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ダークファンタジア十五部 番外編  作者: ノクターン


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5/23

5 考えてみよう

大きな心配事が一つ終わった。まずは一段落である。戦に出た連中はみんな、疲れて眠っていることだろう。カサンドラもサントス達も、神殿に帰った後、すぐ眠ってしまっていた。カサンドラの目が覚めたのは翌日昼ごろである。


カサンドラが自分の神殿の大きな部屋で座って水を飲みながら戦のことを思い返していると、パティウスがやってきた。

「カサンドラ~」

パティウスは座っているカサンドラに後ろから抱きついていた。いつもはこんなことはしないのに、カサンドラが消滅したことが、パティウスにとってもかなりショックだったようだ。

「どうしたんだ。朝っぱらから」

「もう昼だよ」

「そうなのか?」

「勝利の宴会は明日だって」

「そうか。パティウスは上でずっと見ていたんだろう?」

「そう、それで気になることがいろいろあってさ、カサンドラと話がしたかったんだよ」

パティウスはカサンドラから離れて向かいの椅子に座った。

「ルチアのことだよ。どうして女で生まれたと思う?」

「ルチア?」

「どうして女の子で生まれたのか、僕はそれが疑問なんだよね」

パティウスは腕を組んでいる。

「うーん……」

カサンドラは小首をかしげていた。もし男ルチアがいなかったならば、カサンドラはあのまま消滅してしまったのかもしれない。そのほかに犠牲者がいた可能性もあった。それほどにあの魔物は強かった。


「ところで、カサンドラはどうやってジュリアンの前に移動したの」

カサンドラの神器は人間界は自由に移動できるが、神の国ではできない仕様である。

「ガーベラに黄金の腕輪を借りていたんだ。後で返さないとな」

「そうなんだ。みんなお守りみたいなのを持ってたね。カサンドラは持ってた?」

「私は持っていなかった。ジュリアンは持っていたかもしれないが、お守りの力が及ばなかったのかもしれないな。あいつは強かったから」

「あのお守りって誰が作ったの?」

「あれはガーベラがもらったんだ。精霊から」

「なんで?」

「実はエスメラルダは精霊の関係者の生まれ変わりだった。だから今回精霊の助けが結構あったんだ」

「へーそうなんだ。エスメラルダはかなり強い光の力を持っていたね。そういうのも関係しているのかな。なるほど、それでルチアのことだよ。どうして女の子で生まれたのか」

「……ひょっとすると、アシュランに遠慮したのかもな」

カサンドラが悩みつつ言った。

「あまり強すぎる神がいると、アシュランのやる気がなくなるだろう?。最高神の座を譲るとか言い出しかねない」

「ははは」

パティウスは笑っていた。

「確かに、最高神なんてなるもんじゃないって言ってるね」

「平和時には男ルチアの力は強すぎるのかもしれない。もしかしたら、子供で生まれたのも、理由があるのかもしれないな」

「非常事態にならないと、男ルチアは出てこないってことか。アリアスが娘とくっつけたいって言ってたけど」

「次にあれがあるとするならば、4.5千年後か?」

「千年後だよ」

パティウスが言った。

「え? 千年? 嘘だろう? アシュランがそう言ったのか?」

カサンドラは目を見開いている。

「うん。そうなんだって。僕も武器の開発でもしようかな。やつら結構な武器を使っていたから負けられない」

パティウスはやる気に満ちていた。一方カサンドラはげんなりしている。

「そのことハロルドは知っているのか?」

「まだ知らないよ。もう次のことなんてハロルドは考えたくないでしょ」

「千年……あっという間にきそうだな。ハロルド気の毒に」

なんと言っても大変なのは前衛なので、カサンドラはハロルドに同情していた。その頃までに子供達は育っているのだろうか。

「それまでルチアが育っているとありがたいな」

「そうだね」

「ルチアが男で生まれていたら……すごい神力の持ち主だったからな。神の国の力関係が変わることになったかもな。アリアスは面白くないか? 太陽の重要性が変わるわけではないが」

「ルチアの神力が強いのは、人間にとって重要な神だからってことだよね?」

「そうだな。男ルチアの力に大地の守護者的役割があるとするならば、その性質はハロルドに近いかな。あ、遠慮してるのはハロルドに対してかもな」

「ルチアの信仰があがると、ハロルドの信仰が減っちゃうから?」

「それが一番まずい。ルチアはハロルドの子供ではないからな。ヒルデリアも面白くないだろうし。普段はあまり前に出ない方だがルチアにとってもいいんだろう」

「そうだね」

「そうなると、ルチアは普段は子供のままで成長しないのかもな」

「エスメラルダはどうなんだろう」

「さあなあ。成長した方が、精霊達は喜ぶだろうがな」

人間の信仰には限界がある。新しい神を強く信仰するということは、今まで信仰していた神への信仰が減ってしまうことを意味している。人間には誰しも「推し神様」という神がいて、すべての神を同じように信仰しまくる、というふうにはならないのだった。

「いろいろ考えさせられるな。今回の戦いは運もよかった」

「ルチアがガーベラの子供達の力をあげてくれたからね。カサンドラも生き返ったし。ガーベラがもっと子供を生んでくれたらありがたいね」


(あの彼女の存在は、我らにとっても幸運だったな。彼女はそうは思っていないのかもしれないが。彼女がいなくなった時、神の国もしばらくは暗くなってしまうのだろうな)

人間ならば寿命で亡くなったとしても、あと300年は生きられないだろう。神と違って人間は老いる。老いれば今のようにガーベラになることもなくなるかもしれない。


(しばらくはゆっくりと時が過ぎればよいな)

と思ったカサンドラだった。


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