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怖!志保さん怖!


  あとをついて行くと人目のないところまで歩かされた。


  まさに裏の森、影にひっそりと住み着いた深く濃い緑の場所。


  この先は深い森になっていて俺たちみたいに遊びに来た人達には無縁の場所だ。


  主に業者さんなんかが手掛けてる所なので立ち入り禁止な気もするが。


  森の出入り口に唯一のトイレがぽつんと建てられていて進むともう美代たちの姿は全く見えなくなった。


  無言で俺たちは歩いた……なんか変な雰囲気でてるんだが……。


  ボロボロのコンクリートで固められていたトイレの男女仕切り部分で志保が立ち止まる。


  「どわっ!……」


  俺は壁際に落ちつけられると志保は俺の股の間に足を挟み逃げられないような体勢になった。


  あれ?どうしてこうなった?なんで志保と俺の距離がこんなにも近いの?こんな至近距離で何するの?


  「さっき……言ったわよね?」


  志保の吐息が俺の耳に当たり今にも舐められそうな距離まで近づくと俺は我に返った。


  「え!?な、なにが!?」


  俺と志保は顔を真っ赤にしながら互いに目を合わせると俺はすぐさま視線をそらした。


  そらした先が胸なんてことはないよ!……でも普段とは違った私服越しに見るのもなかなか……。


  すると俺は顎をくいっと持ち上げられ目線を志保の顔に強制的に引き寄せられた。


  「っん!?」


  「だ・え・き……飲んでくれるんだよね?」


  いやいや!そんな約束してないから!


  「え〜っと、俺はそ……」


  目が!目が光ってます!赤く光っております!


  「そ、そんな約束したかも……」


  俺は震えた声でそう言うと志保はニコッと笑った。


  「そう……カレーに入れるとみんな飲むことになるじゃない?」


  え?それってつまりユンとか美代とかと関節キス的なアレがアレで……つまりは百合が生まれるわけですかね?


  俺は黙って頷いた。


  「だ・か・ら……いっそ直接入れようと思うのだけれど……」


  俺は大きく目を見開くと視界が志保の口元に移った。


  え?なにこれ?チューするの?していいの?


  俺は張り裂けそうな心臓をなんとか抑えていると志保は少しずつ顔を近寄せて来た。髪の毛からはシャンプーのいい香りがして俺の思考を押さえつけられるような感覚に陥った。


  これは不可抗力なんだ!しかし多少抵抗しておかないと後が……。


  そんな虚しい抵抗もつかの間で思考は鎖で縛られるようにロックされていった。


  もういっそこのまま身を任せてしまおうか……。


  いや駄目だろ!

 

  「ま、待ってくれ志保!」


  俺は目線を合わせないよう目をつぶった。


  「なに?今更怖いですやっぱやめて下さいなんて聞くと思ってるの?」


  ……もちろんそんなつもりじゃない。


  ここはイチかバチかだ!


  しかしこの時の俺は気づいていたのだ。


  ……いやきっと誰もが気づいているのだろう。


  この後の展開をな!


  ゆっくりと息を吐く間も無く近づいてくる。


  僅かに震える志保の肩。


  あそこに寄り添ってあげれるならどんなに嬉しいことか……。

 

  「雪く〜ん、遅いから来ちゃった〜」


  はい!終わり!俺の青春ラブコメ終わり!


  もうね、こんなにドキドキさせられるなら恋なんて知りたくないよ。


  チィっと舌打ちをして志保は美代を睨みつける。


  そしてその眼光は何故か俺に向けられるという……。


  「こうなったらカレーにでもなんでも私の唾液をたっぷり注いであげるわ!大体美代から約束を破ったのだし!何しても構わないわよね?」


 いやいや構いますよ、てか約束ってなんだ?


  「いや、それはまずいでしょ……」


  「はぁ?それ以上口開いたら殺すわよ?」


  怖!志保さん怖!


  鋭い目つきでそれ以上話したら分かってるよね?みたいなサインを送って来たので俺は無言で頷く。


  固唾を飲み、その長すぎた二秒をただ通り過ぎてくれるのを祈っていた。


  「あれ?美代のいないところで何してるのかな?それより雪くん!材料揃ったから一緒に作ろ?完成したらあ〜んしてあげるよ?あとあと、ユンって結構面白い子なの!美代ちょっとだけ気に入っちゃった〜」


  「そっ……」


  あれ!?口が金縛りにあったように動かないだと!?


  俺はゆっくりと視線を志保へと移した。


  「殺す!雪くん!そこを退きなさい、さもなければ全員死ぬことになるわよ」


  俺の背中に隠れるあざとい美代さん。


  「何言ってるの志保?そんな汚い言葉使うなんて美代こわ〜い、雪くん助けて〜なんの取り柄も無い貧乳が怖い顔で怒ってる〜」


  俺の片腕に寄り添って抱き着くとその圧倒的な存在感の何かを擦り付けられて、やっと束縛状態から解放された。


  いやいやいや、志保さんめっちゃこっち見てるから!むしろ俺が助けて。


  「あれ?皆さんどうしてこんな所にいらっしゃられるのですか?美代さんもなかなか戻ってこられないので探しに来ちゃいました」


  俺はワナワナと震える身体をなんとか抑えて懇ろに会釈する。


  「……ふん!まぁいいわ、ならは・や・くカレー作りでも子作りでもしましょう」


  そう言って細めた目つきで俺を一瞥すると相変わらずのシンデレラバスト(貧乳)を押し当て腕で寄せながら引っ張られた。


 あぁ……本来なら嬉しいはずなのに。


 このままこいつらのペースにいたら間違いなく死ぬ!


 なんとかユンと二人きりになれる時間を作らないと。

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