打ち解けつつある愛と京子
「黄昏京子からの接触はないか?」
毎朝の当校時に春武が聞いてくる。
「なにもないよ」
ルームメイトです。とは流石に今更言えない雰囲気だ。
夜になるとまた二人きりになる。
なんとなく口が軽くなる。
「勉強、教えたげるからさ」
「おっ。どういう心変わりだい?」
京子が軽薄に笑う。
「今まであんたが愉快にしてきたとかいうスキル適合者の話教えなさいよ」
「君達にとっても印象深いのは先生かな」
愛はさらりと言われたことに背筋が寒くなる。
やはり彼女は黒幕なのだ。
そう再実感した。
(今更……)
思い直す。
「生まれを呪っている人だったよ。呪ってるだけで努力しない人。その癖、理想だけは持ってた。スキル適合者はその手の類が多い」
「生まれ、ねえ……三十五ページ開いて」
「はいはい」
「私には縁遠い話ね。生まれながらに特殊能力無効化の光を持ってたし。母には愛情込めて育ててもらったわ」
「父親は?」
「私、お父さんいないの。お母さん処女受胎なのよ」
京子は珍しく不味いものでも飲み込んだような表情になる。
「ってことは処女出産かい? 高齢処女かい?」
「まあ、ってことになるんでしょうね。私の知ってる限りでは。私の前世の魂が母の体に宿った。その時、子供の形をしていたらしいわ」
「なるほど。君は人生二回目なんだ」
京子は軽薄に笑う。
「面白いなあ。君は興味深い。年不相応な落ち着き。母親譲りの英語力。どんな大人になるのやら。生まれを呪いたくなる先生の気持ちもわかるね。これは明白な差別だ」
「ペラペラと。それじゃ、あんたはどういう育ちなのよ」
「至って普通の家庭の育ちさ。私もなんで私だけこんな特異点みたいな成長を遂げたのか謎に思ってる」
(……興味深い)
知れば知るほど興味深い。
黄昏京子という女は謎の塊だ。
触れてみたい、と思った。
互いにそう思っているのだと実感できた。
ある意味で、惹かれ合っているとも言えるだろう。
「けど、この遊びもそのうち終わりかな。野球部にスキル適合者が見つかりそうなのよね」
愛は殺気立つ。
「春武の邪魔をしたら許さない」
凄みを利かせて言う。
「なあに。むしろこれは、応援さ。素直に教えたから勉強教えて」
しばし、場が膠着する。
愛はため息を吐き、害意がないなら良いか、と勉強を教え始めた。
本当に、これで良いのだろうか?
彼女は本当に春武のファンになるのだろうか?
しかしその疑念の一方で、春武ならば、と言う期待感がある。
つづく




