夏の大会、始まる
結局春武に京子との交流を話せないままに夏の大会の予選が始まった。
吹奏楽部の愛は京子と応援に行く。
野球強豪校。
吹奏楽部も甲子園で演奏することを夢見て入学した子供は多い。
応援団も張り切っている。
初球のマウンド。
一回り身長が伸びた春武が白球を投じる。
百五十キロを計測して周囲にどよめきが起こる。
一回を三者三振で仕留めた。
その裏、翔吾が安打を打ち盗塁を決めると、二番の春武。
インコースへのまっすぐを引っ張ってホームランを打った。
まさに二刀流。
井上春武という選手は完成しつつあった。
長いこと春武を追ってきた愛にとっては感無量だった。
思わず涙ぐむ。
三番に入ったのは雄一と言うサード。
小柄だ。
安打率が高いのだろうか。
そう思った直後、ド真ん中にストレートが走っていった。
連続ホームラン。
信玄の三者連続ホームランで青高は一回から優勢に立った。
投手交代かと思いきや、続投だった。
その後、安打を打たれつつもなんとか五回を投げきった。
結果、零対十五のコールドゲーム。
「野球って楽しいねえ」
京子は軽薄に笑いながら言った。
「春武、凄いでしょ」
愛はその感想に呆れつつ言う。
「うん。凄い。けどね」
京子は軽薄に笑った。
「雄一君の方が凄くなるよ。結果的にね」
どういう意味だろう。
まさか、彼が京子の言っていたスキル適合者?
春武との情報共有が必要かもしれない。
それは、京子との交流を春武に明かすということでもあったが。
勝利ムードから一転、愛は暗鬱な気持ちになった。
つづく




