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TS転生した俺は魔法少女になれないらしい  作者: えとう えと
一章

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23/26

早着替え!


「変身!」


 前世とは似ても似つかない高く透き通る声が部屋に響き、僅かな光が漏れ出た。

 何の変哲もない私服姿であった俺の身体は、見る見る疑似制服へ覆われた。


「ジャージを制服の下に着てた女子ってこんな感じだったな」

「キサマのアイデアは良いと思ったが、失敗だな」


 俺がため息を吐いて、それを見たカゲがそんなことを言った。

 かねてより、考えていた疑似的な変身が失敗に終わった瞬間だった。


 と言うのも、転生直後の俺は、インベーダーから身を守るために学校指定でもない疑似制服を着用していた。

 エンカウント(呪い)のせいでよく襲われる俺は、自己修復機能と着用者への回復機能を持ったこれでも着ていないとインベーダーに殺されてしまうからだ。


 しかしながら、プレイヤーとしての恩恵であるレベルアップによって、基礎的な運動能力や耐久力が向上した今であれば、正面戦闘はともかく日常で襲われた際に逃げることくらいは容易い。

 と言う事で、普段着を買い込んだわけだが、いきなりの戦闘になればやはり疑似制服に着替える必要が出て来るわけだ。

 それをどう対処すべきか、頭を悩ませて思いついたのが疑似的な変身。

 魔法少女もどきの俺以外の魔法少女が例外なくするそれを参考に、瞬間早着替えを行おうと言うわけだった。


 そこで、まず着目したのが疑似制服の自己修復機能だ。

 読んで字のごとくのこの機能は制服が破れても勝手に治るというものだが、実験の結果、服と言えない程にバラバラに引き裂いたあと、急激に修復することが分かっていた。

 俺が着用時に、多少破れても時間をかけて直っていくのとは違い、原型をとどめようとしてか瞬時に接合した。


 で、それを利用して、あらかじめ疑似制服をバラバラにして「出力」によるエネルギーの生成によって、再生しないようにまとめて置き、解放することで一気に修復を開始した疑似制服を着ることが出来ないかと試していたわけだ。

 自身の背中にひとかけらだけ、疑似制服の破片を固定しておけばズレることなく着用できることが分かっていたしな。

 だが、問題は、元々着ていた服の上から着用されると言うことだ、


 そして、そんなことを試してやっと気づいて出た言葉が、先ほどの呟きだった。


 冬の部活帰りの女子みたいな恰好になってしまった。

 これが、常時水着で生活するタイプの人間だったら違和感など出なかっただろうが。


 それに、シンプルなシャツにワイドパンツだから余計に目立って見える。

 今世になって、疑似制服で過ごしてきたからか私服を買ったことがなかったが、男子大学生の服過ぎる。

 キャラクリのコンセプトを考えれば、男に染まっている感じがしておかしくはないが。

 大学にいた女子のダル着もまあ似たような感じだったが、こうして着てみるとやはり男っぽい服だなと思う。

 ボトムスよりトップスの違いか。


 まあ、どっちでもいいか。ファッション何て特段興味ないし。

 だが、脚を出そう。そうしよう。きっとその方が良い。健康的だしな。


「しかし、どうするか。問題は解決していない」

「なあ、少し考えたんだが──」


 再度頭を捻る俺にカゲが提案をした。

 そうして、話すカゲの言葉に俺も良い案ではないかと頷き再度試す。


「変身!」


 意味もなくそう叫び、変身する。

 バラバラにした疑似制服を包んだエネルギーを霧散させると俺の身体が輝くように光った。

 それと同時に、瞬時に再接合が行われてまたも自動早着替えが完了する。

 そして……。


「成功だ!」


 自身の身体を見渡してそんな声を洩らした。

 先ほどのように、着ぶくれすることもなく何なら下に着た私服が見えることもない。

 素晴らしいの一言だ。


 流石カゲ先生。熟女(女の)趣味以外は天才的だ。


 で、どんな種であったかと言う話だが、選んだ方法は先ほど考えていたスク水に極めて近いモノだった。

 制服の下に着ても違和感のない小さめで袖の短いトップスとスパッツのように履いても見えない丈の短いショートパンツ。

 そして、その上から羽織ることの出来る大き目のアウターを着ることで、変身を成功させていた。


 まあ、極限まで面積を抑えれば下に着てても分からないよね、と言う安易な発想。

 しかし、結果としてそれがいま現状の正解であったわけだ。

 加えて、俺の認識阻害は性能が低く、日和って普段からフードのある何かしらを上から羽織っているから、変身時にアウターを着ていてもおかしな点はない。

 アウターとトップスの間に疑似制服を転換すればよい話だし。


 あと、アウター着てないと流石に薄着過ぎる。

 めっちゃ短いズボンとぴちっとしたシャツだけでは、日本では厳しい。

 アウターさえ着てれば、まあ、その辺にいるようなファッションにはなる。


 まあ、これで過ごせるのは温かいうちだけだろうから、冬になったら色々と考えないといけないかもだが。


「でも、シャツは面積欲しかったな」


 脱ぎ散らかしたそれを見て、そう呟いた。






 ◆


 せっかく、私服を着れるようになったのだからと外に出る。

 アウターの前を開けると夜中にコンビニが精々な格好に感じて、閉める。

 変身後のことを考えてオープンジップにしていたが、閉めとこ。


 今世での俺の活動範囲と言うのは、魔法少女のそれを省くとそう多くないため、コンビニが精々だ。

 しかし、今日は少し遠出をする必要があった。


 カゲとの接触のために交通系ICを使えるようにしていたと思い出して、なんとなく電車に乗った。

 正直徒歩でも行けるし、遥か遠くても走っていけるくらいの身体能力は有しているがなんとなくだ。

 田舎と違ってすぐ来るしな。電車。


 そうして、そう時間もかからずにホームに降りて駅を出た。


 マップを見ながら少し歩いて、少し人気の減った通りにある建物へと足を進めた。

 そして、敷居を跨ぐと同時に「変身」をした。

 成功。今のとこ失敗はないが、命に関わるから暫くは意識をすることにしていた。


 そして、通路の奥の重い扉を開くと、多種多様な衣装に身を包んだ少女たちが居た。

 これらすべてが、魔法少女である。


 ──魔法少女コミュニティ。A級下位か、結構いるな。

 ──A級上位が十人A級中位が十二人A級下位が十人と考えれば、この場にいるのは中位と下位の計計二十二人、キサマを除いても二十一人と考えればこんなものだろう。


 まあ、そうか。

 カゲとテレパシーで話しながら適当な席へと座る。


 腰を下ろしつつ、思い出すのはつい先日の話だ。

 滿汐が終わり、もみじが屋上で前向きになったように見えたあの日、俺に魔法少女NET経由で一つのメッセージが届いた。

 それが、魔法少女コミュニティーとやらの招待だった。


 魔法少女同士は、身を隠し活動している。

 故に、情報の共有など以前に、知り合うことは難しい。

 同地区に存在する魔法少女であれば、やりようもあるが、他地区となると接触は皆無と言える。

 と言うか、そもそも三十二人しかいないA級がその地区に自分以外に居ないと言う事もありえる。

 と、まあ、色々な事情があり、情報共有と交友の場として設けられているのが、魔法少女コミュニティーと言うものだった。

 そもそも、年頃の少女が、悩みを打ち明けられないのは不健全だから、心理的な面でも運用されているのだろう。

 

 ──そういや、滿汐であった……えっと雪砂さんだっけ?いなくね?

 ──雪砂はA級上位だ。この場にはいない。


 マジかよ。

 あの時、結構やばそうだったから様子を見ようと思ってここまで来たのに。

 俺は、魔法少女登録をする際に縛られないことを条件としていた。

 だから、この催しも断ることは容易い。

 それでも、来たのは魔法少女雪砂の様子が気になったからこそだったのだが……。


 ちゃんと確認すればよかった。

 一緒に戦ったからこのくらいの強さかなと適当に考えてしまっていた。


 ──ついでに言うと、今まで接触した魔法少女は一人もいないな。

 ──どんな確率だよ。


 だが、そうなるとここに居座る必要もないが、入室して着席してすぐ出てくのは不審者過ぎる。

 仕方なく、その場に居座ることにした。


 しかし、視線が気になる。

 部屋の魔法少女の多くが俺を見ているのが分かった。

 なんだろ。フードついた服着ちゃダメとか、小学校の謎ルールみたいなのがあるのか?

 それとも、この席はいつも誰かが座ってんだろうか。

 一体何やんなんだ?


 何やんは来ないぜ。


「……」

「なに?」


 アホなことを考えていると、俺の前に少女が来て無言で見るので問いを返した。

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