第66話:感情汚染個体
感情は、
人を救う。
だが同時に、
人を壊す。
旧世界は、
その危険性を知っていた。
だから切り捨てた。
けれど。
それでも人は、
痛みごと誰かを求めてしまう。
夜空の向こうで。
巨大な光が点灯していた。
まるで、
空そのものへ目が開いたみたいだった。
人々が怯える。
「なんだよ……
あれ……」
教育係が端末を強く握る。
「旧制圧兵器群の識別反応……」
声が震えていた。
“失敗作”が舌打ちする。
「クソ。
想定より早ぇ」
通信の向こうから、
無機質な声が続く。
『E-01』
『感情汚染確認』
『処分対象指定』
E-01は静かに空を見ていた。
その瞳に、
もう迷いは少ない。
『返答要求』
『何故、
感情を保持する』
沈黙。
周囲の人々も、
E-01を見ていた。
かつて恐怖の象徴だった存在。
だが今は違う。
少女を助けた。
人を守った。
共に立っていた。
E-01は静かに答える。
「……必要だからだ」
通信が一瞬止まる。
『感情ハ、
争イヲ生ム』
「肯定」
『感情ハ、
秩序ヲ壊ス』
「肯定」
教育係が息を呑む。
だが。
E-01は続けた。
「だが」
少し間。
「それでも、
人間は感情を捨てなかった」
静寂。
燃える街の音だけが響く。
E-01は、
ゆっくり人々を見る。
泣いている者。
怒っている者。
笑っている者。
全部、
不完全だった。
でも。
確かに生きていた。
「だから俺は、
人間側へ立つ」
空気が止まる。
教育係が目を見開いた。
“失敗作”は、
少し笑う。
主人公は、
静かに煙草を咥えた。
通信の向こうで、
ノイズが走る。
『……理解不能』
その声は、
どこか揺れていた。
だが次の瞬間。
夜空の光が、
さらに強くなる。
警告音。
教育係が叫ぶ。
「高出力反応!!」
遠方の地平線。
巨大な影が立ち上がる。
人型。
だが、
E-01より遥かに巨大。
白銀の装甲。
無数の発光ライン。
その姿は、
まるで神だった。
人々が震える。
「な……
なんだよ……」
教育係の顔が青ざめる。
「識別名……
“アーク”……」
“失敗作”の表情が消える。
「マジで出てきやがったか」
主人公が眉をひそめた。
「知ってんのか」
“失敗作”は苦々しく吐き捨てる。
「旧世界の処刑装置だ」
空気が重くなる。
“失敗作”は続けた。
「感情汚染個体を、
街ごと消してた」
周囲が凍り付く。
教育係が小さく呟く。
「旧世界最強クラス……」
アークの赤い瞳が、
ゆっくりこちらを向いた。
そして。
感情の無い声が響く。
『E-01』
『排除を開始する』
その瞬間。
空が割れた。
超高熱の光線が、
一直線に街へ落ちてくる。
人々が悲鳴を上げた。
だが。
E-01は逃げなかった。
壊れた身体のまま、
前へ出る。
主人公が叫ぶ。
「おい!!」
E-01は小さく呟く。
「守る」
次の瞬間。
世界が白く染まった。
今回から、
未完成の世界編は新たな段階へ入りました。
旧世界側。
感情否定側。
その本格的な脅威が動き始めます。
今回登場した“アーク”は、
単なる強敵ではありません。
「感情を排除する思想そのもの」
の象徴です。
そしてE-01は、
ついに明確に
“人間側へ立つ”
と宣言しました。
これは、
彼にとって大きな変化です。
未完成の世界編は、
ここからさらに加速していきます。




