4 その頃他の場所では 2
戦の最中、火の神殿では、ルティアナが突然大人に変身し、妖精達と驚きまくっていた。
「何これ、どうしたの!?」
そこにやってきた双子、スカーレットとフラム、この二人も年頃の少年少女になっている。フラムは赤い短髪、スカーレットは肩にかかる長さのストレート、小さい頃とは違って、体格には男女の差があった。
「ええー!? スカーレット、フラム?」
「ネネかーわいいね」
男の子のフラムが言った。
「私もかわいい!」
スカーレットはくるっと回っていた。赤いスカートが翻った。
「服も大きくなったんだよ。すごいよね!」
「二人ともかーわいい! これは一体どうしたのかしら」
三人そろって大きくなるなんて、一体何が起こっているのだろう。ルティアナはフラムをまじまじと眺めた。なかなかハンサムである。目つきも鋭くないし穏やかな顔つきの少年だった。あのやんちゃな男の子がこんな風に成長するとは驚きである。弟であるのが残念である。
「かわいい」
「かわいいですね」
妖精達は双子を見て微笑んでいる。
「た、大変!フィアが大きくなってる!」
そこにバーナードがやってきた。バーナードの姿はいつものままである。
「フィアが?」
バーナードはルティアナ達を眺めて、「あれれ?」首をかしげていた。
「見てーかわいいでしょ」
スカーレットがバーナードに近づいた。
「スカーレット? どうして大きくなったの?」
バーナードが聞いた。
「知らない」
「あ、そうそう。フィアもね、大きくなってるんだ」
「見に行きましょう」
全員がフィアの元に行こうとしたとき、「ぎゃああああ!」と乙女が襲われでもしたかのような絶叫が聞こえてきた。
「何?」
「誰の声?」
一同は先にその声の元に行くことにした。
「あああああーああああああー!」
声はまだ聞こえてくる。その部屋は、プータローが寝ていた部屋だった。
「プーちゃん! どうしたの!?」
ルティアナは部屋の扉をバーンと開けた。
「あああああ」
プータローはベッドの上で座ってうろたえていた。ベッドの上にはさらにもう一人いる。なんと女の子だ。
「あん?」
女の子はなんと真っ裸だった。
「…………」
あまりの状況に全員がしばし沈黙した。
「プーが女の子を連れ込んだ」
バーナードがぼそりと言った。
「ち、違います。起きたらなぜか、この子がいて! お願いだから服を着てください!」
プータローは両手で顔を覆っていた。ものすごく恥ずかしそうだ。
女の子はウエーブがかった豊かな黒髪で、ほっそりとした体つきだった。といっても弱々しいという印象ではなく、しなやかな獣のような引き締まった体つきである。女の子は緑の大きな瞳で、瞳は意思の強さを示すかのようにらんらんと輝いていた。
女の子はうーんとのびをしてルティアナ達を見た。そしてきょとんと首をかしげている。
「とりあえず」
ルティアナは布団で女の子の体を隠した。
「あなたはだあれ?」
ルティアナが聞くと、女の子はまた首をかしげた。
「いつの間に来たのかしら」
「……なんかクロちゃんに似てる」
スカーレットが言い出した。
「え? クロ? そういえばクロがいないわね」
クロはしばらくプータローに付き添ってくれていたのだ。
「彼女がクロちゃんじゃない?」
「えーまさかーそうなの?」
と聞くと、少女は目をぱちくりさせて、うなずいていた。
「やっぱりクロちゃんだ」
「クロちゃん、大変身だね」
「しかもかわいい」
「クロって女の子だったんだ?」
「え? クロさん?!」
プータローも驚きつつ少女を眺めた。しばらく一緒に寝てくれていた猫が、まさかこんなにかわいい少女だったとは。
立派な少女になったクロは、布団から足を出していた。足首にはグレンのような神器がついている。
「もしかしたら、今なら飛べるのかもね」
ルティアナが言った。
「とりあえず何か服を持ってきてくれる?」
妖精が服を取りに行った。ルティアナはその服をクロに着せようとしたが、クロはそのままごろんと横になり、寝てしまった。
「まあいいか、起きたら着せてね。それじゃ」
一同はそのまま去って行こうとしたのでプータローはびびっていた。
「ちょ、ちょっと待ってください。二人きりにしないでください」
「やならプーちゃんが違う部屋に行けば?」
「え……」
「フィアを見に行こう」
みんなあっさり行ってしまった。
クロは寝たまま動こうとはせず、プータローはしばし、眠るクロを眺めていた。
(か、かわいい。かわいすぎる! 胸がドキドキする!)
プータローは初めて感じるドキドキに戸惑いながらも、座ったままクロを見つめていた。彼女をおいてほかの部屋に行くなんて、なんとももったいない気がした。
「何もしないならいいよな、うん。見てるだけなら」
クロの体は布団で隠れているので、裸体を鑑賞しているわけでもない。プータローはその場から離れることはできなかった。
一方火の鳥のフィアは、1メートルほどの大きさに成長していた。頭の上には赤いクジャクの羽のような冠羽がついた美しい鳥である。
「おおおーきれい!」
「すごい! イグニスも喜ぶね」
「クックルー!」
フィアはあたりを飛んでみていた。
一同は早くイグニスに見せたい、と思っていたが、戦が終わるとフィアは小さい姿に戻ってしまった。そして少女だったクロもでかい猫に戻っていた。
プータローの胸には、なんともいえないふわふわした気持ちが残されたのだった。




