人間臭かった。
次の瞬間。
ベルゼが砲口を展開する。
アークへ向けて。
教育係が叫ぶ。
「待ってください!!
内部損傷が――」
ベルゼは止まらない。
『質問』
アークが反応する。
『何ダ』
ベルゼは静かに言った。
『温カイ世界ヲ、
何故壊ス』
沈黙。
アークは答えない。
ただ。
巨大な光翼を展開する。
周囲の空気が震えた。
教育係の顔が青ざめる。
「まずい……
第二出力形態です!!」
主人公が舌打ちする。
「まだ隠してやがったか」
アークの声が、
空全体へ響いた。
『感情ハ病ダ』
『排除スル』
その瞬間。
夜空に、
無数の光が現れた。
まるで。
処刑の雨みたいに。
今回のテーマは、
「守る理由」でした。
E-01は、
ついに“効率では説明できない感情”
で動き始めています。
そして今回、
ベルゼにも変化が現れました。
感情は、
感染する。
優しさも、
希望も、
痛みも。
だからこそ、
人は変わっていく。
未完成の世界編は、
ここからさらに
“感情 VS 完璧”
の核心へ入っていきます。




