ある日のお話
ある日の平和な午後のことである。レーヌとミシェイラがゆりの部屋にやってきた。レーヌは手に大きな紙を、ミシェイラはクレヨンを持っていた。
「母ちゃま、ひこーきかいて」
レーヌが言った。
「飛行機?」
「パパにみせるの」
レーヌはゆりのおなかの中にいる時、ゆりと一緒に飛行機に乗っている夢を見た。その時のことをいまだに覚えている。飛行機にあこがれがあるようだ。愛娘の望みなので、ゆりは飛行機を思い出しつつ書いてみた。
「長い胴体に、羽のようなのが2枚横についていて、先端にプロペラ……はないか。それから……」
なにせゆりはこの世界に来て40年にもなる。飛行機の記憶もあいまいだった。
ゆりがなんとなく書いた飛行機を見た娘二人は、
「マー下手ね」
「うん、下手」
とずばり言っていた。
「ごめんね。ママは絵は下手なの」
「だいじょうぶよ。母ちゃまの魅力は絵じゃないからね」
レーヌはゆりを慰めていた。
「レーヌは本当に飛行機が好きね」
「だって大きくてかっこいいもん」
「ミーもいつかみたいな」
「一緒にみたいね」
いずれは、子供達の誰かがゆりの世界に行く魔法か何かを使う予定だが、詳しいことはまだわかっていない。
「二人とも、私の世界にもし行けたとしても、勝手にいかないように」
ゆりは一応二人に言っておいたのだった。
その後、ラギから「飛行機ってどうやって飛ぶの?」と質問された。レーヌに話を聞いたようだ。
「えーと、エンジン? 私の世界は魔法がないから、機械が発達してたの」
「エンジンってどんなの?」
「さー」
「描けない?」
「無理です」
「僕もお母さんの世界の乗り物に興味があるなあ」
「こっちには電気がないからねえ」
「お母さんの世界には最初からあったの?」
「最初からはないわよ。発明した人がいたのよ」
「どうやって発明したの?」
「…………」
(どうやって電気を発明したんだっけ? 発明した人ってエジソン?)
ゆりはさっぱり覚えてなかった。
「恥ずかしながらわかりません」
「お母さんってば」
「私がいた世界は便利だけど、そのかわり大気汚染とか深刻な問題があったわ。この世界は機械がないから、ずっと空気が綺麗なのよ」
「そうなんだ」
「そうなの。こっちの星空には感動したもの。向こうじゃまず見ることはできないわ」
「ふーん」
ラギはなんとなく納得して去って行った。
「むこうの世界は一体どれくらいの年月が経っているのかしら。向こうも平和だといいけど」
ゆりはしばし向こうの世界のことを懐かしんだのだった。




