黄昏京子を知っているか?
「なあ、お前さ」
練習後、寮で二人きりになった時に、俺は話を切り出した。
黄昏京子が雄一にスキルを伝授した可能性について問いただしたかった。
「やけに野手の間に落ちるヒット打ったり、失投叩いたりするよな」
雄一は一瞬目を見開いたが、次の瞬間気安い笑顔になっていた。
「ま、運も実力っすよ。実際こうやって先発起用されてるわけだし。クリーンナップなんて前の俺なら考えられなかったな」
「いや、お前は実力もあるよ。自信も持っていい。ただ、それにしても運が良すぎる」
雄一の顔から表情が消えた。
「なんすか。疑ってるんすか。甲子園前の懸念は払拭しておきたいと」
「いや、お前を排除したいわけじゃなくてな。お前の努力も才能も俺も認めているよ」
「結果が全てなんすよ」
雄一は言い切った。
「どんなに才能があろうと、結果を出さなければ話題にもならない。どんだけ努力しようと、結果を出さなければ振り返ってももらえない。ただ忘れ去られていく。俺には先輩みたいな結果はない。だから、結果を出そうと努力している」
場が硬直した。
俺達はだまりあい、迫真の表情で見つめ合っていた。
「話はそれだけすか? 俺は打ちますよ、次も」
雄一が話を打ち切ろうとしたので、俺は慌てて問い詰める。
「黄昏京子と言う名前を知っているか」
雄一は表情一つ変えずに言った。
「知りませんね。ミーハーなファンですか?」
「そうか……」
知らない、というのはおかしいんじゃないか、雄一。
同級生でただでさえ目立つ愛の友人だぞ。
そう思いつつも、これ以上触れたら逆鱗に触れそうなので、触れることができなかった。
俺達は順当に勝ち上がり、辰巳のチームとの決戦を迎えた。
ここまで雄一の打率は八割。
異常な値だ。
つづく




