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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと
二章

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24/28

集合!


 魔法少女統括委員会の歴史は、少子化とインベーダーの凶暴化のあおりを受けた二つの組織の合併からなっている。

 委員会長が出身とする中央魔術結社と副委員会長が出身とする瑞穂の会である。

 両者の対立は表に出ることはなく、実情としては会長の地位を狙う副会長である森峰の動きがある程度ではあるのだが、旧組織に属していたものはこの二人だけではない。

 現在の委員会の重役にいる者の多くは旧組織の人間であると考えても良いほどだ。

 そんな事実は、旧中央魔術と旧瑞穂会と言う派閥を作り、そして、それは魔法少女と言う特性故に数年で入れ変わる代謝の良い存在であっても少なからず影響を受けているものが居た。


 派閥意識は、委員会の規定するランクが上がるほど根強くなっているが、A級ともなればそう言った意識を持つ者も少なくない。

 他者と結託し、生存を測る人間ほどその傾向があった。


 故に、A級中位、下位が集まる魔法少女コミュニティが一堂に会すこととなれば、それぞれに分かれてグループを形成してもおかしくはない。

 旧中央魔術、旧瑞穂会、そしてどちらにも属さない者。

 それぞれが明確に分かれることなく、曖昧なグラデーションを再現しつつこの空間に占めていた。


「前回の滿汐やばくなかった?」

「あ、分かる。インベーダー量多すぎ」


 軽く交わされる会話は直近の一番大きなイベントであった滿汐の話題に触れる。

 渦中に居たのは、あらかじめ情報の共有を成されてた者たちだけではない。


「A級上位も事前に動いていたっていうじゃん」

「それで私たちが、あそこまで働かなきゃならないって何?って感じ」

「それな」


 今までに例のないS級以外への事前の滿汐対処の要請。

 その事実が、委員会、ガーディアンの思惑による別の目的によるものであり、S級の一時待機命令の影響で滿汐収束までの遅延の存在を彼女らは知らない。

 だが、滿汐の規模が物量という面で今までに類を見ないものであったのは事実だ。

 そして、その影響は、広範囲にわたって魔法少女たちへの対応を余儀なくさせていた。


 ただ、そんな会話も一つの足音に遮られる。

 扉が開かれ何気なく数人が視線を向けて、動きを止める。

 それが、伝播し、最終的に一点へ注目が集まった。


 ローファーが音を立てて、歩くのはアウターのフードを深くかぶる人影。

 ネクタイを締めた制服に酷似した服装はブリティッシュ風にも見える。

 照明の光をプラチナブロンドの髪にうつして、毛先のわずかに色の入ったアッシュが揺れた。


 魔法少女コフィン。


 ランクで見れば、この中で最下位。

 A級32位。

 だが誰もが、ランキングの変動により魔法少女コミュニティに初めて顔を出した程度の存在とは思っていなかった。


 その原因となったのが滿汐。

 そこでの彼女の功績の一端は皆が知るところだ。

 上位インベーダーに相対した時に自動的に開始されるライブ配信機能は、何よりも明確に事実を伝える。


 天坂のA級上位が相対した白い体を持つインベーダー。

 三人がかりでも、とどめを刺しきることが出来なかったこれに対して、魔法少女コフィンは一太刀で首を切り落としていた。

 漁夫の利的な側面はもちろん強い。だが、それは些細なことであるのは、魔法少女でなくとも明らかだ。

 そもそも、A級上位の攻撃では、奴の身体に傷をつけることは敵わなかった。

 それを、一撃で仕留めるだけの攻撃力を有しているのだ。これを隙をついたからだと非難するのはおかしな話だ。


 それに加えて、S級と誤認されていたとは言え、それだけの力を内包していたインベーダーとも相対している。

 障害の影響で、ライブ配信機能が一時停止していたために、その戦いはブラックボックス化している。

 だが、その場に居たのが、A級上位の白砂とE級魔法少女、そしてコフィンとなれば、多大な貢献をしていることが伺える。

 であれば、まだ見えない所に力を有しているだろうと言うのは分かった。


 だが、そんな事実があってなお、ランキングの変動がないのは滿汐での戦闘記録は、委員会で修正してからランクに反映されるからだ。

 滿汐は通常のインベーダーとの戦闘と違い、避難誘導を始めとする民間人への対処等が評価に含まれているために、処理に時間が掛かっていた。


 だから、今現在彼女のランクがこの中で一番低かろうと変動する可能性は大いにあった。


 そして、その場にいる少女らが、遠目から警戒するように見守るなか、一人の少女が動いた。

 少し派手な装飾の施された衣装を身に着ける少女は、コフィンの前へと出た。


「……」

「なに?」


 コフィンの顔を観察するように、見ているとそんな声を発する。


「ううん。私、魔法少女菊日!よろしくね!」

「魔法少女コフィン」

「知ってる!」

「あそう」


 気おされるようにコフィンは呟く。

 菊日は対面に立ってやっとコフィンの顔をしっかりと視界に収める。

 フードを被っているが、正面に立てば顔は良く見えた。

 一瞬目を奪われて、整った人形のような顔と言う印象を抱きながらも、菊日は口を開く。


「ねぇねぇ。コフィンちゃんってさ。あ、コフィンちゃんって呼んでいい?」

「まあ──」

「ずっと聞きたかったんだけどね。滿汐の時、配信機能が停止してたでしょ。その間に、倒されたS級誤指定されたインベーダーを倒したのって誰?」


 そんな誰もが触れることはないかに思われた質問を投下したのだった。






 ◆


 クワガタインベーダーは誰が倒したのか。

 この疑問を解くには、綾谷もみじの精霊魔眼に触れる必要がある。

 しかし、精霊魔眼は暴走し、A級上位に位置する魔法少女をも圧倒する力を秘める代物だ。そして、委員会はそれを隠そうとしている節があった。


 ──あのおっさんも口止めして来たしな。

 ──岡園と言ったか。態々キサマを縛らぬように取り図ろうと動きを見せる奴が態々言い含めたほどだ、相当の事なのだろう。


 あの日、もみじを追って入った委員会支部の長である岡園と言う男は俺に便宜を図るような仕草を見せながらも、滿汐での一件を口蓋しないようにと念を押してきた。

 目覚めてすぐに接触してきた委員会の関係者がすでに俺に言い含めた内容を再度釘を刺すような真似をしてまで口にしたのだから、それだけ委員会にとって外に出したくない情報なのだろう。


 だから、菊日と言ったか。彼女がそんな質問をするのなら……。


「委員会の支援を元に、魔法少女雪砂が倒した」


 これが、委員会と魔法少女雪砂、そして魔法少女コフィンこと俺との間で口裏を合わせて決定した偽の事実だった。


「ふーん。そうなんだ!でも、コフィンちゃんも何かしたんだよね?」


 俺の返答に彼女はそう返してきた。

 なに?仕事してたんだよね?ってこと?

 天下のA級上位様が働いている間お前は何してたのってこと?

 もしやあれか?

 そんな誰にでも明るく話しかけそうななりをして、新人いびりみたいなやつか?


「……まあ、攻撃はいくつか入れた」

「いくつか!?」


 いやなんだよ?

 その程度で貢献した感出すなよ、みたいな感じ?

 普通に話盛ってたんだけど。実際、攻撃弾かれてるし。

 思い返せば、雪砂さんは消耗激しかったし、それを考えればこの場にいるのは中位と下位とは言え相当平均値が高いのかもしれん。

 

「それと……一応攻撃を受け止めて注意をこっちに向けたり……」

「一応!?」


 いや、マジでその程度?みたいな反応キツイわ。

 実際は、二桁もの盾を重ね張りして破られてんだよね。

 どうすりゃいいだこれ?

 仕方なく下手に出るか。


「まあ、この程度の働きだから大したことはしてない」

「この程度!?」


 今度はなんで復唱したんだよ。

 そう思っていると向こうから一人の少女が「みんな~準備できたよ~」と全体に声をかけた。

 母性溢れる体つきの彼女は、飲み物とケーキを用意していた。


 甘いの無理なんだよな。

 そう思って、ケーキは断って珈琲があると言うのでそちらだけいただくことにした。






 ◆


 魔法少女コミュニティにおいて行われるのは主に情報共有。

 それに伴っていつからか、お菓子やケーキを持ち寄って食べるちょっとした女子会のような雰囲気も帯びていた。


 いつもは、持ち寄ったスイーツの話で和気藹々と始まるところだが、皆どこか動きが硬いのは先の一件のせいだろう。

 この場で皆の注目を集めた魔法少女コフィン。そして、果敢に話しかけた菊日との問答だ。


 それはコフィンの隠れた実力を晒すに至った。

 強力なA級インベーダーに幾多の攻撃を入れ、尚且つ攻撃を真っ向から受けきったとまで言い切った。

 その上で謙遜までしたのだから、その実力は計り知れない。


 今も珈琲に口を付けるコフィンからどうしても意識を離せなかった。

 しかし、それでも進行はせねばならない。

 先ほど、お菓子やケーキを用意していた少女、魔法少女浮剣が口を開いた。


「はい、ちゅーもーく!今回のケーキは菊日ちゃんが選ぶの手伝ってくれました~!」


 「おお」と感嘆の声が上がって、「センスいい」と少女らは盛り上がる。

 写真もそこそこに皆が口を付け始める。


「で、本題!ここ最近のインベーダーの出現分布について少し──」


 ケーキを頬張る面々を見渡して、浮剣は話を始める。

 A級11位。

 A級上位を除いたメンツの集まるこの中で一番順位の高い彼女が場を進めるのは恒例となっていた。

 長らくこの位置にいるためか彼女以外の進行を見たことない者も多くいた。

 そして、そんな彼女が一通り話した後、再度口を開く。


「じゃあ、次ね。毎度口酸っぱく委員会が行っていることだけど、滿汐直後の気のゆるみは厳禁だからね~」


 浮剣の言葉は最早常套句の様なものだった。

 気のゆるみこそが、インベーダーに狙われるのだと。

 しかし、定型文のように毎度通知されるだけに、聞き流す者も多かった。


「あとは……そうだなぁ。誰か共有したいことはある?」


 浮剣は見渡すように言って、意見を求めた。

 そして、ちらほらと上がった手を指名して、解消した後彼女は進行を閉めた。


 そして、ざわめきが戻る中、一人魔法少女コフィンは席を立ち外へ出る。

 それを視線で追いながらも少女たちは話を始めた。

 先ほどの進行では、全体への情報の周知と共有が行われるが、その前後では、個人個人での交流によってつながりを作ったり情報を集めたりと言ったことが行われる。

 故に、見る者が違えば、こちらが本命とも言えた。


 そして、彼女らは浮剣が終わりを促すまで交流を続けた。

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