春武愛物語
「二人はどんな運命的な出会いをしたのかな?」
京子は軽薄に笑いながら問う。
夜の密室で二人きり。
なんとなく、口が軽くなる空気があった。
「覚えてない」
「そりゃないぜレディ」
京子は苦い顔になる。
「だって物心付く前から知り合いだったんだもん。私の叔母のアリスって人がいてね。その人が良く私達を春武の元に連れてってくれてた。その頃は春武はアリスさんにぞっこんでね」
「こんなに可愛い子がいるのに年上に恋してたのか」
「執念みたいなものよ」
思い返し、呆れ混じりに語る。
「アリスを嫁にするんだって子供の与太話を本当にしようと中学まで頑張ってた」
「そこで君に捕まった、と」
京子は軽薄に笑う。
否定するのも面倒臭いので愛は肩をすくめた。
「そんなとこ」
「ってことは、君が好きだったんだね?」
口籠る。
いつからだろうか。
野球をやる春武を格好良いと思ったのは。
勝てない刹那に何度も模擬戦を挑む春武の姿を座りながら目で追っていたのは。
そう、初恋だった。
幼い頃からの、初恋だった。
愛は苦笑する。
懐かしみを噛みしめるような感覚だった。
「あんたの失礼な態度の数々にはちょっといい気分になったから許してあげるわ。復習するから話しかけないでね」
「英語教えてよー。私高校レベルの学力ないわやっぱり」
「なにしにきたのよあんた……」
呆れつつも、二人の距離が縮まりつつあるのを感じた愛だった。
それが良いことなのか悪いことなのかわからないが。
つづく




